3 夕麗 Lost In Logic (13)
ガタガタと不気味な音を立てながらも、エレベーターは順調に下階へと降りて行く。
「ぜんぜん、状況とか。わかんないんだけど」
有坂が当然の疑問を口に出す。それに亮月は頷き、
「それ私も。イミわかんないよね」
と言う。――こいつ。
「さっきわかってたみたいな口だったじゃん」
「テキトーなのが信条だからさ。――これどこ行くんだろ。考えてみると、ちょい不安だよな」
――そうか、こいつは考えてなかったから呑気だったんだな、と今更ながら長谷川は思う。
その間にも、エレベーターは下っていく。
速いのか遅いのかすら、比較するもののないこの密室の中ではわからない。
急にエレベーターがガタンと縦に揺れ、有坂が「きゃ」と小さな悲鳴を上げる。
――きゃって柄じゃないだろう、と長谷川は思うがそのまま言葉を飲み込む。
亮月は無遠慮にからかう。
「有坂さんってさ。意外と臆病なんだよな。かわいぃー」
何も言い返さずに、有坂はうつむく。
無表情を装っていたが、頬にはほのかに朱が差している。
そんな様子を見ながらも、長谷川は別のことが気になる。
「てかさ、これ止まるんじゃないの。思った以上にボロイよ」
「けっこー深いしな。エレベーターが遅いのかも知んないけど」
亮月がそう言って、壁に寄っかかった瞬間、震動がしてエレベーターが停止する。
彼女のせいかと思ったが、どうやら下階に到着したらしい。
「と、止まった」
有坂は肩をなでおろす。
そして、亮月はドアの前で今か今かと開放を待つ。
「よし、開け! オープン・ザ・ドア」
それに反応したわけでもなかろうが、ドアはガタガタと嫌な音を立てて開き始める。
さて、鬼が出るか蛇が出るか。待ち構えるような体勢をとって長谷川は思う。
――人でなければ良いのだが、と。