2.リリスの実力と、謎。
スライム、ヒロイン、何も起こらないはずがなく……。
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「ふん! ド田舎でスライム狩りとは、勇者も堕ちたものだな!!」
「その偉そうな態度と自信は、どこから出てくるんだ?」
――所変わって、カディス周辺の森の中。
いつものようにスライム駆除に出かけたら、先述の通りリリスがついてきた。何やらこちらを小馬鹿にしてくるが、ダボダボの服で転びかけながら言われても響かない。
むしろ何かの拍子で怪我をしないか、心配で仕方なかった。
何はともあれ、スライム相手ならこの少女も大丈夫だろうと思う。曲がりなりにも、あの魔王の娘、なのだから。
「そこまで言うなら、リリスもやってみるか? スライム狩り」
「む? アタシが、アレを?」
なので、そんなことを提案してみた。
軽く補足しておくと、魔物と魔族は厳密に言えば別個の種族だ。魔族には人間同等か、それ以上の知性を持つ者もいるが、魔物には基本的に知性はなく本能に任せて行動する。また姿も異形かどうか、という点において違いがあった。
だからリリスがスライムを狩るのは、決して同族狩りにはならない。
そんなわけで、せっかくの機会だし彼女の力量を測ってみようという提案だった。するとリリスは意気揚々と細身の剣を抜き放ち、このように宣言する。
「はっはっは! 見ていろ、勇者ウィリス! そして――」
彼女はスライムの群れへ向かって駆けだした。
「アタシの実力に、恐れ戦くがい――――ひゃん!?」
「あ……」
そして、ブカブカの服の裾を踏んですっ転ぶ。
結果としてリリスはスライムの群れ、そのど真ん中に大の字で突っ伏した。スライムたちは突然の事態に一瞬だけ驚く様子を見せたが、しかしすぐに戦闘態勢となる。
要するに、その粘液でできた身体で少女を拘束したのだ。
「うわああああああああああん!! やだ、やめてよおおおおおおおお!!」
――魔族長、スライム相手に大号泣。
あえて深く説明はしないが、奴らの粘液には衣類を溶かす効果があった。本来それは冒険者の防具を破壊するためのものだが、今回はさらにペラペラな装甲を溶解している。
リリスが藻掻けば藻掻くほど、スライムの粘液は身体を縛り付けていた。
「助けてぇぇぇぇぇぇ!! うえええええええええええん!!」
「やれやれ……」
俺はそんな様子を見かねて、大きくため息。
魔王城からここまで、よく無事にたどり着けたものだ、と。そう思いながら、少女救出のために木剣を取り出すのだった。
◆
「ぐすっ……えぐっ……!」
「とりあえず、あっちに湖あるから身体洗いに行こうな」
――そんなこんなで、救出完了。
俺は愚図るリリスをあやしながら、近場にある湖へと案内した。念のために替えの服を持ってきておいて正解だったな、と思う。
「の、覗くなよ!?」
「誰がガキの素っ裸なんかに興味持つか、っての」
そうして湖にたどり着くと、リリスは俺をひと睨みしてからそこへ飛び込んでいった。俺は彼女の姿が見えない位置を取りながらも、周囲に警戒を払う。
その状態で、ふと思考を巡らせるのだ。
「そういえば、昨日のオーガは何だったんだ……?」
それというのも、昨日遭遇したオーガについて。
あの手の魔物はもっと、魔石の元となる魔素の濃い領域に棲息しているはずだった。カディスの周辺は精霊が住むとさえ言われるほど、清らかな空気が流れている。
だとすれば、あのオーガは何故……?
「……やっぱり、警戒はしておくか」
村にもいくらかの冒険者がいるが、まだまだ若い新人ばかり。
いざとなれば、俺が裏で討伐する必要がありそうだった。
「さて、そろそろ――」
などと考えているうちに、結構な時間が経過したように思う。
俺はリリスに声をかけようと、腰を上げた。
その時だ。
「きゃあああああああああああああああああああああああああ!!」
「な……!?」
少女の叫び声が、森の中に木霊したのは。
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