25 初めてのお友達
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先ほど蓮華が春麗宮に戻ると黒曜の遣いが来ていたらしく、侍女長から伝言を聞いた。今宵のお渡りがなくなるとのこと。……黒曜の体調が、悪化しているらしい。高熱と嘔吐が主らしいが、遣いが来る直前までは意識もなかったと聞いた。何度も心臓を捻り潰されているかような激痛に苦しんでいるようだ。
心臓を捻り潰されているように感じるのは、やはり蛇の紋様が原因だろう。すぐに霜に確認しに行ってもらうと、これほどのものでも今までのすぐに回復する類のものと同じ状態に見えたそうだ。
しかし、いつまでも体調不良と回復を繰り返すわけでもないだろう。このままではいずれ死に至る上、精神面でも相当辛いはずだ。皇后選定の一ヶ月間、黒曜の体が持つか分からない。無事だったとしても選定を通して解呪に近付けなければ結果は同じ。
「そしてこれは芙蓉様からね」
例のお茶会以来、蓮華と芙蓉は頻繁に会って話をしたり、文を送り合ったりしている。夢鈴からも定期的にコンタクトはあるし、こちらは本当に驚いたがお茶会での贈り物の礼なのか雪璃からも上質な布をもらった。緋月がとても喜んでおりましたので、とのことだ。律儀な人である。
それでもやはり生き物が好き、という意外な共通点があったからか一番親しくしているのは芙蓉だった。今となっては蓮華もかなり心を許しており、『皇后には彼女を推薦したい』と考えているくらいだ。
内容はいつも通り近況報告や生き物の話で、近頃黒曜の呪いの件でピリピリしていることの多い蓮華からすると、このような何気ない会話は最も息抜きができる安らぎの時間になっている。蓮華と芙蓉は友人である、と。そう思っているのが蓮華だけでなければ嬉しい。
『蓮華』
「何かしら?」
『今日の調査結果をまだ話していなかっただろう。大体はそちらにも情報が流れていると思うが、音以外の情報は我しか持っていないからな』
少し悩まし気に溜め息を吐いた霜は、今日のも大体は蓮華の知っている情報のみだが……と前置きし、ゆっくり言葉を選びながら話し出す。
『ひとつ、気になることがあった』
「……どうしてそんなに躊躇っているの?」
『聞いて後悔しないか?』
「分からないわ。けれど、わたくしの優先順位は黒曜様が一番なの。黒曜様の呪いを解呪できるのなら後悔することになっても耐えて見せるわ」
霜の口振りから予想するに、彼の中ではかなり核心に近い情報なのではないだろうか。そしてそれが、場合によっては蓮華の心を揺らすことになると思っている。……つくづく、主人思いで心優しい式神だ。きっと続く言葉では話した霜の方が傷付いてしまう。それでも蓮華は────
「教えて、霜」
『……承知した』
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