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世界の創造主は、仲間達と問題の後始末ばかりします。  作者: 灰色
依頼2 火山の後始末をします。
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5 クリエの愛とリゼの愛され方

 夕食も終わり、宿の自室へ戻ったリゼは座布団に座ると、一人酒を楽しんでいた。


 部屋は洋式と違い畳が敷かれ、障子に襖、掛け軸などがあり、普段とは別世界の雰囲気がある。

 木の机の上には米酒の入った徳利 (とっくり)とお猪口 (おちょこ)が置かれ、チビチビと飲みながら風情を楽しんでいた。


 窓から差し込む月明かりが柔らかく綺麗で、部屋を数個の行燈 (あんどん)が照らしている。

 普通の火の明かりではなく、エルフウッドから供給された魔力を光に変えているため、十分の明るさがあり、何かに燃え移る心配もない。


「リゼ、入っていいかな?」


 クリエの声と共に部屋のドアがノックされ、リゼが慌てて向かえ入れると、二人は隣同士に座る。


「良くここに居る事が分かったね?」

「お手紙を拝見したところ丁度商談場所の近くだったので、ノルエステの方にお聞きしました」


 リゼがクリエたちのスポンサーになる条件に、文通が入っていた。

 文通、いわゆる情報交換は珍しい事ではなく、どこで誰が自分の商品を使ったのか、使い心地はどうだったのか感想を聞く為に行う。

 しかしクリエたちの場合は、近況報告とリゼが近くに居た時に会いやすくするためだった。

 普段離れて行動している仲間が、少しでも寂しくならないように。


「安全な場所じゃないから、ゆっくり出来ないのが残念だけどね」

「それでも、会える機会は逃せませんので」


 クリエとリゼはお互いに小さく笑い合う。

 その時、リゼの髪が少し濡れている事にクリエは気が付いた。


「あれ? 温泉に入ったの?」

「はい、食事の時に少し浴衣を汚してしまったのでついでに。ここ周辺の温泉は、前より魔力濃度が濃くなっていましたね」

「そうなの? さすがエルフはそういう事は敏感だね」


 世界を循環し、多くの生命に必要不可欠な魔力は空気以上にどこにでもある。

 魔法も魔力を消費して使うが、周辺の魔力を使うのか、自身の身体に貯めている魔力を使うのかで、少し性質が異なる物でもあった。


「身体に影響があるほどではありませんけどね。魔力に敏感なエルフか精霊族などでしか分からない程度ですし、ただ不思議だなと思っただけですので」


「魔力が濃くなった……か」


 クリエは夕食時と同じように首を捻って考え出すが、それをリゼの言葉に遮られる。


「所で、こんな夜分にどうかされましたか? あ、もしかして夜這いに来て下さいました?」


 お酒が入っているリゼが上機嫌に言うが、クリエは首を横に振った。


「違うよ。お礼を言いにね」

「お礼ですか?」

「うん、いつもいろいろありがとう。リゼのおかげで僕たちは本当に助かっているからね」

「わたくしは普段クリエ様のお供が出来ませんからね。これくらい当然ですわ」

「それでも、ありがとうリゼ。これからも頼りにしているよ」


 リゼは笑顔で答えると徳利を手に取り、新しいお猪口に米酒を注いでクリエに差し出した。

 クリエはそれを飲み干し、リゼも自分のお猪口に残っている米酒を飲む。


「美味しいね」

「そうですわね。特に二人きりで飲む物は格別です」


 リゼにとってクリエは個人的に、そしてエルフという王国にとって特別の意味を持っていた。

 過去にエルフの王国で世界が知る出来事が起きた時、それを裏で解決したのがクリエたちであったが、本人の希望によりその事は隠され、ほとんどの者が知らない。


「クリエ様には、本当にお礼の言葉もありません」

「改まってどうしたの?」

「祖国の事もそうですが、何よりわたくし自身がクリエ様には救われました。初めて会った、短い時間の出来事でしたが……」

「あの時は、楽しかったね」


 クリエが当時の事を思い出して小さく笑う。

 リゼはそんなクリエの身体をマジマジと見つめていた。


「今日も男性なのですね? わたくしと初めてお会いした時は女性でしたのに」


 創造主であるクリエにとって自身の容姿や性別は好きにでき、初めてリゼと会った時は、ある依頼の為に訳があって女性になっていた。

 と言っても、容姿はほとんど変わらず性別だけ変えている状態だったが。


「僕は基本的に男性だからね。女性の時の方がほとんど無いよ」

「そうでしたわね。ですが……」


 リゼが少し間を作り妖しく微笑むと、クリエの腰に手を回し、太ももに手を置いた。


「わたくしとしましては、どちらでも良いのです。それよりも折角来ていただいたのですから……どうでしょうか? これから」


 何かを誘う様にクリエの腰と太ももに触れている手が、優しく撫でる。


 クリエはリゼと初めて会った時に肉体関係を持っているが、そもそも使徒である仲間三人全員とも、そういった関係を持っていた。

 クリエにとって大切な存在は愛すべき者であり、それぞれを個別に最大限愛していた。


「今回は駄目かな」


 リゼの誘いにクリエは首を横に振ると、手を振りほどいて立ち上がる。

 リゼは少し残念そうな表情で立ったクリエを見上げた。


「いつ火山が噴火するか分からないからね。何かあった時にすぐ動けないと困るから」

「それもそうですわね。残念ですが、我慢します」

「……代わりにね」


 と、クリエは徳利に入っている米酒を少し口に含む。

 そして、そっと両手でリゼの両頬に手を添えた。


「?」


 不思議そうな顔をして見上げるリゼに意味ありげに微笑むと、少し強引に顔を引き寄せ、そのまま口付けをする。


「んっ……」


 不意の行為に、リゼの声が漏れる。


 暫くして口を話すと、クリエとリゼの口からは、一筋の米酒が流れ落ちた。

 クリエは自分の口から流れた米酒を指で拭うと、リゼに見せつける様に舐める。


「この続きはまた今度。その時は君の可愛い鳴き声を聞かせてね」


 そう、クリエはリゼに目を細めて言い、


「おやすみ、リゼ」


 優しく微笑んで部屋から出て行った。


「……」


 そんなクリエの後ろ姿を呆然と暫くリゼが見つめると、


「はぁ~……もう、クリエ様好きぃ。こんな意地悪されるなんて、なんと罪作りな方なんでしょうか」


 そして自分自身の身体を抱きしめて急に身悶えし始めた。

 やがて落ち着きを取り戻すと、お猪口に米酒を入れて飲もうとしたが、その手を途中で止める。


「……せっかくの美酒の名残りが勿体ないわね」


 リゼもクリエと同じように、口から流れている一筋の米酒を指で拭うと、舐めた。

 それは今までのどんな高価な酒よりも、価値も意味もある味がし、恍惚とした表情になる。


「おやすみなさい、クリエ様……」


 甘美な味わいに脳が痺れている中、リゼが窓から見える月を眺めながら呟く。 

 そして口の中に残るわずかなクリエの存在に酔いしれながら、リゼは眠りについた。


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