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世界の創造主は、仲間達と問題の後始末ばかりします。  作者: 灰色
依頼3 音楽祭の後始末をします。
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6 心の暗黒時代

 エレナから演者たちの事情を知り、途中でデセミアと合流すると、クリエたちは慌てて楽屋へと向かう。

 道中では確かに昨日よりはパフォーマンスを行っている人は少なく見えた。

 どうやら一旦辞めている者は少数で、まだ大きな騒ぎにはなっていない様に見える。 

 

 そして着いた大部屋の楽屋では、カレンと他の演者たちが話を合いをしていた。


「だから辞めるなんて言わないで。きっときちんと説明すればファンの人たちも分かってくれるから」

「でも、私たちが出て怪我人でも出たら、それこそ意味がないよ」

「どうしてこんな事になっちまったんだろうな。折角今日まで頑張って来たのに……」


 カレンは必死に演者を説得しているようだが、上手くいっていないのか他からは否定的な意見が聞こえて来る。


「こんにちは。揉めているみたいだけど、大丈夫?」


 クリエたちが楽屋に入ると、挨拶をして状況を聞いた。

 カレンはともかく、クリエ達を知らない人にエレナが説明をすると、慌てて演者たちが跪くが、すぐにクリエは楽にするように言う。

 クリエたちをカレンは不満げに見た。


「……あんたたち何しに来たのよ。そっちは怪しい人は見つけたの?」

「その件は片付いたよ。それよりもこっちの方が大変そうだしね。何でも出演を辞めるって聞いたけど」

「そうよ。ファン同士の喧嘩もだけど、スポンサーになってる商会同士もお互いを邪魔し合ってるって疑いだしてね。収集が付かなくなってきたのよ」


 どうやらリゼの言った通り、それぞれを支援している側でも、裏では同じような事が起こっているみたいだった。


「なるほど。確かに大事になって来たね」

「あんたたちは世界神なんだし、どうにかこれくらい出来ないの?」


 カレンに言われ、暫くクリエは顎に手を当てて考えると、首を軽く捻ってカレンに聞いた。


「……君は何かしたの? ここに住む思想神だよね?」

「は? 私は今もこうしてみんなを説得してるじゃない! 一体何見てるの!」


 カレンが不機嫌そうに声を荒げたが、クリエは笑顔で口を開く。


「それ、意味があるのかな? 君たち演者の仲が良い事は知ってるよ。問題は応援してる人なんだよね? なぜ、その人たちに何も言わないの?」

「勿論、言ってる人はいるわ。でも、信じてくれないの。無理やり言わされているんだろうって」

「違うよ。僕は君に、思想神カレンに言ってるんだ。君はマイクを持って、本当に訴え掛けた?」

「え? そ、それはまだしてないけど……悪化したら元も子の無いから」

「でも、このままだとその元が無くなっちゃうね」

「……何よ、私が悪いって言うの!」


 感情的なカレンとは裏腹に、クリエは冷静だった。

 そんな二人を見てデセミアは小さく笑う。


「クリエ。懐かしいな、この状況。そう思わないか?」


 デセミアの言葉にクリエ以外は意味が分からないといった表情になり、カレンを見て説明を始めた。


「ここに居る奴だと、俺とクリエ以外は体験してないだろうが、300年以上前にあった心の暗黒時代だよ。まさに今みたいな状況だったんだ。信じない、誰も信じてくれない、どうしようも出来ないってな」

「そうだね。もっとも当時は世界規模で、暴力も多発して今以上に大変だったけど」

「その時はどうしたのよ?」

「実際はノルエステが行動したってのもあるが、根本的にした事はただ一つだ」

「一つだけ? 大変だったのに?」

「命を掛けて信じて欲しいと訴えた。それだけだ」

「……」


 それはその場にいる全員にとって予想外な言葉だった。

 もっと大きな力を使ったとか、そういった事だと思っていた。

 クリエやデセミアが当時を思い出しながら口を開く。


「ノルエステの絶対的規律に『不正などの裏切り行為は死刑』ってあるのは知ってるよね。あの時代、人の心を動かすには、文字通り命がけだったんだよ」

「最初そんな馬鹿みたいな規律を守ってまで、ギルドに入ろうなんて思う奴は正直居ないと思ってた。だが、現実は違った。みんな心の中では嫌気がさし、本当はどうにか変えたかったんだ」

「でもお互いが信じるには、言葉や行動だけでは足らなかった。それを補うのが命だった。当時、それでも結果が気に入らないといって、殺された人も居たよ」

「でも、集まったみんなは諦めなかった。命がけで誰かを信じようと信じたいと思った。だからこそ、ノルエステは認められ、今も存在している」

「……何が言いたいの?」


 カレンは少し前までとは違い、真剣な表情でクリエとデセミアに聞き返す。


「今、ここに居る人たちはファンに……信用できないという疑心暗鬼に未来を殺されようとしているんだ。夢も努力も踏みにじられてね」

「……っ」

「そしてそれを変えられるのは、僕でもデセミアでもなくカレン……ううん、かつてモフトという神に疑問を持ち、自らを殺してしまった君にしか出来ない事だと思ってる」

「な、なんでそれを!」


 秘密を唐突に暴露され、カレンはアニスを睨みつけた。

 アニスはただカレンを真っ直ぐに見つめている。


「僕たち世界神は、思想神がいつ、どこで、どういった想いで生まれたのを知っているんだ。だから隠し事は出来ない」

「……なんだ、最初からバレてたって訳か」

「カレン、君がモフトである事は変えようがないんだ。このままではここで演者たちは殺され、君はまたあの歌を歌う事になる。それでいいの?」

「そんなの……嫌に決まってるじゃない」

「守りたいのだったら、命を、存在を賭けないといけない。だって、君が守りたい物は命に等しい物だからね。君なら出来るよ。君はモフトであり、間違いなくカレンでもあるから」


 そこでクリエは、状況についていけていない演者たちの方を向いた。


「君たちはカレンとは信用も信頼もあると思う。カレンの頑張りは、僕たちよりも知っているはず。だからもし、カレンが何かをしようとした時は力を貸してあげて欲しい……よろしくお願いします」


 そして、クリエが深々とカレンたちに頭を下げると、ミヨンたちやデセミアも続くように頭を下げる。


「あんたたち……」

「期限は今日を含めて明後日まで。もしそれまでどうにもならなかったら、デセミアが介入する事になる」

「……」

「でも、僕はそんな事は無いと思ってる。だから……明日は君たちの最高のステージを楽しみにしているね」


 顔を上げたクリエは優しく微笑むと、みんなと楽屋を出て行った。

 その後ろ姿を無言で暫く見つめていたカレンは、演者たちに向き直ると重い口を開く。


「みんな、いろいろ聞きたい事はあると思う。でも、少し私に考える時間を……覚悟を決める時間がほしい。我儘なのは分かってる。お願いします」


 カレンもクリエたちを同じように頭を下げ、その姿に集まった人たちは頷く。

 そして、カレンはお礼を言うと楽屋を出て行き、エレナは慌ててその後を追った。


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