12 神の愛し子の如き華
賢妃、雪璃はずっと不機嫌そうな態度で少し関わるだけでも苦労しそうな相手だった。
「雪璃様は苛烈だけど冷静という、相反する性質を持つ方なのではないかしら? そしてこれはただの想像にすぎないけれど、『自分にも他人にも厳しい』という人な気もするわ」
冬蘭宮に住む冬のお妃様。髪飾りは賢妃の冠のみだったが、耳を飾る雪のモチーフの飾りが印象的だった。そしてさすがは四夫人、才だけでなく美まで持ち合わせている。
ちなみに春麗宮の春の妃こと蓮華は、白虎の式神である霜とは真逆の艶やかな黒髪、そして瞳は霜と同じ神秘的な金だ。貴妃の禁色である薄紅の衣を身に纏っており、髪は金色の代々貴妃に受け継がれている冠と、数本の簪で飾っている。初対面の者に良く言われるのは『天女のような容姿』だ。中身がどうなのかは言うまでもないだろう。
そして皇帝黒曜。彼は銀髪青眼で左目の下に泣きぼくろがある。とても整った顔立ちで、それは『国内最高峰の美貌』と言われるほどのものだ。後宮の妃も心から慕う者も少なくないはず。蓮華と初めて会った時は笑顔が魅力的な人だったが、今日一日彼を見ていた感じだと彼はその笑顔を失ってしまったらしい。原因は呪いのことが関係しているのではないかと思うが……
「黒曜様、大丈夫かしら……あのタイミングでお部屋に戻られたということは、皇后選定について説明するくらいの余裕もなかったということだものね……」
『たしか呪いに気付いたのが二年前だったか。どの程度強力なものかにもよるが、これまでほとんど影響が出ていなかったのであれば今後も急変することはなさそうだが……しかし解呪できなければじわじわ追い詰められていくだろう。解呪したいのならまずは呪いの原因を突き止めることだな。それにしても二年も耐えたとは丈夫な男だ』
「解呪ね……当然、主人の危機なのだから方法は全力で探すわ。けれど皇后選定のことを考えると、表立っては動かない方が良いのではなくて?」
解呪の方法が分かり次第、妃の誰かに情報を共有する。側近の黎邦に伝えるのもありだが、彼は黒曜と共に皇后選定の審判に関わっているのでできる限り避けたい。
『ああ、そこは蓮華の好きなようにすればいいだろう』
「でもわたくし、妃としてやらなければならないことが多いのよね。他の妃の相手、楽しい黒曜様のお相手、貴妃らしく怠惰に過ごす、実家に帰った時どうやってお父様とお兄様に仕返しするか考える……などなど?」
『そこは嘘でも刺繍や書、勉強と言うところなのではないか?』
「わたくしは皇后になりたいわけではないもの。皇后になるための努力をするつもりはなくてよ。だから霜、頑張ってね!」
肉体の疲労や痛み、能力の使用条件等は式神と主人で共有しているのだ。能力を使わなければならない仕事を霜に任せるからと言って、彼ばかりが苦労するわけではない。実際に動く者が違うだけなのだから姿を消すこともできる式神の方が有利に事を運べるだろう。
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