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有坂神霊縁  作者: iotas
17/63

2 部室、去りし古を語り、釣れる禍神(9)

「霧が出たのって、音がしてからなの?」

 それまで本を読んでいた有坂が、こちらを向いていた。

「どういうこと?」

 土師が訝しげに聞く。

「その日は霧が出そうな天候だったかってこと。元々、霧がちだったのが濃くなったのか、いきなり霧が出始めたのか」

 有坂の問いに、土師は記憶を手繰るような顔をして、

「そういえば、元々霧がちだったかも」

と答えた。

「それって、たまたま霧が濃くなって人が見えなくなっただけって話はないの、かな」

「それはないわ。――確かに霧が出たのは科学的に説明できるかもしれんがな。でも、いくら霧が濃くなったとはいえ、人影って結構ハッキリわかったんだわ。それがなんの前触れも無く、一瞬でなくなったんだ。いや――」

 

 ――前触れはあったのかな。

 最後はかなり小さい声だったが、有坂にも聞こえたらしい。

「前触れ?」

「なんか一瞬、闇が」

 土師の声が更に小さくなる。

 ――闇。

 長谷川は何故かその語感に恐怖を覚える。日ごろ決して口に上らない単語だからかもしれない。日常から隔離された言葉。そんな気がする。

「土師さん。闇って――」

 亮月が不安そうに土師の顔を見つめる。――亮月も初耳なのか。

「いや、こんなこと言ったら変に思われるかもしれないけど」

 土師はためらう。

「土師君」

 有坂にも困惑の表情が浮かんでいる。

 長谷川は額をぬぐった。なぜか汗がにじんでいた。

 いつのまにか太陽は沈み、部室は夕闇に満たされつつある。

 土師がゆっくりと口を開き、長谷川は焦る。

 ここから先を聞くと、二度と日常の世界に戻ってこられないような

 ――そんな気がした。

 暗闇は速度を増して室内を覆いはじめる。


 止めるべきなのではないのか、土師が次の句を告げる前に。


 長谷川はもう一度、窓際の席を見る。

 有坂も亮月も、すでに影に取り込まれていた。

 ――闇が、土師はもう一度繰り返した。

「闇が――人を襲ってきたんだ」

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