13 意外な一面
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今日は宴の翌日、淑妃の芙蓉とお茶会の約束をしている日だ。結局、ちょうど良さそうな手土産は思いつかなかったので瑞家の領地の特産にもなっている茶菓子を用意した。お互いに連れているのは式神と毒見役の侍女一人のみである。
「お待たせしてしまって申し訳ありません、芙蓉様」
「いえいえ、お気になさらず。どうぞこちらへ」
「失礼します」
約束の時間より少し遅れて姿を現した蓮華は、顔を合わせるなり軽く頭を下げた。しかし言葉通り、彼女は怒ってなどいないだろう。このような場では立場が上の者の方が後から来るものだ。
今日は春らしい暖かな陽光に包まれた、お茶会に相応しい天候の日だ。芙蓉も言っていたようにこの東屋から見える花畑はとても美しい。後宮らしさが溢れる華やかな場所だ。
「そちらの美しい白虎が蓮華様の式神ですか?」
「ええ、そうです。そういえば昨日は姿を消していましたね。霜、という名前の式神になります」
「あら、とても素敵なお名前ですね。はじめまして、淑妃の芙蓉と申します。こちらは私の式神、翠です」
口元に手をあて、驚いたような仕草を見せた芙蓉は蓮華の斜め後ろに座る霜へ声を掛けた。芙蓉の式神は美しい黒の毛並みにエメラルドの瞳を持った、高貴そうな黒猫だ。紹介された彼は蓮華の式神である霜に挨拶をしている。式神は主人に似るものなのだが、たしかに翠の友好的なのに高貴な雰囲気が消えないところは芙蓉にそっくりかもしれない。
「たしか芙蓉様がお持ちの能力は『強化』だったかしら? どのようなものか、差支えなければ教えていただいても……?」
「構いませんよ。これは言葉通り何かを『強化』できるものでして、その強化する対象は何でもありです。この能力は希少なものではありませんし比較的地味なものになりますが、少なくとも現時点ではこの国の誰よりも私が使いこなしていることでしょう」
実際、妃としては名を持つ夢鈴様より立場が上ですから、それこそが国内一である証左と言っていいでしょうね。
意外にもそんなことを口にして微笑む芙蓉に蓮華は内心驚いていた。彼女はもう少し謙虚なイメージがあったからだ。だがまあ、蓮華は自分に自信がある人が好きなので芙蓉の言うように実力が伴っているのであれば良いことだと思う。
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