吉良の仁吉
ちっこいのは考えた。
28人衆の中で、石松の事を小さな頃から知る吉良の仁吉は、石松の墓前に手を合わせた時になんて言うだろうかと。
幼馴染みというのは血は繋がらないが、仲が良くて、兄弟みたいなもので、喧嘩もすれば、仲良しな一面もあるし、また、時にはライバルのように張り合ったりもする。良い感じの温泉に2人で入っても、恥ずかしくない関係。
たまにめちゃくちゃ腹立つし、非常識かお前!って思う事もあって、たまに連絡せずに1年、2年、3年と、会わない日々も続いていくが、会えば、昨日からずっと一緒にいるような関係。
そんな付かず離れず、丁度良い塩梅を保ちながらずっと兄弟分だった石松が殺されたら、仁吉は何を石松に誓うだろう?
たぶんさ、仁吉は何も言わない。ただ一点を見つめて黙々と酒を煽るように飲み続け、赤い顔をしている事だろう。
その姿はまるで高野山の赤不動そっくりで、もう、身の毛のよだつ恐ろしさを醸し出している。
その赤不動の吉良の仁吉がなんて言う?
「殺す?そんな甘っちょろいことなんかできねえなぁ。お前は俺にとってはいつでも頼りになる相棒みたいなもんだったんだぜ?お前が居なかったら今の俺は居なかった。お前が居なかったら俺は今頃、ただのクソジジイになっていたよ。殺す訳にはいかねーなぁ。そんな甘っちょろいことで、お前の仇は取れねーって言ってんだよ!地獄の果てまで追いかけても、殺す訳にはいかねー!
じゃあどうしようってか?息の根を止めてやるまでだ。殺すより、息の根を止めて、生かしてやるよ!生きれるものなら生きやがれ!息の根は止まってるけとな!。石松!早く帰ってこい!お前の事、今度は俺が守ってやるからよ!早く戻ってくるんだぞ!また一緒に酒でも飲もうじゃねーか。なぁ兄弟!」
ってちっこいのだったら言う。
私、女優になりたいな。笑。
ちっこいのは、28人衆の1人、吉良の仁吉の言いそうな事を考えて、あースッキリしたー。と大きな独り言を言うと、カワヤヘ行く準備をし始めた。
ちっこいのは、いつも寝る前にカワヤヘ行く。
カワヤはちっこいののくつろぎ空間の一つなのだった。