17 マーガレットの華に告ぐ
「うふふ、雪璃様ってお姉様の前でもそんな感じなんですね! 今のは少し面白かった……お気の毒だなって思いましたけど!」
皆様ご自身の式神を披露しておられるようなので、とにっこり笑った夢鈴は自分の首元の何もないところをそっと撫でた。
「この子は嵐風と言います。毒を持っているのでこう見えて強いのですよ! 誰彼構わず噛むわけではありませんけれど!」
夢鈴が撫でたところから現れたのは細く長い白蛇。夢鈴の首に巻き付いており、彼女の言う通り敵対心は低そうに見えた。
昨晩の宴で夢鈴は『うちの嵐風とどちらが強いのかしら?』と、少なくとも好意的な感情を持つ者には向けないであろう言葉を投げかけてきた。その時の『嵐風』というのは彼女の式神のことだったのだな、と今になってようやく蓮華は理解した。誰のことを言っているのかと疑問に思っていたため、スッキリして気分が良い。
「夢鈴様、昨日のお言葉のお返事ですが。恐らくはわたくしの霜の方が強いでしょうね。そもそも体が大きいので毒が回りにくいですし、能力も瑞家の女の式神になるくらいなので……」
「あら、私の翠も意外と力があるのですよ?」
『芙蓉、それはちょっと無理がある』
『何をどう考えても、毒蛇や白虎に勝てるはずがないしな。ま、一番は俺に決まって……っおい! 痛いんだけど!』
見事なまでに親馬鹿もとい主人馬鹿を発揮する芙蓉と突っ込みを入れる翠。それに乗っかろうとした緋月。緋月は先ほど好き勝手したからか雪璃に強めの一撃をもらってしまい、少しは大人しくしていたのだが、また同じような気配を感じたのかもう一発お見舞いされている。抗議する緋月とフルシカトする雪璃は親子のようにも見えてしまった。
「────茶会か?」
「皇帝陛下……? 遅くなりました、ご挨拶申し上げます」
最初は蓮華と芙蓉の二人で話をしていたはずだが、気付けば夢鈴や雪璃、式神達まで会話に混ざり始め、今度は黒曜から声を掛けられた。黒曜の姿に気が付いた瞬間、蓮華以外の三人は立ち上がって拱手する。この中で皇帝の次に位が高い蓮華のみ、席に着いたままで頭を下げた。
なぜ彼がここにいるのだろうか。皇帝は毎日激務のはずだ。もしかすると妃の誰かに用があるのかもしれない。
「顔を上げろ。他の妃達が『四夫人全員でお茶会をしている』という噂を聞いたから、公務の合間に様子を見に来ただけだ」
「そうでしたか。お疲れ様でございます」
「ああ」
「陛下、お体の調子はいかがですか?」
「今は問題ない」
やはり、口数が少ない。昔会った時も饒舌ではなかったが、初対面の相手にですら今よりは口数が多かった。それともこれが本来の性格で、初めて会う相手だったからこそ気を遣ってくれていたのだろうか。蓮華にはそうは見えなかったし、そもそも雰囲気が大きく変わってしまっているから心配しているのである。なのでその可能性はなきにしもあらず、といったところだろう。
「皇后選定が始まったが、お前達はもう打ち解けたのか? 今代の四夫人は性格的にかなり荒れそうだと思っていたが」
「そんなことありません。貴妃様も優しくしてくださいまして、淑妃様や賢妃様もとても素敵な方ですよ! 荒れるどころか仲良しかもしれませんわ!」
「ああ……それは良いことだ。ぜひ今後もそうであってくれ。では私は公務に戻る」
振り向きざまになぜか蓮華に視線を向けた黒曜は、その後何も言うことなく側近の黎邦を連れて東屋から離れて行った。
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