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世界の創造主は、仲間達と問題の後始末ばかりします。  作者: 灰色
依頼1 スラム街の後始末をします。
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9 使徒「ウィル・メイナス」

 地面で横になっている首は、誰かが動かすように器用に地面の上に真っ直ぐ立った。

 ウィルの首や切断された胴体からは血の一滴も流れておらず、その異常性にドレイクはようやく気付く。

 ドレイクの首にはウィルの剣が付きつけられたままだった。


「これは……悪い夢か何かかな? 大抵の生物は首を跳ねられれば、死ぬんですがねぇ」

「そうだね、生きていればそうなるね」

「……っ」


 ドレイクの背後で聞き覚えのある声が聞こえた。それは現状、もっとも聞きたくない声だった。

 そこにはクリエの姿があった。ドレイクは咄嗟に手で合図を出す。

 ウィルとクリエを中心にし、周囲に十数人程度の黒いローブを着た人物が現れて囲んだ。


「遅いですね」


 ウィルの身体から黒い手が何本も出ると、地面に潜る。

 相手が気付いた時には、足元から生えた黒い手がそれぞれをきつく縛り拘束していた。


 ウィル・メイナス……彼はすでに人としては死んでいた。

 ウィルの家族はある悪魔を崇拝する邪教団の一員で、ウィルもまた強制的にその教徒にさせられていた。

 そして、素質があった事で悪魔を現世に呼び込むための生贄とされる。

 殺された後に肉体を奪われる運命にあったが、死んだ後にクリエが干渉した。

 その時に神の力を授かり使徒となり、逆に悪魔の力の全てを自分の物とする。


 悪魔は魂や呪い、闇に属する存在だったため、ウィルは死んだ自分の魂を自分の身体に憑依させた。

 今の身体も魂が乗り移っている状態であり、入れ物に過ぎない。

 食事などは普通に出来るが、食べた物はすぐ魔力に変換される特殊な構造となっている。

 幽体離脱して霊体になれる事から優れた索敵能力を持ち、対応が難しい実態を持たない霊などの対処も得意としていた。


「殺しちゃだめだよ。今はね」


 言いながらドレイクを通り過ぎたクリエは、地面にあるウィルの頭部を拾って見つめる。


「こんなに小さく可愛い姿になっちゃって……」


 と、クリエはウィルの頭部を持ち上げ、愛おしそうに頬ずりし始めた。


「あの、クリエ様。それは私の首だけですので」

「普段はウィルを見上げてるからね。見下ろすのは新鮮に感じるんだ。さぁ、屈んで」


 胴体だけのウィルは剣を収めると、クリエに言われた通り屈む。

 頭部が首に置かれると、粘土がくっつくように元に戻った。

 その様子をドレイクは無言でただ見つめている。


「おーい、そっちはどうだー?」

「あの縛り上げてる連中はどうするの? ヤっとく?」


 スラム街からミヨンとアニスが合流する。

 ミヨンは特に変わっていないが、アニスの服の腹部には剣で貫かれた後があり、肌が露になっていた。


「あれ? アニスのその服どうしたの?」

「ちょっと遊んでたのよ。大して面白くなかったけどね」

「服を無駄にするな。下手すればその都度買い直しなんだからな」

「全くです。私が縫うにも限界があります。アニスはもう少し物を大事にしてください。ついでにお酒も控えて下さい」

「クリエー、皆が私をイジメるぅ」

 

 棒読みのアニスがクリエに近寄る。

 クリエはアニスの服に手をかざすと、一瞬服が淡く白く光ると元通りになった。


「物は大事にしないと駄目だよ。でも、自分の事はもっと大事にしないとね」

「ありがとうクリエ。愛してる!」


 アニスがクリエを抱きしめると、クリエの顔がアニスの胸にうずまった。

 そんなクリエをミヨンは無理やり引き剥がす。


「クリエが苦しんでるだろうが。そのダラしない物を押し当てるな」

「ん~? 自分には無いからって、妬んでるの?」


 アニスは自分の胸と、少し控えめなミヨンの胸を交互に指差した。

 ミヨンは右手の人差し指を一本のナイフに変化させると、アニスの胸にそっと当てる。


「削ぐぞ……」

「いやいや、ごめんて。冗談だからね? ミヨンのその胸にも需要はあるから」

「やっぱり削ぐか」


 そんな二人のやり取りを見て、ウィルが溜息を吐く。


「二人共、まずはこの状況をどうにかしましょうか」


 ドレイクは何も言えず棒立ちで、その部下らしき者たちは、今もウィルの魔法で拘束されたままだった。

 クリエたちが改めてドレイクを見る。クリエが視線でどうぞと言葉を促した。


「あー、その今の立場で非常に情けない話なんですが、部下の開放をお願いしたい。全てお話ししますので」


「……いいよ。ウィル、拘束を解いてあげて」


 クリエが言うと黒い手が消え、同時に周囲にいた人物全員が音も無く消えた。


「ありがとうございます」

「それでドレイクは結局誰なの?」


 クリエの言葉にドレイクは咳払いを一つすると、背筋を伸ばし真剣な眼差しになると跪いた。


「国王陛下直属の第三特殊部隊隊長ドレイク・ミラー。階級は大佐になります」

「ベイルに言ってた、特殊部隊だったんだね」

「はい、二年前にハルミトン公爵閣下が独断でレムル様と距離を置きました。それ以前にも不穏な話があったので、その密偵として、私が何人かの部下とこちらへ」

「証拠はないの?」

「お恥ずかしい話ですが、まだ確実なのは。さすがに証拠も無く裁けば、国内外のイメージが悪いですから」

「それならもう心配ないぞ」


 ミヨンが口を挟む。


「餌に掛かった豪商が雇った冒険者だが。あいつら大体の事は知っていた。これから酒場の地下を確認すれば、分かるだろう」

「酒場に地下が?」

「よくある備蓄品を保管して置く倉庫だ。もっとも、今は倉庫ではないようだが」

「ではすぐに調査しましょう。誰かが来ないよう周囲は部下に見張らせます」

「助かる。だが、その前にニールを呼んでくれ」

「ニール様をですか?」

「あいつ自身は無関係だが……あいつには知る権利がある。いや、知らなければならない義務がな」


 ドレイクがニールを連れて来る事になり、一旦別れたあとスラム街の酒場で集合する事になった。


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