6 当てにならない石像
ささやかな宴会が終わった翌日の昼すぎ、村とは少し離れた場所にある森の中にクリエたちは居た。
片付けと飲み過ぎたアニスの酔いを醒ますのに時間が掛かり、今の時間となる。
今朝から何度か細かい地震と、白い煙が火口から度々昇り、そろそろ本格的に危険な感じになっていた。
幸い火山灰などは無く、周辺にはこれと言った被害は出ていない。
静香の案内のもと、守護者を象ったと言われる石像の場所に来ていた。
「これが守護者様の石像になります」
石像までの道はほぼ獣道であり、地元の者でもほとんど知らない場所にある。
あまりに昔の事で気にしている人がいないのか、1メートルほどの石像は手入れがされておらず、所々がボロボロで欠けている箇所があった。
そして何よりその姿が形容しがたい形をしていた。
「これは……鳥? いえ、獣でしょうか?」
ウィルが石像を見ながら感想を述べる。
その石像は鳥のような身体で、翼があり顔は獣。
さらに頭に二本の角があるが、なぜか細い尻尾が複数あった。
「なんだか要領の得ない形だな? いろんなパーツがごちゃまぜになったようだ」
ミヨンは石像を軽くつつく。
「他の温泉村にも似たような物はあるんですが、実は全部形が微妙に違うんです。大体はこんな感じ何ですが」
「そもそもこれって、いつからあるんですの?」
リゼが興味ありげに聞く。
こういった話は商売には良い付加価値が付く事を知っていた。
「亡くなった主人から、最低200年くらいは昔だと。下手すれば500年とかもっと前だとか。そもそもここは、人が住める場所でなかったと聞いてます」
「ん~……そうなの? こんなに自然豊かで温泉もあるのに……」
近くの木にもたれかかったアニスが、石像を見ながら言う。
ようやく酔いが醒めたようだが、どこか怠そうだった。
「口伝でしか伝えらていないようですが、ずっと前は草木もほとんど無い、荒れ果てた土地だったそうです。そこへ守護者様が現れ、長い年月を掛けて今のような土地になったと伝わっています」
「……」
クリエは静香の話を聞きながら、時折首を捻りながらじっと石像を見つめていた。
「どうしたの? ずっとなんか難しい顔してるけど」
「うーん、本当に何か忘れている気がするんだ。こう、なんだろう。この石像の動物? どこかで見た事あるような……」
アニスの質問に、クリエは煮え切らない返答をする。
「まぁ、かなり昔の事ですし、流石に火山の噴火には関係が無いと思います。折角来ていただいたのに申し訳ありません」
と、静香が申し訳なさそうにクリエたちに頭を下げながら言った時、
『グォオオォオオ!!』
昨日森の中で聞いた咆哮が辺りに響いた。
さらにその声は明らかに近く、咆哮の魔力だけで大気が振動し、周辺の野生動物が一斉に逃げ出す。
「今の何!?」
アニスが驚いて目を見開く。酔いも完全に醒めたようだった。
「リゼ様! ここにおられましたか」
リゼのすぐそばにローブ姿のエルフの女性が一人、音も無く現れる。
どうやらリゼの専属護衛の一人ようで、その慌てた様子に普段とは違い、真面目な口調のリゼが護衛に聞いた。
「報告をしなさい」
「先ほど、村から離れた場所の広場上空に、巨大な飛行生物を確認しました。声の主だと思われます」
「細かい詳細は?」
「申し訳ありません。遠くなので細かい事は。ただ、トカゲのような姿をしていると報告がありました」
「トカゲ? こんな所に空飛ぶトカゲなんているの?」
アニスの問いに静香は首を横に振る。
「とりえあえず僕たちで確認するから、他のみんなは女将さんの宿に避難するように言ってくれるかな?」
クリエが言うと、護衛に対してリゼが小さく頷いて合図をし、すぐにその姿を消す。
クリエたちは報告のあった広場に向かう事になるが、静香がもしかすると守護者かも知れないから会ってみたいとなり、一緒に付いてくる事になった。




