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有坂神霊縁  作者: iotas
34/63

3 夕麗 Lost In Logic (12)

「これってどういう――」

 鳥居の柱が左右に開いたその瞬間から、心臓は速いビートを奏でたまま収まらない。

「あの。ちょっと待って。今、考えるから」

 有坂は見てわかるほど動揺していた。

 もう一方の亮月は普段より落ち着いているように見える。彼女はずいと前に出て腰に手をあてて、胸を反らす。

「簡単じゃん。長谷川は犯人が、この――孫の手。孫の手を使って鳥居を登ったと思った。そんで、長谷川も鳥居を登ろうと思って、孫の手をこの鳥居の窪みにひっかけた。そしたら、なぜか鳥居が開いた。たぶんさ。窪みのとこにスイッチみたいのがあったんだ。ってことはさ、私たちが鳥居だと思っていたものは、ただの鳥居じゃなくて隠し部屋だったんだな。忍者屋敷みたい」

 彼女らしく話自体はあんまりまとまっていないが、多少は現状をつかんでいる。

 長谷川が伸ばした孫の手は、確かになにかのスイッチを押下した。その結果、鳥居の円柱の一角が左右に開き、中にはいれるようになったのだ。そしてそれが今目の前にある「部屋」なのである。

 長谷川は口を開く。

「じゃあ、神隠しの正体ってこれってこと? 消えたように見せかけて、この鳥居の中に隠れた――」

「見せかけるって意図はなかったんじゃねえの。普通に入ろうとしたのを誰かに見られただけで。でも、わかんないな、なんでこんなとこに入ったんだろ」

と、言いながら亮月は鳥居の中の部屋を覗き込む。

「――あれ? お、すっげ。これただの部屋じゃないぜ。見てみろよ」

 そういって、彼女は中に入って手招きする。「危ないよ」と言おうと思ったが、それよりも中がどうなっているのかという興味の方が優った。

「なになに。あ、結構、中って広いんだね。――え?」

 ――エレベーターだ。

「エレベーター?」

 有坂も部屋を覗き込み、あ、と小さい声を上げる。

 鳥居の中はただの部屋ではなかった。部屋の壁は鳥居にそぐわない鉄製のものだったし、天井には蛍光灯が裸のまま設置されている。そして入口に近い壁には、丸型のボタンがついている。ボタンの表面には、上下と開閉がそれぞれ記されている。

 亮月は感動したように言う。

「これ年代モンだぜ。ボタンとかキノコみたいだし。昭和三十年ぐらいっぽいよな? 年はテキトーだけど」

「年はいいけどさ。なんでこんなものがあるの。鳥居の中だよ? 非常識だろ」

 長谷川の言葉に、亮月は笑う。

「あるんだから仕方ないじゃん」

 そうして、何故か腕をまくるような動きをして、

「よし、ボタン押してみようぜ。あ、有坂さんも早く入って。三人ぐらいなら、入れるよ」

と言って有坂を促す。

「ちょ、ちょっと待ってよ。それアブナイんじゃないの。少し調べてからの方が。――あ」

 有坂は何かに驚いたように声を上げて、慌てて中に入ってくる。

 それを見た亮月は不思議そうな顔をする。

「どうしたの、いきなり」

「いや、人が歩いてきたから。ビックリして」

 それを聞くと亮月は軽く笑って言う。

「――それさ。有坂さんが神隠しになっちゃうんじゃないの。――ま、いいやテキトウにボタン押すか。このボタンで下に行くんじゃないか?」

 そう言って彼女は下のボタンを押す。やはり古いものらしく、ボタンを押すだけでも、キィという錆びたような鈍い音を立てる。そして、ボタンが押された途端、ガラガラと大仰な音を立ててドアが閉まり、室内は完全な暗闇に閉ざされる。

 このまま下まで真っ暗なままなのだろうか、と不安に思っていると、頭上からパチパチと音がし始める。そして、蛍光灯に明かりがともった。見ると、亮月が何かのスイッチを押したらしい。電灯のスイッチ付きのエレベーターというのは見たことがないが、元々真っ当なエレベーターとも思えないので驚きはない。

 ふと重力が弱まり、エレベーターが下がり始める。

 ――どこに行くんだ、長谷川は不安になりながら、ただエレベーターが下るのを待つしかなかった。

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