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世界の創造主は、仲間達と問題の後始末ばかりします。  作者: 灰色
依頼1 スラム街の後始末をします。
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4 世界神レムルの宣告

 ニールとドレイクを連れて、クリエたちがスラム街にある酒場に着くと、すでに何人かの騎士団が剣を構えて神狼の使徒である狼二体に向けていた。

 一方狼たちはそんな事は気にしないのか、酒場の近くに座り込むと、呑気に毛繕いをしている。


「お前たち剣を収めろ! ここは私たちが対処する、下がるんだ」


 剣を構ている騎士団員たちにニールが叫んだ。

 剣を収めた騎士団員たちは後方に下がると成り行きを見守る。

 すると、クリエが一人、二体の狼に近づくと撫で始めた。

 その光景にその場にいた全員が驚く。


「よーしよし、いい子いい子。君たちと会うのは初めてだね。彼女が呼んでいるのかな?」


 暫く気持ち良さそうに撫でられていた狼たちは立ち上がると小さく吠え、そして防壁の外へと消え行く。


「皆、レムルが呼んでいるみたいだから行こうか。ニールとドレイクも付いて来てね」


 突然の出来事にクリエ以外が茫然としていると、気を取り直したニールが防壁の扉を開かせ、全員で世界神レムルが居る、神狼の森へ向かう事になった。


******


 馬車で数分。徒歩でも行けるほど近い場所に神狼の森はあった。

 生い茂る豊かな木々に、小鳥たちの鳴き声で踊る様に蝶が舞っている。


「凄い綺麗な所……こんな場所でお酒を堪能したいわ」

「止めてくれ、こんな場所で酔いつぶれたお前の面倒を見るのはごめんだ」

「そうなったらいっその事、ここに埋めて養分にするのもいいでしょうね」


 アニスの言葉にミヨン、ウィルが冷ややかに反応する。


 神狼の使徒二体が案内するかのようにクリエたちの前を歩いていた。

 途中でリスやウサギなどの小動物に、鹿や猪、熊などにも出会うが、それらは逃げたり襲ったりせず、一行を静かに見つめている。


 やがて大きく開けた場所に出る。

 周囲を木々が取り囲み、中央はポッカリ空を見渡せる穴が開いていた。

 日の光が穴を通して降り注ぎ、小さな湖に光が綺麗に反射している。


「ようこそ、神狼の森へ。わざわざお呼びして申し訳ありません」


 森の奥から女性の声が聞こえた。

 前髪が白く、後ろの方に行くに黒くなり、白と黒の模様が混じった簡素なドレス姿の女性が姿を現すと、使徒の狼二体はいずこかに去って行く。


「世界神レムルと申します」


 静かだが、その威厳漂う雰囲気に、その姿を見たクリエ以外が跪いた。

 クリエはレムルにただ手を振っている。


「久し振りだね、レムル。元気だったかい?」

「お久しぶりですね。この様な状況ですが、私も森のモノもみな元気です……貴方とは積もる話もあるのですが、今は先にすべき事がありますので」

「そうだね。どうにかしないといけないね」


 軽くクリエとの会話を終えたレムルは、ニールたちに声を掛けた。


「お伝えしたい事があり来ていただきました。私自身がジオノーシュへ行っても良かったのですが、今の状況では無用な混乱をきたす可能性があったので。どうぞ楽にしてください」


 レムルの言葉に跪いてたニールたちが立ち上がる。

 それぞれが軽く自己紹介を終えると、ニールが恐る恐る口を開いた。


「レムル様、よろしければ今回の事を教えていただけないでしょうか? 調べてはいるのですが、現在我々がなぜ襲われたのか分からないのです。情けない話である事は理解しております」

「ニール・ハルミトン。今から言う事は必ずベイルに伝えなさい。いいですね?」

「は、はい」

「一週間だけ待ちます。一週間経っても、今回の件が終わらないようであれば……街を滅ぼすと。事の次第よっては王都も無事では済まないでしょう」

「なっ! そ、そんななぜですかっ!!」

「復讐です」

「ふ……復讐?」


 思いもよらない言葉に、クリエだけは静かにレムルの言葉に耳を傾け、他の者は驚いてた。


「一週間以内に、生きていても死んでいても構いません。今回の元凶を私に差し出して下さい。それで手打ちとします」

「そんな……一週間だなんて」

「すでにヒントは与えてあります。答えもそこに。後は貴方たち次第です」

「……」

 あまりに絶望的な言葉に、ニールは何も言い返せずにいた。

 ドレイクも難しい顔をして考え込んでいる。

 重い沈黙が辺りを包み、暫くした後、不意にレムルが口を開く。


「ニール、貴方は大きく母親の様に優しい人間に育ちましたね。嬉しく思います」

「……え? 私の事を御存じなのですか?」


 レムルは笑顔を見せると、その体を大きな狼に変化させた。

 大きさは馬よりも少し大きく、白と黒の柔らかな毛が風に揺れ、差し込む光を綺麗に反射させる。

 その姿をニールは見た事があった。神狼の姿になったレムルが言う。


「この姿で会うのは久しぶりでしょうか? 貴方は今よりも小さかったですね」

「そんな……その姿はまさか」


 それはニールがまだ小さい頃に何度も撫で、抱き着き、その温もりの中でいつしか寝てしまった……今でも色褪せない思い出の狼だった。


「貴方の母親とは良く会っていたのです。貴方の事を何度も聞かされましたよ。ジェナが亡くなった事は本当に残念でした」

「……ありがとうございます。母もきっとその言葉を喜んでいるはずです」

「ですがニール。優しいだけでは駄目なのです。誰かを救いたいと思うのであれば、時には辛い決断もしなければなりません」

「……」

「幸い、今の貴方には力になってくれる者がいます。覚悟を持ちなさい。誰かを守ると言う事は、それを背負うという事なのですから」

「……はい。必ず期限までに、今回の元凶をレムル様の元へお連れします」


 ニールは何かを決意したように答える。

 レムルが人型に戻ると、クリエの方を向いた。

 特に何かを言うわけではないが、暫くクリエとレムルが見つめ合い、フッとクリエが笑う。


「また後でね、レムル。そろそろ僕たちは帰るよ」

「はい、帰りの道中お気をつけ下さい」


 そしていつの間にか現れた二体の狼に連れられ、クリエたちはジオノーシュへと帰って行った。


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