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世界の創造主は、仲間達と問題の後始末ばかりします。  作者: 灰色
依頼1 スラム街の後始末をします。
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12 依頼完了

 ドレイクは約束通り、三日後の早朝、クリエの飛竜と王国が所有する別の飛竜に大勢の部下を連れて帰って来た。

 ドレイクはすぐにクリエたちと合流した後、ニールにも知らせて合流する。

 王直属の特殊部隊が来た事に、一時は街中が騒然となるが、ドレイクとニールが説明するとすぐ収まり、

 それはひとえにニールが今ままで積み上げて来た信頼のなせる業だった。


 騒ぎが収まると、クリエたちはニールとドレイク、それに付き従う騎士団と特殊部隊がベイルの居る屋敷にと向かう。

 すでに特殊部隊がベイル側の騎士団員や関係者を拘束しているため、抵抗などもなくすんなりと入れた。

 クリエたちは何かあった際の保険だったが、すでに情勢は決まり、ただ静かに成り行きを見守る。


 そしてベイルは今、謁見の間の椅子に座らされている。

 謁見の間にはクリエたちとニール側の騎士団、そしてドレイク率いる特殊部隊が居た。

 その様子に最初こそ怒鳴り声を上げていたベイルだが、ドレイクが身分を明かすと一気に静かになる。

 そして、ドレイクが国王からの書状を見せた。


「ハルミトン公爵閣下……いえ、ベイル。貴方の爵位は剥奪されました。理由はすでにご存じですね?」

「し、証拠はあるのか?」

「貴方お抱えの豪商人の屋敷から、契約の書類が全て発見されましたよ」

「あの馬鹿が! あいつはどうなった!?」

「逃げたんじゃないですかね? ある日から証拠を残して居なくなりました。メイドが最後に屋敷を出て行く姿を目撃しています。目下全力で探していますが」


 ドレイクには何があったのか見当がついていた。

 どれだけ探しても豪商が見つかる事が無い事も。


「父上、もう終わりです。全ての不正の証拠は陛下に渡してあります。もう諦めましょう。最後はせめて元貴族らしく立派に」


 悲しげにニールがベイルに告げた。


「貴様何をしたのか分かっているのか! お前もただでは済まないのだぞ。私のこれまでの苦労を無駄にしおって!」

「王都に戻る事がそんなに大切でしたか? ここには母上との思い出もあるでしょう?」

「はぁ! こんな土臭く獣臭い土地の思い出などないわ! あの女がここを代わりに面倒を見ると言うから、私は王都で楽しんでいたものを」

「…………」

「おかげでこんな田舎で、神の顔色を伺い……私の方が被害者だ! 私には王都こそが似合うのだよ!」

「父上のした事で、ここは滅びかけたんですよ?」

「知った事か! こんな土地も民も、病気で死んだお前の母親も、スラムの住民などと仲良くなり、私の邪魔をした貴様も……全部が役立たずのゴミだ!!」

「……っ!」


 クリエたちは聞いているだけで頭が痛くなりそうだった。

 ここまで来ると怒りよりも哀れという感情が出て来る。

 そして、その言葉を聞いた瞬間、ニールは剣を抜いてベイルに詰め寄っていた。


「どうして、どうしてそこまで自分勝手になれる! 領地など民が居なければ成り立たない! 一人では何一つ出来ないでしょう! 母上はこの土地も人も動物も全てを愛していた……なぜ、それが貴方には分からない」

「ふん、あの女にべったりだったお前らしいな。貴族は特別なのだ……人の上に立つ者、それが貴族だ」


 剣を構えたまま静かにニールがベイルに近づく。


「なんだ? 私を斬るのか? お前にそんな度胸があるとは思えんがな」

「私もただでは済まない……ですが、せめて貴方だけは私の手で終わらせます。それがせめてもの償いだ。死んでしまった、使徒の子供のためにも」


 ニールがゆっくりを剣を振り被ると、ベイルの前に立つ。

 ニールの呼吸が荒くなるが、やがて何かを決意した光を目を宿すと。力いっぱい振り下ろした。


「ひっ……」


 ベイルの短い悲鳴が響く。

 だが、その刃がベイルに届く事は無く、いつの間にかアニスがベイルの前に立ち、その刃を左手で受け止めていた。


「ア、アニスさん!?」


 素手で刃を握り締め、その手からは一筋の血が流れている。

 同時にニールの両隣には、行動を制止するようにミヨンとウィルの姿もあった。


「ドレイク、そろそろアレを伝えてもいいんじゃない? それとも、ここの新しい領主様の手を血で濡らす気なの?」

「そうだぞおっさん。後でなんて言ってる状況じゃないだろ」

「全く、これなら最初に伝えておいた方が良かったですね」

「?」


 アニスたちが口々に言う。

 ドレイクがニールに近づくと、もう一つの書状を見せた。


「もうちょっと落ち着いてから話す予定だったのですが、すみまさん。ニール様、陛下からの王命です」

「陛下から?」

「ベイルはすでに爵位を剥奪されています。ここの新領主に貴方を任命すると」

「わ、私になぜ? 私も父上の罪の罰を受けるべきでは?」

「……クリエ様からの推薦です」

「……え?」


 ニールが驚いてクリエを見る。クリエはそんなニールに笑顔で返していた。


「私が飛竜で王都に帰る前に言われた頼み事です。クリエ様から『ニールはこの土地の領主に相応しく、レムルとも良好。次の領主に推薦する。そう伝えて欲しい』と。それを伝える事が飛竜を借りる条件でした」

「僕は思った事を言ったまでだよ。ここは自然豊かで多くの命がある、命の重みを知っていて、それを奪う覚悟と感謝が必要なんだ。それに……レムルも君を気に入ってるしね」


 ニールが新しい領主に選ばれた事は、ドレイクからすぐにクリエたちは聞かされていた。

 ただニールにはベイルの逮捕後、落ち着いてから話す予定だったが、ニールが自分の父親を手にかけようとした事は予想外だった。


 それに三日という速さで帰って来られたのは、間違いなくクリエの推薦があったからで、本来なら要所の次期領主を選ぶために時間が掛かる。

 しかしクリエの言葉を王に伝えると、即その内容で話が決まり、それは異例とも言える決断だった。


「ほら、剣を収めなさい。身内の血で汚れた手で、貴方は民や動物たちと触れ合うの?」


 折角の新しい領主の手が、ベイルのような人間の血で汚れる事が、アニスは許せなかった。

 そう、ニールは自分とは違う方が良い……。それがアニスの思いだ。


「……」


 ニールはゆっくりと剣を鞘に納めた。

 アニスの左手から流れた血は、床に落ちる事なく、身体に吸い込まれるように消え、同時に傷も塞がる。


「まぁ、でも気持ちは分かるからね。これくらいはしとうかな」


 アニスが後ろにいるベイルに振り向くと、右手で左頬をぶん殴った。

 全力はではないので死にはしないが、口が切れて血が流れ、苦悶の声を上げてのたうち回る。

 そんなベイルを見たニールは、どこか納得したように軽く笑った。


「ニール、君は新領主としてしなければならない事がある。優しいだけではダメなんだよ?」


 ニールにクリエが告げた。それが何を意味しているのか、ニールはすぐ理解した。

 そして、ベイルを見つめると、ハッキリとした口調で言う。


「騎士団、この裏切り者を捕えよ! そして身柄は神狼の森へ移送。あとはレムル様にお任せする」


 そこには胸を張り、凛々しく立派な姿のニールが居た。

 騎士団が短く返事をすると、ベイルは捉えられどこかへと連れて行かれる。


 こうして、クリエたちの依頼である『元凶』が明らかとなり、調査は終わりを告げた。


******


 その日の夜、神狼の森のレムルが居た場所に、クリエが一人で立っていた。

 空からの月明かりが森の中を優しく照らしている。

 暫くすると、人型のレムルが現れ、クリエに跪く。

「創造主様。この度の件、本当にありがとうございました。お陰で私はあの街を滅ぼさずに済み、ここに住む者たちと共に生きてゆけます」

「そんな畏まらてくいいよ。君があの街を滅ぼす事に苦しんでいるのは分かったからね。久しぶりに会ったし、サービスってやつだよ」


 レムルが立ち上がると、クリエに笑顔を見せた。

 クリエの正体を知っているのは、世界神と本当にごく一部の者だけだった。


「レムル……久しぶりに撫でていい?」

「勿論です。私もあの時のように触れていただきたい」

 

 レムルは大きな狼の姿になると座る。

 そんなレムルをクリエは頭や喉を撫で、そして胴体を抱きしめる。

 クリエもレムルも幸せそうな表情をしていた。


「んー、レムルはいつも温かくて良い匂いがするよね」

「これでも身だしなみには、気を付けていますので」

「……寂しくはないかい?」

「はい、ここの動物たち。それに、これからはまた街の人と触れ合う事になるでしょう」

「そっか、よかったよ」


 世界がまだ作られて間もない頃、今のように種族も多くなく、生命の総数も少なかった。

 レムルは寂しがり屋で、良くクリエが撫でながら、その寂しさが和らぐまで一緒にいた。


「ねぇ、レムル」

「はい」

「この世界に生まれて良かったって思うかい?」

「……勿論です。私は私を造ってくれた方が、創造主様で良かったと心から思っています」

「ありがとう……これからも世界をよろしくね。それにもっと誰かに甘えてもいいからね」


 クリエのレムルを抱きしめている力が強まる。

 レムルもまた抱きしめて来るクリエの温もりを強く感じていた。


 静かで柔らかな月明かりが二人を照らす中、夜の帳はゆっくりとその深さを増していった。


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