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有坂神霊縁  作者: iotas
21/63

2 部室、去りし古を語り、釣れる禍神(13)

 ――一瞬のことだった。突然、何者かに肩をつかまれた長谷川は声を上げようとする。

 その刹那、相手の手が長谷川の口をふさぐ。

 ――しまった。と長谷川は思う。

 どうやら寝てしまったらしい。

 そして、その瞬間をついて何者かが長谷川の口を封じようとしているのだ。

 血液が頭に登り、全神経がパニックに陥る。

 ――逃げなくては。

 混乱しながらも脳はそう判断し、まさに暴れて逃げだそうとしたとき、目の前に顔がぬっと現れる。新谷――亮月だった。

「なにやってんだ馬鹿」

 急激に体温が下がる。

 それと同時に彼女に対する怒りがこみ上げてくる。

 ――いったい何でこんなことを、と言おうとしたが、その前に亮月は黙ってある一点を指し示した。

 ――鳥居の方向だ。

 寝ぼけた目でその位置を注視してみると、何やら影が動いているのが見える。

 人影のようだ。

 鳥居の横に立って、何やら見回しているようだった。

 それを見て、長谷川の背中に冷たいものが走る。

 ――明らかに挙動がおかしい。

 不審な人物は何回か鳥居の周りをうろうろとした後、立ち止まったようだ。

 長谷川たちの位置からは、ちょうど鳥居の柱が視界を遮るため、直接姿を見ることは出来ない。

 そして、その不審者がいる場所の付近に明かりが点る。

 懐中電灯か何かをつけたのだろうか。

 顔などはよく見えないが、人影は思ったより小さいように見えた。

 ――そのとき、突然携帯電話が鳴る。

 亮月が小さく悲鳴を上げる。彼女の携帯だった。

 彼女は慌てて上着のポケットから携帯を取り出そうとするが、なかなか上手くいかない。

 やっと手に取った頃には、着信音はすでに途切れていた。

 その代わりに、人が土を踏む音が聞こえてくる。

 さっきまで鳥居の横にいた影が、ゆっくりとこちらに足を進めてきている。

 長谷川の顔から血の気が引く。

 近づいてくる影は――右手に不気味に光る物を持っていた。

 長谷川は逃げようとして、亮月の腕を引く。

 亮月は――立ち上がらない。

 彼女はどういう訳か、長谷川の脚を軽くぽんぽんと二回叩き、にっと笑う。

 それを見た長谷川は、近づいてくる影をもう一度確認する。

 ――そして、ようやく状況を理解する。

「――なにやってんの」

 そこには携帯電話を片手に持った有坂が、呆れ顔で立っていた

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