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鳥籠の華は皇后選定を乗り切りたいっ! ──呪われた皇帝を救いましょう──  作者: 山咲莉亜
鳥籠の華は皇后選定を乗り切りたいっ! ──呪われた皇帝を救いましょう──

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28 ペイッと

「でしたら、わたくしが代わりましょうか? 虫は嫌いではありませんし」


 蓮華の声掛けに返事をしながらも逃げ惑う清夏宮の下女達。しかしこれでも四夫人の宮の下女として選ばれた誇りがあるのか、蓮華の言葉には頷かなかった。


 彼女達は一も二もなく頷くかと思っていたので、これでは少し困る。蓮華としても、できる限り周囲の目を気にせず調査をしたいのだ。それならば、と足元を這っていた芋虫を摘み上げる。


「皆様?」

「なに……えぇっ!?」

「ちょっとあなた、()()をどうするつもり……!?」

「もちろん、こうするんですよ?」


 蓮華の手元を見て青褪める下女達。直撃はしないように配慮しつつ、そちらに向かってペイッと投げれば、石像のように固まってしまった四人の足元に落ちる。しん、と静まり返った後、最初に聞こえたのは誰かの引き攣った呼吸音だった。一拍置いて全員の悲鳴が見事に重なる。


 それは『きゃあ!』などとかわいらしいものではなく、濁点の付いた本気の絶叫だった。


「あらあら、うふふ……」

『蓮華……』


 心配しなくとも、芋虫を投げた方向には柔らかい土がある。あの子は怪我ひとつないはずだ。

 とはいえ、少々やりすぎた感は否めない。怯えきった顔に涙目で、身を寄せ合いながら距離を取られた。少し離れた場所にいた、同じエリアの整備をしていた下女からも注目を浴びている。


「虫、苦手なのですよね? わたくしはこの通り平気ですので、場所を交代しましょう。あちらに傷んでいる葉が多い箇所がありましたので、皆様にはそちらをお願いしても?」


 ひとりでやるには量が多すぎますから、と頬に手を当て、困ったように小首を傾げて微笑んで見せる。それでもまだこの場所を譲る気がないのなら蓮華が諦めるしかないが──


「おっ、お願いしますー!!」

「はーいっ!」


 ──まあ、普通は逃げていくだろう。虫だけでなく、蓮華にも恐れをなしているようだし。


『……明るく元気な女の子、ではなかったのか?』

「間違ってはいないでしょう? これで動きやすくなったわね!」

『……計算高いことだ……』

「お褒めに預かり光栄だわ」


 ちらり、と傍にある建物の二階を見る。恐らくはあの大きな窓がある場所が芙蓉の私室。あそこならたしかに、霜の言う通り監視にも向いているだろう。

 無論、まだ『黒』と決まったわけではないし、あの芙蓉がそんなことをするわけ……とも思うが、常に最悪の事態を想定して動くのが妃としては正しい。とりあえずまだ何の確認もできていない状態では、『白よりのグレー』くらいに考えるのがちょうどいいだろう。

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