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世界の創造主は、仲間達と問題の後始末ばかりします。  作者: 灰色
サイトストーリー2 リゼとの出会いとウィルの悩み
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2 リゼとの出会い

 夜、社交パーティーの会場となっている元娼館で、現在三階建ての宿屋に着いたクリエ、ミヨン、アニスは一階の同じテーブルを囲い、カウンターで注文したワインを飲んでいた。

 参加料さえ払えば基本飲み物も特別な物以外は無料で、入る時に部屋の鍵を一つそれぞれ渡される。

 気の合った人同士が親睦を深めるために使う個人部屋の鍵だった。


「タダなのに割と良いワインね。さすがエレクトラ商会が主催なだけあるわ」


 赤色と金色で羽の模様が入っている、チャイナドレスような身体のラインが出るドレスを着ているアニスが、ワインを飲みながら周囲を見ている。


「エレクトラ商会はただの商会じゃない。エルフの王国御用達、女王にも認められエルフッドの輸出も任されているからな。正直、不正などしなくても十分儲かると思うが……」


 ミヨンはフリルの付いた青色と白色の混じったワンピースのドレスを着ていた。

 頭の左の方には青色のリボンを一つ着けている。


 周囲に聞き耳を立てて聞いていると、年齢や種族、職業もバラバラで選ばれている基準が良く分からず、ランダムで選んでいる感じだった。

 クリエたちが当たったのは、単に運が良かっただけかも知れないとミヨンは思う。


「そろそろウィルが戻って来るから、それから細かい事は決めようか」


 クリエはワインを少しずつ飲みながら、その場を楽しんでいるように微笑んだ。


 肩だしドレスに派手さは無いが、花柄の模様は白色と黒色で彩られ、見た目とは逆の落ち着いた雰囲気が

少し大人びた印象を与えている。

 普段しない化粧もされ、花の香りがする香水が仄かに香り、どこからどう見ても少女そのものだった。

 アニスとミヨンの渾身の出来であり、クリエのコーディネートが終わった後、思わずガッツポーズをしていた。


『ただいま戻りました』


 声を掛けながらクリエたちの前に現れたのは、半透明のウィルだった。

 身体は泊っている宿で寝ており、魂だけでパーティーに潜入している。

 壁などの物理的障害はすり抜けるので、こういった偵察には適していた。

 口は動いているが、会話自体は魔法によるテレパシーであり、他の人物にはよほどの事が無い限り気付かれる事ははない。


「お帰り。倉庫はどうだった?」


『……』


 クリエがウィルに声を掛けるが、ウィルはクリエを見つめたまま返事をしない。


「ウィル?」

『……あっ すみません。少しぼうっとしてました』


 ウィルの言葉を聞いたアニスがニヤニヤと笑う。


「素直に見惚れたと言いなさいよ。どう? 私たち渾身のクリエちゃんは?」

『まぁ……悪くないんじゃないでしょうか? あ、いや。クリエ様は勿論素敵ですが、あくまで服装の感想です』


 咳払いをしてウィルが答えた。

 そんなやり取りを見てたミヨンは軽い溜息を吐く。


「そういうのは後だ。それで、倉庫はどんな状況だ?」

『扉には魔法の鍵が掛けられていましたね。鍵はテンキー形式で1から9の数字の暗証番号入力形式でした。丁度番号を入力中のスタッフが居たので盗み見しようと思ったのですが……』

「なにか問題があったのか?」

『妙に長いんですよ。正直、覚えるのはかなり厳しいほどに。ただ中には壁から入れたので確認しましたが、倉庫内の隠し場所は手付かずみたいでした。まだ書類はある可能性が高いですね』

「もしかして、存在に気付いていないのか?」

『その可能性は高いかと。目下の問題はどうやって暗証番号を知るか……そこになるでしょう。鍵が厳重な為か、倉庫に見張りが付いている雰囲気はなかったですね』


 とりあえず、書類がまだある可能性が高い事に安堵するが、暗証番号が問題だった。

 ウィルの言う通りなら、適当に入力して解除するのは厳しい事が伺える。

 何か良い手は無いかと考えていた時、宿内が突然沸いた。

 不思議に思って見てみると、一人のエルフの女性に大勢の女性が群がって盛り上がっていた。

  

「げっ……嘘だろ。なんであいつがここに居るんだ。ウィル、魔力は極力抑えろ」


 その姿を見て思わずミヨンが声を上げた。

 エルフの女性は黒い長髪に前髪は綺麗に一直線に整え、紫色のドレスに指の全てには宝石の入った指輪をしているリゼ・エレクトラだった。


「エレクトラ商会の会長さんよね? 私と同じくらい美人でスタイルもいいじゃない」


 アニスが多くの人に囲まれているリゼを見て、何やら対抗心を燃やす。


「馬鹿。問題はそこじゃない。あいつは無色の魔法使いだ。要するに強いし魔力には敏感で、下手にウィルが干渉するとバレる可能性がある。ちょっと面倒になったな」

「無色って珍しいね。魔力が強くないと扱えない魔法なのに。豪商で無色の使い手なんて、優秀なんだね」


 クリエがリゼを見る。

 リゼは大勢に話しかけられ笑っているが、どこか目は笑っておらず、本心ではない事が伺えた。


 「……」


 そして暫く見つめていると、リゼは何かを探すように周囲を見て、クリエの姿を見つけると一瞬だけ微笑み、視線を外す。

 やがて周囲の人へ挨拶を終えると、どこかへと姿を消した。


「なんにせよ、ウィルは気を付けろよ。ま、逆に確実に暗証番号は知ってそうだけどな」

『分かりました。確かに抑えているのにかなりの魔力を感じましたね。しかし、最悪気付かれた時はどうしますか?』

「全部話していいんじゃないかな? 別に悪い事をしているわけじゃないしね」


 クリエの提案に三人は驚いたが、実際は犯罪を犯しているわけではない。

 盗もうとしている書類の件に関して以外は。

 変に嘘をつくよりも正直に話した方が理解される事もあるで、それはあくまで最終手段だった。


「とりあえず、手分けして番号の情報を探そうか。長いのなら誰かがメモとか残してるかもしれないからね」


 鍵を開ける暗証番号が必要なため、ミヨンとアニスはスタッフと接触して情報を探り、ウィルはメモ書きなどがないか探す事になった。

 スタッフも一応仲良くなる対象であるため、声を掛ける事は問題が無く、実際宿内の裏方以外の店員は全員が女性だった。


 そして一旦解散し、クリエは一人テーブルでワインを飲んでいた。

 ウィルは壁をすり抜けてスタッフルームへ向かい、アニスとミヨンは店員に声を掛けている。

 クリエも誰かに声でも掛けようかとした時、


「お嬢さん、お一人かしら?」


 上品な声が耳に届いた。

 声のした方を見ると、ワイングラスを片手に持った笑顔のリゼが目の前に立っている。

 内心不思議に思ったクリエだが、悟られないように微笑んだ。


「知り合いと一緒に来たんだけどね。みんなパーティーを楽しみに行ったんだ」

「あら? そうなのですか? ところで……お嬢さんの種族を聞いてもよろしくて? ここは成人のみですからね。見た目、少女にしか見えないものですから」


 参加の申し込みは名前と職業だけで種族は必要がなかった。

 エルフなど、時に幼い見た目のまま年齢が高い種族もいるが、クリエの耳は尖っておらず普通の人間種族の形をしている。

 疑問に思われるのも理解が出来た。


「魔族だよ。細かい事は秘密。君に分かるかな? でも、まずはお互いの自己紹介が先だよね」


 クリエが言うと、リゼは一瞬驚いた表情になった後、すぐに笑顔になりお互いに名前を名乗って自己紹介をする。


「ところで、僕に何か御用かな? 確かエレクトラさんだったよね」

「あら? ボクっ娘ですのね? いえ少し奇妙な魔力を感じたものですから。ですが魔族の方なら納得ですわ」


 どうやら完全にではないが、ウィルの存在に気付きかけていたようだった。


「魔族は種類が多いからね。そういう事もあるよ。あと一人称は気にしないで、見た目も少年っぽいって良く言われるから」

「そうでしょうか? ドレスはとても似合っていますし、可愛らしいですわよ」

「ありがとう。こういう場所は初めてでね。一緒に来た人に選んでもらったんだ」

「今回は出会いをお求めで来られたんですか? それとも、遊びに?」

「んー、両方かな。雰囲気を味わってみたいし……勿論、良い出会いがあればそれも良いかなって」


 クリエはリゼを見て微笑む。

 次第にリゼの存在を知り、二人の周囲には様子を見ている人だかりが出来ていた。

 どうやらエレクトラ商会会長とお近づきになりたい人は多いらしい。

 その様子にリゼは軽く溜息を吐く。


「少し、騒がしくなってきましたわね。よろしければ静かな場所へ行きませんか?」

「僕でいいの?」

「たまには、わたくしの事をあまり知らない方と話をしてみたいのです。新鮮ですので」

「じゃあ、お言葉に甘えようかな」


 二人が空のワイングラスをテーブルに置くと、店員が素早くそれを片付けた。

 そしてリゼがクリエに手を差し出しクリエはその手を取る。

 周囲のざわめきなど余所に、リゼはクリエを連れて一緒に歩き出した。


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