スラム街 プロローグ
自然と動植物が豊かなリムトリア大陸のラインタ王国。
王都とは離れているハルミトン領地の中にある、ジオノーシュという街は林業や狩猟での毛皮や肉などが名物であり、特に上等な毛皮を使った服や布団などが主な産業となっていた。
辺境の土地ではあるが、公爵が統治している珍しい領地だった。
理由は近くに世界神レムルが住んでいる、神狼 (しんろう)の森が存在しているため。
国にとって身近に世界を司る世界神が存在し、関係を持つ事は最重要であり、国の要所にもなっている。
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そしてある日の夜、ジオノーシュのスラム街では大きなが騒ぎが起こっていた。
「おい! し、神狼様の使徒が攻撃しているぞ。みんな逃げろ!!」
スラムに住んでいるみすぼらしい服の男性が叫ぶ。
世界神レムルの加護を得た二体の狼がスラム街に現れると、突然一角にある酒場を魔法で攻撃を始めた。
二体の狼は、白と黒の二色の綺麗な毛並みで、魔法を撃つたびに狼の全身が淡く発光する。
雷魔法の閃光が走ると、酒場に火が上がり、建物が轟音を立てて崩れ始めた。
やがて建物からスラム街の人とは少し違った格好の三人組が酒場から飛び出して来る。
それぞれが剣や鎧などを装備している冒険者だった。
「どういう事だ! 使徒の相手なんてしてられるか、さっさと逃げるぞ!! ……っ!」
飛び出した男の一人が仲間の二人に叫ぶが、次の瞬間、一筋の閃光が男の胴体を貫いた。
神狼の放った雷の魔法が直撃し、その命が絶たれる。
二体の狼は残り二人の冒険者を、今にも襲い掛かろうと睨みながら唸り声を上げるが、
『アオォオオーーーン!!』
スラム街から離れた神狼の森から、一際大きな狼の遠吠えが響く。
それを聞いた二体の狼は暫く冒険者二人を睨むと、足早にスラム街から去り、森へと帰って行った。
周囲は火と煙、そして多くの悲鳴だけが闇夜に木霊していた。




