34 邦の黎明を守る者
「────と、いう話をしていたのです」
「……お元気そうで安心しました、蓮華妃」
春麗宮に帰った後、霜と共に持ち帰った情報について話し合っていると、黒曜と共に清夏宮内へ入って行ったはずの黎邦がやってきた。何でも、蓮華の様子を見に行ってほしい、との命令が下ったらしい。護衛はいないが剣を持っているので問題ないとのことだ。そして黒曜の強さを良く知る黎邦は念のため清夏宮の門に一人だけ護衛を設置し、こちらに来たのだと。
「本当にわたくしだと気付いていたのですね。何か理由でも?」
「そうですね……あなた様になら話しても良いでしょう。先ほどの話と繋がります」
「隠し玉の件ですか?」
「ええ。実は私の能力は『探知』というものでして、普通の人には見えないものを認識することができるのです。霊などではなく、それこそ姿を消した式神や気配を殺して接近している者などが対象ですね。それを常時、使用しているのです。探知できる範囲は限られますが、それより広い範囲を見ようとしなければ使用時間に制限がありません」
私が禁色を賜ることができたのはこの能力のおかげでもあるでしょう、と語られる。彼が言うには今まで黒曜にしか能力を明かしていなかったらしく、家族にも秘密にしているとのこと。つまり、本当に黒曜の隠し玉だったというわけだ。彼は黒曜とは幼少の頃からの付き合いなので長らく黒曜を守ってきたのだろう。誰の目から見ても分かるほどの信用を得ているわけだ。
姿を消していたはずの霜に気が付いたのは能力のおかげであり、この式神の主人は貴妃だったはず、と考えた後に『下女』を見れば特徴が一致していたのでそのことを黒曜に伝えたのだろう。
「すごいお力ですね。お二人で対処できない相手ならば追加の人員を手配すれば良いだけですし……」
「はい。ですが私ひとりでは見落とすこともあるかもしれませんので、皇后となるお方にはぜひ手助けしていただければと思っております」
含みのある笑顔の理由は何だろうか。遠回しに『どのようなお力か分かりませんが、強力な能力をお持ちのはずの蓮華妃にはぜひ、皇后となっていただきたく』と言われているような気がしてならない。たしかに蓮華なら黒曜だけでなく黎邦の手助けもできるだろうが、そのためだけにじゃじゃ馬娘を皇后にと推す必要性は分からない。
「それはそうと。陛下の体調が少し回復したと聞きましたが、本当ですか?」
「その話は半分本当で半分嘘ですね。今は問題ありませんが、少しずつ体調を崩した時の症状が重くなってきております。あの方は堂々と長時間眠れる、などと苦しみながらも満足気ですが」
「ああ……」
たしか彼は仕事さえなければいくらでも眠れる人だった。皇帝になって気を張っているのか、それとも身内以外に呪いを悟らせぬよう注意していたからか、近年はしっかりしていたらしいが、本来の性質はのんびりしている。
それに振り回されているであろう黎邦は、休ませないといけないのは当然ですが、仕事が一向に片付かず……と額を抑えていた。
呪いのせいで体調を崩すから仕事が片付かず、臥せっている期間の分を一度に清算しようとするからのんびりする暇がなくて、忙しくしている間にまた呪いの影響が出る。これでは悪循環だ。こんな生活を送っているのを知れば、昔の黒曜が消えてしまったのも理解できる。
「私は陛下の元へ戻らねばなりませんのでこのあたりで失礼しますが、また先ほどのようなことにならないようお気を付けくださいね。蓮華妃は行動力の塊のような方ですし、自由行動を止められるとは思っておりませんが」
「うっ……き、肝に銘じますわ……助けてくださりありがとうございました。お気を付けてお戻りくださいませ」
ご覧いただきありがとうございます!
よろしければ感想、レビュー、ブックマークや広告下の☆☆☆☆☆で評価していただけると励みになります!




