4 虚室、光は地に溶けて、無中に探す活路(9)
その時、突然ピッと一筋の光が天井を通過した。
淡い銀色の光だった。
その一筋の光は洞窟内で徐々に拡散を始め、やがて帯状に何本も線を伸ばしていった。
光は長谷川たちのいる建物にまで降りてくる。
月の光のようだった。光は長谷川達の周囲を淡く照らす。
その光の線に釣られるように長谷川は視線を下ろす。そこには長谷川の――亮月としっかりと繋がれた手があった。
彼女もそれに気づいて慌てて手を離す。そうして彼女は照れたように俯きながらポツリと
「ゴメン……な」
と言った。
――と言われてもどうしていいかわからない。
何かフォローすべきなのかどうなのか、戸惑う長谷川を救ったわけでもなかろうが
「ふたりとも」
と声が発せられる。有坂の声だった。
「あれ、見える?」
射し込まれた月光のお陰で、亮月の奥に有坂の腕がボンヤリと見える。
彼女が指し示す方向は、建物の右手の地面。
ただの地面でしか無いはずのそこは、何故かうっすらと緑色の光に彩られていた。
土が直接光っているわけではなさそうだった。
地面の奥底から精一杯這いでてきたかのような、物凄く頼りの無い緑の灯がボンヤリと見える。
――あの緑は――ヒカリゴケ?
「行こう」
ゴソゴソと音がする。有坂が最後のローソクを取り出した。