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世界の創造主は、仲間達と問題の後始末ばかりします。  作者: 灰色
サイトストーリー2 リゼとの出会いとウィルの悩み
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5 予想できた真相

 笑顔のリゼはクリエたちを見ると、テーブルに置かれている封筒に目を止める。


「突然の訪問、申し訳ありません。できれば場所を変えてお話しできませんでしょうか? 勿論、その封筒も持参でお願いします」

「いいよ、どこに行こうか?」


 すでにクリエたちの事がバレているのは明白で、リゼの提案には素直に従う事にした。 


「少し人気の無い場所へ。お互いにその方がいいでしょう。付いて来て下さい」


 リゼが向きを変えて歩き出し、クリエたちはミヨンの鞄に封筒を入れると、大人しくその後へ着いて行った。



******


 着いた場所は、パーティー会場から少し離れた所にある広場で、周囲に人気は無く少しくらいの騒ぎがあっても気付かれにくい場所だった。

 足を止めたリゼはクリエたちの方に振り返ると、突然跪く。


「このような場所にお連れして申し訳ありません……世界神クリエ・アーレル様。そしてその使徒の方々。ご無礼をお許し下さい」

「そんなに堅苦しくしなくていいよ。いつもの君がいいな」


 敵意が無い事を知り、クリエはリゼに会った時のように普通に接するように言った。

 クリエの言葉にリゼはどこか恥ずかしそう照れ笑いをすると、立ち上がる。


「いつから知っていたの?」

「最初からです。そもそも参加者は全てわたくしが目を通して選びますので、アーレル様たちのお名前があった時は本当に驚きました。お仕事なのだろうと推測できましたが、失礼とは思いつつもずっと注視しておりました」

「僕とエレクトラさんは初対面だよね?」

「はい。ですが……我が国の一部の者は、アーレル様の事を良く存じています。エルフの国を助け、変わるきっかけを作って下さったのですから。その時に何度か遠くからは見ていました」

「君は……僕の事はどこまで知っているのかな?」


 クリエにしては珍しい、それは少し含みのある言い方だった。


「細かい事は存じておりませんわ。ただ、皆様のおかげで、エルフの国は何一つ被害を受けなかったという事だけです。女王様方からそう聞いております」

「そっか、ならいいかな。それでここに呼んだ理由を聞いても?」

「はい、その書類を拝見したいかと」


 リゼの視線はミヨンの持っている鞄へと動く。

 クリエはミヨンを見て頷くと、リゼは封筒を受け取り中身を確認した。

 その時にクリエはどのような依頼内容だったのかもリゼに説明をする。


「……なるほど、そう言う事でしたか。全く往生際の悪い。おかげでこっちは放火騒ぎといい、いい迷惑を被りましたわ」


 と、書類を確認し終えると封筒と共にクリエに渡す。


「アーレル様は、わたくしがこれを今処分するとは思わなかったのですか?」

「思わないよ。だって、君の事は信用しているからね」


 何一つ疑っていないという笑顔で言うクリエに、一瞬だけリゼは驚いたが笑顔になる。


「貴方様は……本当に罪作りなお方ですわね」


 そしてリゼから封筒を受け取ったクリエは、


「あ、うっかり落としちゃった。これは見て拾わないといけないな。みんな手伝って」


 わざとらしく言いながら書類と封筒を落とし、ミヨンたちと一緒に内容を確認しながら拾って行った。

 依頼人から言われたのは「出来れば見ないで欲しい」なので、これは不可抗力になり、問題が無いというのがクリエの考えになる。


「これは……全然エレクトラ商会とは関係がないな」

「それに協力していた人物の名前とかもあるみたいね」

「そうなると、依頼人が黒と言う事になりますね」


 ミヨンたち三人が三者三様に感想を言った。

 細かい事は落ち着いて全部読まないと分からないが、リゼの商会が関係しているような事は何一つ書かれていない。


「恐らくですが。わたくしが騎士団に告発し、商業権を失って追い出された後、他の仲間の誰かがあそこを買い取って証拠を隠滅する予定だったのでしょうが……」

「君が先に買い取ってしまったんだね?」

「ええ、違法に働かされていた方々の新しい就職場所として確保しておきたかったので。そして放火までして消そうとしたけど失敗。今度はノルエステに嘘の依頼を出したと言った所でしょう」


 リゼが今回の件を考え、大きな溜息を吐いた。


「まぁ、最初からきな臭かったからなかなか誰も手を出さず、僕たちが請け負ったんだけどね」

「アーレル様は、噂に聞く本当に少し変わった方、なのですね」

「変だって言ってくれてもいいよ。実際、神様っぽくなかったでしょ?」

「いえ、アーレル様はわたくしにとって神以上に大切な……」

「助けて! エレクトラさん!!」

『?』


 クリエとリゼの会話を遮る様に広場に声が響き、どこか聞き覚えのある声がした方を向く。


「コレットさん? なぜ貴女がここに?」

「その……エレクトラさんが気になって後を追っていたら、この人たちに捕まってしまって」


 そこには口髭を生やした男性に、背後からナイフを突きつけられているコレットの姿があった。

 その後ろにはさらに武装した10人近い人相の悪い男性が、ぞろぞろ連れられている。


「この女を殺されたくなかったら、その封筒をこっちへ渡してくれないか?」


 ナイフを突きつけているのは、依頼の説明をクリエたちにした依頼人だった。

 状況を察したリゼは、クリエたちにだけ聞こえる声で呟く。


「情報を撒いた甲斐がありましたね。これで放火といらぬ嫌疑を掛けられたお返しが出来そうですわ」

「……ああ、なるほど。だから『お互いに』だったんだね」

「理解が早くて助かります。全てを言わず騙した罰は、後で如何様にもお受けします」

「別にいいよ。こっちも楽できたからね……ミヨン」


 クリエがミヨンの名前を読んで目配せすると、ミヨンは少し下がってアニスとウィルの陰に重なる。

 集めていた書類と封筒を素早く鞄に入れ、全く同じ封筒の形をした擬態を自分の身体から作った。

 見た目も触り心地も同じであり、中身の書類までは無理だが見ただけでは分からない。

 大きすぎる物や複雑な形状、遠距離となると無理だが、見える範囲くらいなら身体の一部を切り離して扱う事も出来た。

 普通の擬態とは似て異なる能力になるが、それもクリエから授かった力の一部だった。

 

「おい! 何をぐずぐずしてやがる。さっさとその封筒をこっちへ渡せ! しかしノルエステに依頼して正解だったな。こうも簡単にいくなんて。持ってくるのはエレクトラだ。他は動くなよ」


 業を煮やした依頼人がニヤニヤしながら言う。

 本来クリエたちに喧嘩を売る事自体間違っているが、依頼人は気付いていない。

 おかげで一目散に逃げず捕まえる事ができ、ある意味これもクリエの神としての認知度が低いお陰だった。


 ミヨンがリゼに封筒を頷いて渡す。


「分かりましたわ。その代わりコレットさんには手を出さないで下さい」


 封筒を受け取ったリゼが歩くと、コレットとナイフを突きつけている依頼人もゆっくりと近づいた。

 そして、封筒を手渡すと同時にコレットが解放されてリゼに駆け寄るが、


「動かないで!」

 

 コレットは素早くリゼの背後に周ると、服のポケットからナイフを取り出してリゼの首筋に当てる。

 その際に首に触れ、一筋の血がリゼの首から流れた。


「……これはどういう事でしょうか?」

「ごめんなさいエレクトラさん。あの書類を知られたら、私は終わりなんですよ」

「もしかして、娼婦たちから中抜きしてたり、無理やり働かせていたのは貴女なの?」

「そうですよ。証拠を回収に来たら、貴女が居たので何とか取り入って倉庫に行こうと思いましが……まさか書類を貴女が手にしたと情報が入るなんてついツイていました」


 それはリゼが黒幕たちをおびき出すために、わざと流した情報だった。

 尾行させやすく一人で行動し、周囲に被害が出ないように人気が無い場所まで誘導する。

 そして運良く捕まえられれば、宿で働いている者たちへの危険を無くす事ができた。 

 仮に誰も現れなくても、書類を騎士団に提出すればそれはそれで終わりになる。


「貴女のご両親はこの事を?」

「知りませんよ。エルフの国が変わった事で世界の技術は飛躍的に進歩し、あらゆる所に商売のチャンスがあると言うに、堅実真面目に仕事……これでは他に先を越される」

「確かに世界へのエルフウッドの供給は増え、技術は類を見ない速度で上がりました……ですが、使う側が未熟では駄目なのですよ。堅実真面目、良い事でしょう」


 コレットを見てリゼが呆れたように息を吐いた。

 依頼人がコレットに封筒を渡し、リゼに近寄るとその顎に手を当てる。


「他のやつらには死んでもらうが、お前は金になる女だからな。身代金をたんまり貰う。それまでその身体で楽しませてもらおうか」


 男の手がリゼの胸を揉み、明らかにリゼは不快な表情になった。


「気に入らないね」


 不意にクリエの声がリゼに届く。

 すぐそばにはいつの間にかクリエの姿があり、ミヨンたちにもいつ移動したのかすら分からない。

 移動したというよりは一瞬で現れたという感じだった。


「なっ! このガキいつ間に」


 クリエの手がリゼの胸に手を当てている依頼人の手首を掴み、そして嫌な音を立て折れた。


「っ! あぁああぁ!!」

「な、何なのこの子は!」

 

 痛みに絶叫を依頼人があげ、コレットがナイフをクリエに向けて振りかぶるが、持っていた封筒が突如鞭のようになると、コレットを一瞬で縛り上げた。

 そしてクリエがそのまま依頼人を10人近くいる武装した仲間の方へと放り投げ、


「汚い手で僕のリゼに触れるな……消えろ」


 デコピンをするように男たちに向かって軽く指を弾く。

 凄まじい魔力の風圧が男たちを襲い、巻き上がった土煙で視界が遮られ何も見なくなった。

 暫くして土煙も収まると、


「……あははは! これは傑作だわ!!」


 アニスが腹を抱えて笑い出した。

 ミヨンとウィルも必死に笑いをこらえている。

 クリエの魔力に晒された男たちは、武具どころか服すらも綺麗さっぱり消え、素っ裸になっていた。


 自分たちの置かれた状況に気が付いて逃げようとするが、ウィルが黒い魔法の腕を複数出すと、コレットを含めた全員を捕まえて一か所にまとめる。

 封筒に擬態していたミヨンの一部は元の身体に吸収された。

 仮に吸収されなくても土くれに還るので証拠などは残らない。


「そのままの姿で少し反省してなさい」


 アニスが依頼人たちに近寄ると、血のような水たまりを出して膝下くらいまでの高さで止めると、赤い結晶化させて動きを封じた。


「それ、無理に砕こうとしたら足ごとバラバラになるわよ。嫌なら大人しくしてなさいね」


 アニスの言葉に捕まった全員が息を飲んで固まる。

 クリエはリゼに近寄ると、少しだけ血が流れている首に指を這わせた。

 その瞬間、傷が塞がり血が止まる。


「怖がらせてごめんね」

「……」


 何も悪くないクリエが申し訳なさそうにリゼに謝り、リゼはそんなクリエを暫く見つめると突然抱きしめた。


「とても……とても怖かったですわぁ! アーレル様は命の恩人、これはもう! ぜひ! 全身全霊でお礼をしないといけまんせんわね! 今! すぐに!!」


 どこかわざとらしいリゼの声が広場に響く。

 そもそもリゼの実力ならあの程度は敵にすらならなかった。

 ミヨンがリゼに近寄ると強引にクリエを引き剥がす。


「はいはい、そこまでだ。まずはあいつらを騎士団に報告するぞ。証拠と一緒にな」

「でしたら、その後は私の部屋に皆さんで来ていただけませんか? 大事なお話がありまので」


 引き剥がされたクリエを名残惜しそうに見ながらリゼが言い、騎士団に通報した後、連行された事を確認してからリゼの部屋へ行く事になった。


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