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1.新しい朝の光景。

ここから第1章です。

魔王討伐後のゆるゆるコメディ(当社比)をお楽しみください。


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 ――そんな一夜を過ごし、翌朝。

 俺は早々にベッドから抜け出して、家の外で自宅用の薪を割っていた。



「……これが、勇者のやる仕事か?」

「おう、起きたのか」

「むー……」



 リリスが起きてきたのは、もうほとんどの丸太を割り終えた頃。

 見事なまでの爆睡をかましていた彼女は、いまだどこかボンヤリとした表情でこっちを見ていた。この朝の弱さは、旅をしていた頃の魔法使いと似た空気を感じる。

 それなら対処法は分かっていた。

 俺は近くにある井戸の前に立って、新鮮な水を汲み上げる。



「ほら、顔洗え。サッパリするぞ」

「おー……」



 そしてリリスに告げると、やはり覚醒し切っていないらしい。彼女はフラフラとした足取りで俺のもとへとやってきた。ただ、そこからまた意識が飛びそうになっていたので――。





「――ほれ!」

「ひゃあああああああ!?」





 俺は桶の水を手ですくって、少女の顔にかけた。

 夏季だといえど、井戸の水はキンキンに冷えている。それをマトモに喰らった魔族長は、甲高い悲鳴を上げながら全身を震わせた。そしてようやく目覚めたのか、キッとこちらを睨んで八重歯をむき出しにしながら吠える。



「何するんだ、この!」

「おおっと! そっちが眠そうにしてるからだろ?」



 そんでもって拳を振るうので、俺は軽く回避。

 思い切り空ぶったリリスはバランスを崩し、どういう流れか桶を思い切りひっくり返した。その結果、中に入っていた冷水は見事に宙を舞い、彼女へと降り注ぐ。




「うぎゃああああああああああ!?」




 全身ずぶ濡れになった少女は、村全体に響くような声で叫んだ。

 俺はそんな間抜けた魔王の娘を見て、思わず笑う。

 すると――。





「ぐあああ!! 笑うなぁぁぁぁぁぁ!! 殺してやるからなああぁぁ!?」





 分かりやすく地団駄を踏みながら、彼女はまた喚き散らした。

 早朝のカディス。起きている数名の老人たちが、何事かと小首を傾げていた。




 





「で? 殺してやる、と啖呵を切った割には……」

「うるさいな。濡れた衣服で戦う馬鹿がどこにいるんだ」




 ――などと言い訳しているが、この少女はシレっと朝食を摂っている。

 今朝のメニューはこんがり焼いたパンに、シャキシャキのサラダ。お世辞にも贅沢なそれとは呼べないが、腹を満たして活力を得るには十分な量だった。

 何なら旅をしていた頃には、こんな食事でさえご馳走だったのだ。



「俺たち、普通に戦ってたけど……?」

「野蛮な人間と一緒にするな。アタシは彼の魔王の娘だぞ?」

「さいですか」



 しかしながら、どうもリリスには通じないらしい。

 濡れた服の代わりに俺のものを貸しているが、着心地に納得がいかない様子。先ほどから隙あらば生地の質が悪いだの、縫い目の糸がチクチクするだの言っていた。

 もっとも幼い少女のワガママなんて、王家の姫様の高飛車に比べればたいしたことはない。アレはもう別格で、相容れないというのが分かり切っていた。



「ところで、今日はこの後どうするんだ?」

「……むぅ」



 そんな折に、俺は話題を変えようとそう訊ねる。

 するとリリスは少し考え、こう言った。





「お前の弱点を探そうと思う」

「………………」





 物凄く真剣な表情で。

 ……それ、俺に言って良いのか?



「そういうお前は何をするんだ」

「あー、俺か?」



 そんな内心のツッコミをぐっと堪えて。

 俺は彼女の問いに答えた。



「俺はいつも通り、村の周辺のスライムを狩るよ」

「スライム……?」



 この八年間、ずっと続けてきたルーティンだ。

 なので特に違和感なく言ったのだが、リリスにはそれが引っかかったらしい。しばし考え込むようにしてから、少女は意を決したようにこう言うのだった。





「なら、アタシもそれに同行しよう!」――と。





 


面白かった

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