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「それにしても分からないのはヴァルグレンです。リディアを襲ったヘビの贈り物の差出人の名がヴァルグレン王と同じだったというのは本当ですか?」

「ああ、そうなんだよ」

「だとしたらやっぱり変ですね。わざわざそんな自らの正体を明かすような事をするでしょうか? ましてやヴァルグレン王がリディアに結婚祝い? ありえません。同姓同名という線も無くはないですが」


 罪をヴァルグレン王になすりつけるにしても、あまりにも安直だ。とても一国の作戦だとは思えない。


「だな」


 アーサーの言葉にユリシスは一つ頷いて口元に手を当てた。


「それじゃあやはり真犯人はリス女ですかね」

「リス女? 何だそりゃ」

「リディアを陥れてカイロスを奪った女だそうです。だとしたら今回の事はその女が単身で計画を立てたという事もありうるのか……」


 リス女がカイロスを王位につける為にそんな事をしでかしたのだとしたら納得がいく。


 けれどそれがもし成功していたら大問題に発展していただろう。何せ一国の王妃を抹殺しようとしたのだから。個人的な野望を達成する為にしては、少々作戦が雑すぎる。


 幸いにもリディアを噛んだヘビの毒は死に至るような強い毒性を持ったヘビではなかったが、リディアに恐怖心を与えるには十分だったに違いない。



 リディアを一人屋敷に残すのは危険だとユリシスが判断したのは、それから3日後だった。


「なぁユリシス」

「はい?」

「あいつ、マジで災難ホイホイなんじゃねぇの?」

「かもしれませんね。これは少し早まってしまったかもしれません」


 あのヘビ事件の後、マイロをつけたというのにリディアはこの3日の間で既に四度も危険な目に遭っている。いくら狙われていると言っても流石に多すぎだ。


 もしかしたらアルヴェルの王がリディアを手放しに送り出したのは、リディアのこういう所を持て余していたからではないか。


 そんな事を考えてしまう程度にはリディアは災難に巻き込まれる頻度が高い。


「で、とうとう王様は王妃と一緒に暮らす決断をした、と」

「仕方ないでしょう? 城も大概危ないと思って屋敷を買ったというのに、そこですら花瓶が降ってきたりナイフが飛び出してくるというのですから。これが城だったらと思うとゾッとしますよ」


 屋敷一軒分の広さだからこそあちらは数人程度でしか動けないが、これが城の規模で行われたら、リディアはきっともうとっくに死んでいたに違いない。


「それにしてもいつまで放置すんだ? もう大元はいつでも押さえられるぞ」

「もう少し待ってください」


 屋敷や城に入り込んでいる者達の出どころは大体分かっているが、そこを押さえるにはまだ時期尚早だ。どうせなら国に入り込んでいる者達を全て一網打尽にしたい。


 何よりも市井に手を出されるよりは、自分たちが囮になった方が都合が良い。市民には騎士団などついていないのだから。


 どのみち囮のリディアにはまだ死なれる訳にはいかない。この国を守るためにはたとえ幼馴染でも駒にするし、彼女をここに足止めする為には嘘もつく。


 ユリシスの事を誰よりも理解しているであろうアーサーはそんなユリシスに苦言を言うが、後ろ盾のない若い王はこれぐらい冷酷でなければ務まらない。


「何にしてもリディアには絶対に知られるなよ。見た目に反してお前は本気でクズみたいな男だって」

「もちろんです。だからリディアに約束をしたのですよ。役目を果たしたらどんな願いでも一つだけ叶えると。その時がきっと私達の離縁記念日です」


 リディアも国を背負って嫁いで来たのだからそれなりの覚悟はしてきているだろう。何せ追放寸前までいったのだから、その覚思いは並々ならぬはずだ。

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