1.スライム狩りの仕事。
続きです_(:3 」∠)_!
――ウィリス・バーガンディ、現在三十三歳。
勇者選定としての儀式に巻き込まれたのは、今からだいたい十三年前。何やらゴテゴテとした一団が村に突然現れて、若い男性がみな一斉に集められた。
俺もその中の一人で、いったい何が起きているのか理解なんてしていない。
それでも次から次に水晶の前に立たされて、偉そうな奴らが大きなため息をつく光景を見せられ続けた。そしてついに自分に順番が巡ってきて、そして……。
「……もう、ずいぶんと前の話なのにな」
不意にあの日の出来事を思い出して、俺はそう呟いた。
今さら過去が変わるわけでもない。そう思って、大きなため息が漏らした。だったら気持ちを切り替えて、さっさと目的を果たしてしまう方が良いだろう。
「さて、そろそろ出てくるかな……?」
手にしているのは、木製の剣。
装備らしい装備はたったそれだけで、俺は魔物が生息する森の中を進んでいた。今回のターゲットというのも、もちろんスライムだ。村にいる若い冒険者はみな、何かしら強い魔物を倒して腕っぷしの強さを自慢したがる。
だけど、この村にとって最も悪影響をもたらすのはスライムなのだ。
奴らは作物を粘液で汚し、育たなくさせる。酷い年になると、それのせいで餓死者さえ出てしまうのだった。
「……あぁ、いた。思ったより多いな」
そんなスライムを探していると、目の前の木陰に数体が群れを成しているのを発見した。典型的な無色透明なゲル状タイプ。人体にこそ悪影響はないが、先ほども述べた悪影響を最も引き起こすそれだった。
俺は少しだけ警戒しながら、そのスライム一団に接近する。
そして、手にした木剣を振り下ろした。
――ぴぎぅ……。
すると、スライムはそんな力ない音を発して消滅する。
ギルドに持っていけば換金してもらえる『魔石』というものに変化するが、俺はそれに目もくれず残りのスライムを討伐した。どうやら、この一帯にはこいつらしかいなかったらしい。周囲から気配も消えたので、俺は帰宅の準備を始める。
「でも、そろそろスライムも数が増える時期だからな。気を付けないと……」
スライムには年に何度か、大量発生する時期があった。
もうじきその前兆がみられるはずなのだが、どういうわけか今年はまだスライムに変化はない。かといって気を抜くわけにもいかないので、俺は念のため周囲に気を配って歩き始めた。そうしていると、思わぬ魔物に遭遇する。
「あれ、こんな場所にオーガなんているのかよ」
それは俗に『人喰いの怪物』とされる魔物だった。
筋骨隆々とした肉体をしており、呼吸荒くこちらを見据えている。どうやら俺のことを値踏みしているらしく、分かりやすく口角を歪めていた。
たしかに手にしているのは木の剣だけ。
恰好の得物だと、そう思われても仕方がなかった。
「うーん、とりあえず倒しとくか」
俺は少し考え、そう決める。
たしかにスライムが専門ではあるが、オーガとなれば人間に直接的な被害がある。村を守るためには、討伐するべき相手だった。
だから――。
「こいよ、人喰い野郎」
軽く挑発する。
するとオーガは思わぬこちらの行為に、表情を歪めた。
――ガアアアアアアアアアアアアアアア!
そして、乱暴に腕を振り上げる。
だが俺はそれを掻い潜って、木剣を胸部へと力任せに突き立てた。
「はい、終わり……っと」
その一撃で、戦闘終了。
俺が腕を引き抜くと、オーガの胸からはおびただしい血が噴き出した。服を汚したくないので、そそくさと回避して、魔石へと変化していく様を見守る。
せっかくだし、生活費の足しにしよう。
そう考えて俺は魔石を拾い、改めて帰路に就いた。
「でも、どうしてこんな場所にオーガが……?」
ただ一つ。
そんな疑問を抱きながら……。
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