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世界の創造主は、仲間達と問題の後始末ばかりします。  作者: 灰色
依頼3 音楽祭の後始末をします。
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1 音楽祭の不穏

 マーカス伯爵領、商業都市メテニエは人口5万人を誇る巨大都市であり、音楽や絵画など芸術が盛んで、一日ほど前に毎年2、3回行われている一週間続く音楽祭が開かれていた。

 複数回あるのは一回だけだと来れない人もおり、それを考慮して複数回となった。


 街中は祭りを楽しむ多くの人で溢れ、音楽祭とあり歌手、演奏家、吟遊詩人が多く居る。

 そして、特に特徴的なのが、数年前にある思想神が作った新職業「アイドル」が居る事だった。


 そう言った事情もあり、例年よりも賑やかになっているメテニエにある高級ホテルにクリエたち四人は来ていた。

 リゼも仕事の為に来ており、クリエたちが居る事を知るとわざわざホテルを用意してくれた。

 クリエの部屋ではみんなが集まって話をしている。


「はぁ……こんな良い所に泊まるのって久し振りよねぇ」


 アニスがクリエの部屋にあるダブルベッドに座ると、クッション性を確かめる様に上下に揺らしながら言った。


「だがリゼは抜け目ないな。私たちの部屋は一人部屋だが、わざわざクリエの部屋だけダブルで、しかも飲み物などが備え付けられている」


 ミヨンは棚に陳列されている、お酒やツマミなどを手に取って確認する。


「しかし、シングルであっても間違いなく私たちの部屋も素晴らしい物です。今回ばかりは文句も言えないでしょう」

「そうだね。折角のお祭りだし、仕事が終わったら楽しむのもいいね」


 置かれているソファに隣同士でウィルとクリエが座っている。

 ウィルはクリエの荷物などを手早く片付けると、クリエの髪や服に汚れなどがないか、いつもの様に世話を焼いていた。


「でも今回の依頼って、実際どうにかなるの? 正直、どうしようもない気がするんだけど?」


 アニスが受けた依頼を思い出す。

 アイドルという目新しい職業が参加している事もあり、特に今年の音楽祭は大盛況だが、それゆえの問題が起きていた。


「まぁ、最初の原因つっても、もう居ないかもしれないし。仮に居てもこの人込みで探すのも無理に近いけど……このベッド確かに良いな」


 ミヨンはアニスの隣に座ると、同じようにクッション性を確かめる様に上下に揺れる。


 その問題は、遠方からそれぞれが好きな演者のファンが来ており、ファン同士での喧嘩が所々で勃発している事だった。

 自分の推しを自慢するのならいいが、それ以外の悪口を言ったりして喧嘩になり、時にはステージを邪魔をする者も現れた。

 騎士団や自警団が説得したり、酷い者は拘束したりしたが一向に収まらず、それどころか騎士団や自警団も、特定の人物にエコ贔屓しているだろうと疑われ収集が付かなくなる。


「それに、演者同士は仲が良く、熱くなっているファン同士の問題みたいですしね。騎士団としては扇動している者が居るのではないかと見ているようですが……」


 演者同士には問題がなく、ライバルではあるが敵ではないという認識なのだが、ファン同士が熱くなりすぎて話をまともに聞いてくれない、聞いても誰かに言わされているのだろうとなる始末だった。

 そこで騎士団は祭りが始まる少し前に、音楽祭の事を店などで聞いて周っていた人が居たらしく、その人物が今回の事を扇動しているのではないかと考えた。

 ただ、自分たちが調べても難癖をつけられそうなので、中立組織のノルエステに依頼が来る。


「今回の依頼は難しいね。仮にその疑わしい人を捕まえても、すでに問題はファンたち個人の問題になっているから」

「じゃあどうする? 適当に遊んで無理でしたって帰るか?」

「それも良いけど、今回は保険に助っ人を呼んでいるよ。そろそろ来ると思うんだけど……」


 ミヨンの諦めたような問いにクリエが答えた時、部屋の扉がノックされ、男性の声が聞こえた。


「おーい、開けてくれー。俺だよ俺俺」

「……詐欺か?」

「違うよ。今開ける」


 ミヨンが疑わしい視線を扉に向ける。

 クリエは首を横に振りながら扉を開けると、突如太い筋肉質な両手に掴まれ、小さい子がされる様に高い高いされた。


「おー! クリエはいつ見ても小っちゃいな!」

「君はいつ見ても大きいね」

「そりゃもう、いつも鍛えてるからな! 見ろのこの美しい筋肉を」


 言いながら高身長で大柄の男性が入って来た。

 茶色の短髪で、胸元など小麦色の肌が見える白い服を着ており、筋骨隆々な肉体をしている。


「お前らと直に会うのは……初めてだったか?」


 ミヨンたち三人は入って来た男性を見てを丸くする。そして同時に叫んだ。


『デ、デセミア様!!』


 ノルエステのトップであり「欲望」を司る世界神デセミアの姿がそこにはあった。

 ミヨンたちは慌てて跪くが、


「ああ、そういのは畏まった場所だけでいい。普段はクリエにも普通に接しているんだろう? 俺にも同じでいいぞ。俺もクリエと同じで堅苦しいのは苦手でな。敬語もいらんよ」


 デセミアは豪快に高笑いをしながら言う。

 気さくな人柄に驚きつつも立ち上がると、ミヨンたちが近くの椅子に座った。

 そしてデセミアはクリエを床に下ろすと、ミヨンをジロジロと見つめる。


「あ、あの……私が何か?」


 少し居心地が悪く、目を伏せながらミヨンが聞くと、やがてデセミアはニヤっと笑うと口を開いた。


「まっさかあの箱がこんな美人になってるとはな! クリエの力にはホント驚かされるぜ!」

「……箱?」


 自分の本来の姿を言われたミヨンは不思議に思って尋ねた。

 ほとんど本来の姿に戻る事はなく、ミミックだと知っている者は少ない。


「あれ? クリエから聞いていないのか?」

「何を?」


 と、デセミアとミヨンはクリエを見た。


「言ってなかったっけ? ミヨンが居たダンジョンの責任者兼制作者であって、君を作ったのがデセミアだよ?」

「は、初耳なんだが?」

「全く、勝手に宝を持って行くからクビにしたって言うのに、こんなに美人になってるなら呼び戻しても良かったな」


 過去にミヨンが箱のミミック時代にいたダンジョンの責任者がデセミアだった。

 宝物庫にあった欲望の魔法トラップもデセミアが仕掛けた物であり、神の魔法だった為、誰も逆らう事が出来ない品物になっている。

 ダンジョンの様子をデセミア自身が見に行く事はほぼ無く、基本は頼まれた誰かが様子を見に行っていた。


「ごめんね。てっきり言ってたと思ってたよ。僕がミヨンとダンジョンであった時、路銀の為に宝を貰いに行ったんだけど、ついでにダンジョンの様子見もあったんだ」

「そう言う事は早く言ってほしかった……お前は! なんで! そういう事を今まで忘れてるんだっ」


 ミヨンはクリエの両頬を軽く引っ張る。クリエは苦笑して答えた。

 やがて手を離して気が済んだミヨンに、今まではとは違い真面目な口調でデセミアがミヨンに声を掛ける。


「ミヨン、クリエから聞いてる。お前は使徒だが一緒に居る事は強制されてる訳じゃないってな」

「まぁ、そうだが。嫌ならいつでも別れていいとは言われてる」

「お前にあのダンジョンの全てを任せても良い、たまに外に出ていいから戻って来ないか?」

「それは……」


 デセミアの口調と真剣な表情から、それが冗談ではない事が伺えた。

 ミヨンがクリエたちの方を見ると、何も言わないが、ただ笑顔でミヨンを見つめている。

 そんなクリエたちを見たミヨンは軽く息を吐くと、クリエを後ろから抱きしめて答えた。


「すまない。私は誰かの宝よりも自分の宝を守ると決めたんだ。折角のお誘いだが、断るよ」

「……そうか。はっ! クビにした奴に振られるとは、世界神としての立つ瀬がねぇな!」


 言葉とは裏腹に笑いながら言うデセミアの表情は明るい。


「ミヨン、気が済むまでそいつ傍に居てやってくれ」


 そして最後に言った言葉は、どこか感慨があるように聞こえた。


「ところでデセミアは、もう伯爵には挨拶したの?」


 話題を変える様にクリエがデセミアに問う。


「ん? まだだ。どうせお前らもまだだと思ってな。それなら一緒でいいだろう」

「そうだね。じゃあ、これから挨拶と今回の件について聞きに行こうか」

「おうっ 俺の筋肉も見せてやらないとな!」


 と、デセミアはニカっと白い歯を見せて笑いながら力こぶしを作って見せた。

 筋骨隆々だが、デセミアは魔法を得意としており、筋トレはただの趣味で、時に「魔力とは健全な筋肉に宿る」など、意味不明な事を言う。

 脳筋に見えて頭脳派であり、どちらかと言えば冒険者ギルドの世界神レテリアの方が脳筋だった。


「うん、デセミアはいつも健康そうでいいね」

「はっはっは! じゃあ、久しぶりに会ったし、いい筋トレメニューを教えてやるぞ。次会う時はクリエもマッチョだな」


 デセミアの言葉にミヨンたち三人は筋肉盛り盛りになったクリエを想像したのか、口を揃えて強く否定し、冗談だと豪快にデセミアが笑う中、伯爵がいる城へ向かう事になった。


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