14 共通点
「たしか、蓮華様は能力を明かされていませんでしたよね……では、お好きなものはありますか? 趣味などでも」
「わたくしの好きなもの……」
自由、とはさすがに言えない。あれは完全に私的な場で、かつ信用している者しか周囲にいない時に言っているのだ。妃の身分である以上、下手すれば罪に問われるかもしれないことを堂々と言うわけにはいかないだろう。
「好きなもの、とは少し違うかもしれませんが、瑞家は自然の多い領地にあるので虫や蛇のような生き物が得意ですね。少し森の中に入るだけでそういった生き物が湧いて出て来るので、他家のご令嬢だと近寄ることも難しいかと思います。でもよく見ると案外かわいいものだなと常々」
「そっ、それは本当ですか!? 実は私も生き物全般が大好きなのです! それこそ生活を共にできるくらいには……!」
試したことはありませんけれど! と急にハイテンションになった芙蓉が続ける。そのまま明るく弾んだ声色で生き物の魅力を語る芙蓉は、『例えばあまり人に好まれない蛾は、好意的に見る方の多い蝶の仲間なのでじっくり観察すると妖しい美しさを持った子が多いのです!』と自身の知識を蓮華に話してくれる。
呆気に取られつつも、昨日出会ってから一番楽しそうにしている芙蓉に思わず笑みがこぼれる。微笑ましく見守っていれば、ハッと我に返った彼女に慌てて謝罪された。楽しかったのなら謝らなくてもいいのに。
「ごめんなさい、はしたなかったですよね……!?」
「いえいえ、そんなことありませんよ。わたくしは芙蓉様と同じく生き物が好きですし、聞いていて楽しいので良ければもっと聞かせてほしいです。自分の好きなものについて話している時って、ついつい夢中になってしまいますよね! すごく分かります!」
「そ、そうですか……? ご不快でなかったのなら安心しました、ありがとうございます」
「はい! そういえば芙蓉様、猫は虫を見つけたら玩具にしてしまうと聞いたことがあるのですが……」
そっと、芙蓉の膝の上でくつろぐ黒猫に視線を向ける。すると蓮華の視線を追った彼女は、言いたいことを察して少し不服そうな表情を見せた。これだけで言わんとしていることが分かってしまう。
「ええ、私が逃がそうとしてもその前に捕まえて遊んでいます……何度注意しても懲りないので、式神ではなくただの動物としての本能もあるのかもしれないと最近思うようになり……」
「やはりそうでしたか……動物としての本能については、わたくしも同意です。うちの式神も何かと勘がいいところがありまして。そもそも式神や能力については分かっていないことも多いので、わたくし達の考えが当たっている可能性もあるのではないかと」
これに関しては助けられることもあり、逆に困らされることもあり……当事者達は主人の会話を気に留める素振りもないので、動物の式神を持つ者は共通の悩みを抱えているのかもしれない、と二人揃って苦い笑みを浮かべた。
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