音楽祭 エピローグ
一方、カレンたちと別れたクリエたちは、丘から少し離れた人気が無い道を歩いていた。
その時、少し後ろに歩いていたリゼが不意にクリエたちに声を掛ける。
「少し大切なお話があるのですが、よろしいでしょうか?」
全員が振り返りリゼを見る。普段と違い、どこかその表情は真剣だった。
「先ほどのお話、大変驚きました。まさか暗黒時代や神にあの様な違いがあった事に。ですがそれよりも、カレン様は自らの偽りを認め、前に進みました。クリエ様……貴方様もせめて使徒の方々には本当の事をお話してもよろしいのではないでしょうか?」
ミヨンたち三人は何を言っているのか分からなかったが、クリエとデセミアの表情がにわかに硬く変わる。
「失礼を承知で言います。クリエ様、貴方様はこの世界のそう……っ!」
そこまで言いかけた時、デセミアがリゼとの間合いを一瞬で詰めると、その首を掴んだ。
ただ力までは込められていないが、いつでも折る事がデセミアには出来る。
「そこからは本人の許可無しに話す事は許されない。必要であれば、ここで死んでもらう」
普段の口調とは違い、デセミアは表情は真剣で、ミヨンたちには何が起こったのか分からなかった。
クリエはそんなリゼを静かに見つめている。
「リゼはどうやってその事を知ったの?」
「最初は知りませんでしたが……エルフの女王様方から無理を言って教えてもらいました」
「デセミア、その事は知ってた?」
「いや、そう言う事は報告するように言ってあったハズだが……全くあいつらは」
「女王様方を責めないで下さい。わたくしを信じての事ですので」
「理由は?」
首を掴まれていながらもリゼは笑顔になる。
「勿論、クリエ様の事を知りたかったからですわ。何が好きなのか何が趣味なのか、どうような神なのか。その全てが知りたかった。貴方様にわたくしが出来る事は、全てして差し上げたかったからです」
真摯なリゼの眼差しに、クリエは微笑んで返す。
「デセミア、手を離してあげて」
そして未だ困惑してるミヨンたちと向き合った。
「ミヨン、アニス、ウィル。今から大切な事を言うよ。僕は世界神じゃないんだ。今まで嘘をついてごめんね」
「……だったら、クリエは一体何なんだ?」
ミヨンがためらいがちに聞く。
「僕は創造主。この世界や神、あらゆるルールを作った全ての創造主なんだ」
『……』
クリエの言葉にミヨンたちは静かに耳を傾けていた。
「だから、君たちには選んでもらわないといけない。このまま僕と旅を続けるのか、辞めるのか。自由に選んで良いよ」
クリエに言われミヨン、アニス、ウィルはお互いを見ると大きな溜息を吐き、どこか呆れた様にミヨンが口を開いた。
「それがどうかしたのか? お前が変なのは最初からだろう?」
「そうよ。クリエがおかしいのは途中から気付いていたし、今更よね?」
「それに、私たちは創造主とか神だとか、そんな事は関係なくクリエ様だから一緒に居るんですよ?」
次々にやれやれといった感じでミヨンたちは首を振りながら答え、デセミアが笑う。
「クリエ様、どうやら答えなど聞く必要はなかったようですよ」
「全くだね。おかしいな、どうして僕が責められている感じになったんだろう?」
「そんなの、クリエ様への愛ゆえにですわ。それが分からないなんて、クリエ様もまだまだですわね」
事の発端であるリゼが、なぜか胸を張って言う。
「そもそも、リゼはなぜ言おうと思ったの?」
「自らの偽りを超えたカレン様を見て、使徒の皆様も本当の事を知るべきではないかと思いました。わたくしだけが知っているのは……どこか卑怯な感じがしたので。わたくしのただの我儘です」
「いいんだ。君の言う事は一理ある。僕もいつかは話そうと思っていたからね。きっかけをくれてありがとう」
「他の連中にも教えておくか?」
少し前まであった険しい顔つきはなく、普段の調子に戻ったデセミアがクリエに聞く。
「そうだね。勘違いがあっても困るし、僕から伝えておくよ」
と、クリエは人差し指を上げると、小さな光が一瞬だけ光った。
「これで良し。世界神と僕の事を知っている人には、今回の件は伝えおいたよ。みんな、改めてこれからもよろしくね」
笑顔のクリエがミヨンたちを見る。
するとミヨンとアニスがクリエを手を取り、ウィルとリゼはクリエの背後に立った。
「じゃあ、この話はこれで終わりだ。私たちも音楽祭を楽しむぞ。リゼから軍資金はたらふく貰ったからな!」
「そうよ。それにまだいろいろ食べたり飲み足りないわ」
「いろいろな服飾も出ていますしね。覗いてみましょう」
「ぜひ我が商会にも寄って下さい。最高級の商品をお見せしますわ」
クリエはミヨンたちに引っ張られるように、賑やかな都市へと連れられ、
「おーい、俺を忘れるなよ」
そのやり取りに一安心したデセミアは、慌ててクリエたちに着いて行った。
そして微かに丘から静かで綺麗な音楽が聞こえる中、クリエたちは近年に類を見ないほど盛り上がりを見せる音楽祭の中へ、その姿を消して行く。
~依頼3 音楽祭の後始末をします。 完~
※急になりますが、次回で最終話とさせていただきます※




