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世界の創造主は、仲間達と問題の後始末ばかりします。  作者: 灰色
依頼1 スラム街の後始末をします。
5/56

2 調査開始

 ドレイクの案内でスラム街に着く。

 少し前までいた中心街とは違い、観光客などはほとんどおらず、寂れどこか元気のない住人が大勢いた。

 どこの国でもこういった場所は存在する。

 物資や財政的に手が回らない所もあるが、中にはわざと放置し、権力者が優越感に浸る為だけに存在させている所もあった。


 普段見慣れない客人が物珍しいのか、スラム街の人たちはクリエたちをジロジロと見つめている。

 少し歩くと、現場であるレムルの使徒に攻撃され、ガレキの山と化してる酒場に着いた。

 使徒が攻撃したとあり、付近は立ち入り禁止になっており、24時間の監視体制が引かれていた。

 また、調べようにもノルエステが来たため、不正防止のため勝手に調べる事も出来なくなっていた。

 酒場は外へ通じている防壁近くにあり、防壁自体には傷一つない。

 その様子を見たクリエがドレイクに尋ねる。


「目撃者は?」

「多数ですな。夜で酒場は盛り上がっていましたし。なんでも、防壁を飛び越えた使徒の狼二体が酒場に近寄って遠吠えをした後、軽く魔法で周囲を攻撃したようです。威嚇でしょう」

「防壁には魔物とか入れない結界があるけど、それは?」

「さすがに使徒には効きませんよ。むしろ破壊されなかっただけ良かったというものです。もし破壊されたら外部から他の魔物が入って来る可能性がありましたからな」


 そこまで聞いた後、ミヨンが質問をした。


「被害って結局どれくらいだったんだ?」

「あの酒場と、恐らく逃げ遅れた店主。あと、酒場から出て来たリベタイル所属の冒険者が一人殺されたくらいです。他二人の冒険者も襲われそうになったようですが、森から大きな遠吠えが聞こえると、使徒が森に帰って行って難を逃れたと」

「冒険者がこんな所に?」

「ええ、まぁこういった酒場は安価ですからな。それに安い酒の方が口に合うという人もいるので。冒険者についても調べましたが、三人ともBランク。ここに住む、ある豪商の護衛を引き受けていたようです」

 

 世界冒険者ギルド「リベタイル」は特定の国家に属さず、雇われて仕事をする人たちを管理しているギルドだった。

 女性の世界神である「レテリア」がトップにおり、最終的な決定権を持っている。


 ランク制度でSランクからFランクあり、Sとは別に最後のこれ以上が存在しない事を表す、Zランクが存在する。ランクによって受けられる仕事が違い、報酬も違った。

 Zランクは「勇者」「賢者」「剣聖」など、二つ名が付く事があり、ただ強いだけではなく、その人格なども求められる。

 世界でもほんの少数しかいないため、通常の任務よりも国家間などの重要な任務を優先して受ける傾向にある。


 リベタイルに所属しない完全フリーの傭兵もいるが、本当に実力と信頼がないと雇われる事は稀だった。

 また大体のFランクなどは冒険者というよりは、アルバイト感覚が多く、任される仕事も命の危険が少ないペット探しや農作業の手伝いなど、安全な依頼が多い。


「ふーん……何がしたかったのか良く分からないなぁ」


 ミヨンは破壊された酒場を注意深く見るが、特におかしな様子はない。

 一旦酒場での調査を終わらせ、スラムの人々から神狼や使徒について、何か変わった事がない聞き込みをする事になった。


******


 最初は見慣れないクリエたちに警戒感を持っていたスラムの人達だが、自分たちが調査で来ており、少なとも敵ではない事を話すと、ノルエステの信用もあってか気さくに話しかけられた。

 情報提供の見返りに多少の金銭を渡すとお礼を言われ、神狼について聞くと、思っていた以上にスラムの人たちからの信頼が厚い事に気付く。


『食べる物が無くて困って、実は森へ隠れて数人で狩りに行った時、レムル様の使徒に見つかってさ。殺されるかと思ったんだけど……』

 別の者が続きを言う。

『狼が俺たちを見ると、ウサギや鹿などを狩って持ってきてくれて、そのままどこかへ消えて行ったんだ。あれが無かったら俺たちや家族は飢え死にしてたかもしれない。本当に感謝しかないよ』


 と、聞かれる言葉はほとんどが感謝だった。


「どうやらスラム街の人と神狼の関係は良さそうですね。となると、強引に調査を打ち切った騎士団がやはり怪しい事になりますが」


 話を聞いたウィルがクリエに言う。その考えはもっともだった。

 少なくともスラム側に神狼に何かする理由がなかった。


「おいてめぇ! ハッキリ言えよ! 本当は俺たちが邪魔で追い出したいんだろう!!」


 不意に裏路地の方から男性の怒鳴り声が聞こえた。

 クリエたちはお互いを見ると、頷いて声がした方へ歩く。

 そこには剣を携え、目深くフードを被った男性が、二人の男性に言い寄られていた。

 話の感じから言い寄っている方はスラムの人間のようだ。

 二人の男性は興奮しているのか、目の前の男性に掴みかかろうとし、クリエはアニスに目配せをすると、


「こんな所で何をしているのかしら?」


 と、背後から二人の男性に声を掛けた。

 不意に声を掛けられた男性が驚いて振り返る。女性だと知りどこか安堵しているようだった。


「な、なんだ女かよ。ビックリしたじゃねぇか。こんな所で女がいちゃ危ないぜ」

「そうそう、俺たちが近くまで送ってやろうか?」


 二人の男性が下卑た顔でアニスを見る。そんな二人にアニスはニッコリと笑った。

 そして近くのこぶし大くらいの石を手に取る。

 破壊音が鳴ると、男たちの目の前ので、石は素手で粉々に粉砕された。


「…………」

「あまりお痛をしてると、貴方達の頭もこうなるわよ?」


 絶句している二人の男性に笑顔で言うと、男たちは何も言わずその場を走り去る。


「全く根性の無い。そちらの方、大丈夫だった?」


 呆れた溜息を吐くと、因縁を付けられていた男性に声を掛けた。

 助けれた男性がフードを取ると、茶色い短髪で整った顔立ちが露になった。

 良く見れば服装もスラムで住んでいる人とは違い、品質の良い物を着ている。

 クリエたちもアニスに合流するが、男性は暫くアニスをじっと見つめていた。


「私がどうかしました?」

「……あ、いえ、失礼しました。その、美しいのに強い方なのだと」

「ふふ、そんな当たり前の事を言われても、何も出ないわよ?」


 嬉しそうに笑うアニスだが、そこへ茶化す声が飛ぶ。


「やめとけやめとけ、そいつはそんななりでも、筋肉ゴリラだぞ」

「さらに言うなら、ズボラで暴力的でお酒好き……中身はおっさんですよ」

「あんたら、潰れたトマトになりたいの?」


 近寄りながら言ってくるミヨンとウィルの顔面をアニスは両手で掴むと、ギリギリと締め上げて行く。

 二人は降参するようにその手をタップすると、アニスは手を離した。


「僕の愉快な仲間たちが、騒がしくしてごめんね」


 遅れて来たクリエが楽しそうに言う。男性の姿に気付いたドレイクが声を上げた。


「ニール様!? あまり危ない真似は辞めていただけませんか」

「ドレイクか? そう言わないでほしい。今はここが大変なんだ。少しでも何か力になりたくて」

「気持ちは分かりますが……事は重要な案件ですので、慎重にお願いします」


 男性はドレイクの言葉に頷いて答えると、クリエたちを見た。


「それでこちらの方たちは?」

「ノルエステから来られた調査員です。そしてそちらの方がクリエ様になります」


 ドレイクがクリエの事を紹介すると、男性はハッとした表情になり跪いた。

 ドレイクもそれに続いて跪く。


「世界神様と、その使徒の方とは知らず、大変申し訳ありませんでした」

「そんなに畏まらなくていいよ。僕の事は大体噂で聞いてると思うからね」


 世界には二種類の神が存在していた。

 一つは「世界神」と呼ばれ、創造主によって造られ、世界の均衡や存続を行う神。

 もう一つは「思想神」と呼ばれ、世界に存在する様々な種族の願いから生まれた神。


 力の強さで言えば世界神が圧倒的に強いが、思想神は数が多く、また生活に密着している事などから身近に感じられ、人気があった。

 思想神は信仰の強弱で力の強さも変化し、信仰が無くなると最悪消滅する。

 世界神は世界そのものと言っても良いので、消滅する事などは滅多ない。


 また世界神は自然の摂理に近い存在でもあるので、行為は出来ても子孫を作る事は出来ないが、

 思想神は人に近い存在のため、子孫を作る事が出来る。

 ただし子供は人の部分が強いため、特殊な力は強くないが、信仰心の有無で消えたりもしない。


 そしてクリエは世界神でありながら、デセミアの作ったギルドで働いているため「下っ端の弱い世界神」という、不名誉なレッテルを貼られていた。

 もっとも本人はそんな事は気にしていないが、仲間である三人はあまりその件をしつこく言うとキレる。


「それにドレイクは僕と初めて会った時、気さくだったしね」

「いやぁ、街中でしたし。目立つのもどうかなと思いまして」

「僕も目立つ事は苦手だから助かったよ。できれば普通に接してほしいかな」


 笑顔でニールに言うと、ニールは立ち上がって頭を下げ、改めて自己紹介をした。


「私は領主の息子、ニール・ハルミトンと申します。クリエ様のお心遣いに感謝します」


 それは領主であるベイル・ハルミトンの一人息子だった。


「今年25歳の好青年でしてな。民だけなく、スラム街の人達の事を思い、たましこうして交流に来ているのですよ」

「私は領主の息子として当たり前の事をしているだけだよ。母はいつも言っていた、民を重んじない者に、領主たる資格はないと。民あっての領主なのだと……母は本当に立派人だった」

「だった? ということは」


 クリエが聞き、ニールは小さく頷いた。


「三年前に病気で亡くなりました。私は母のような誰にでも優しくありたいと思っています」

「そう、立派だね。応援するよ」

「ありがとうございます。所でクリエ様たちは襲撃の件を調べているのですよね? よろしければ、私の話を聞いてはもらえませんか? 力になれるかどうか分かりませんが」

「こちらもスラムでは大体の話は聞いたから、公爵側の話も聞きたかった所だしね。助かるよ」


 流石にスラムの裏路地では話せず、ニールの提案で場所を変える事になった。


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