11 瑞朱華国
『我から見て一番厄介そうだったのは徳妃だな。見かけほど甘い性格はしていない』
「やっぱりあなたもそう思った? 賢妃の雪璃様がおっしゃっていた『腹黒妖精』というのも彼女のことだと思うのよね。すべてが演技ではないからこそ逆に接しにくいというか……しかも、夢鈴様は名を持つ一族の生まれだから霜の言う通り、厄介な要素しかないわ」
名を持つ一族、というのは言葉通りこの国の国名である『瑞朱華』の一文字を持つ家のこと。詳しい説明は省くが、初代皇帝の腹心だった男二人が大きな功績を上げたので皇家を含む三家で国名を分けることになったらしい。それが現皇帝である『華黒曜』と大貴族である『瑞蓮華』、『朱夢鈴』の血筋。
だからきっと、『瑞家の女性は必ず強力な式神を生み出せる』という特性があるなし関係なく、蓮華は入内を命じられていたことだろう。蓮華にとっては迷惑極まりない血筋だ。ただまあ、皇后になるのは嫌だが少しでも黒曜の傍にいられる時間があるのは嬉しい……などとこっそり考えている。その心を汲み取っているからこそ、霜は後悔しない道を選んでほしいと蓮華に言ってきたのだろうが。
「とはいえ、周囲の人間が絆されてしまうのも頷けるくらい、かわいらしい部分も感じられたのよね。笑顔や素直なところとか……」
『たしかに。これは我の意見だが、最初は蓮華を試しているように見えた。そして徳妃が満足できる対応だったから最後のあの言葉なのではないか?』
そう言って霜が首を傾げると、頭に抱き着いていた蓮華は体勢を崩して寝台に倒れ込んだ。こっちを見ているのだから蓮華が倒れ込んだのも分かったはずなのに、霜は心配の言葉一つ掛けようとしない。紛れもなくマイペースな蓮華の式神である。スプリングのおかげで怪我はしていないが、シーツに向かって顔からダイブしたのだから少しは申し訳なさそうな顔をしてくれてもいいと思う。ムッと頬を膨らませ、拗ねたような仕草をすれば霜は呆れ気味に蓮華の頬を舐めた。これで満足か、とでも言いたげだ。もちろん、大袈裟な反応をしたが本当は甘やかしてほしかっただけなので満足である。
「認められたのならいいけれど……やっぱり誰よりも計算高そうな方だわ。敵に回らないことを祈りましょう」
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