表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

愚痴零し、愚痴聞き

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

嫌いじゃないんだよね。愚痴聞くの。

貴方を肯定することは、ある意味自分を肯定していると錯覚するから。

「愚痴を聞くの、嫌いじゃないんだよね」

とある料理屋での話である。俺と女はカウンターに横並びになって、酒のつまみを片手に雑談を交わしていた。酒の席だからだろうか? 互いにアルコールが入っても居ないのに、場の雰囲気に酔う。気が付いたら弱音を吐いていた。

捌けない量の仕事が舞い込んだ事。弱音を吐く間もない程に、質問攻めをされた事。限界を感じて、立ちくらみを起こした事。

そんな話をされているにも関わらず、女は上機嫌に肯定し、頷く。うたた寝でもする様に、こっくり、こっくり。それから上の言葉である。嫌いじゃない。

「悪いな。今度話聞くわ」

「お構いなく。大分こっちも落ち着いたから」

持っていた烏龍茶のグラスを置くと、塩キャベツに手を伸ばして咀嚼を繰り返す。話を聞いていた様に、こっくり、こっくり味わう。それから飲み込むと、細められた目をすうっと開眼した。

「他の人がどうだか分からないから、まぁ特例として。声に出して、肯定している時って、存外落ち込めないんだよね。落ち込もうとしても、話を聞いて受け入れる事に躍起になるから」

「お前も……何か悩みが?」

そう問い掛けた後、女は僅かに視線を逸らした。それからまた視線を合わせ、烏龍茶を手にした。勢い良く二口飲み干すと、飄々とした微笑みを浮かべた。あぁ、これは誤魔化してるな。

昔からの癖だ。バツの悪い事があると笑ってはぐらかす。そうして、平気な顔して別れを告げる。それで終わり。弱音を決して吐かない。

「言ったでしょう? 落ち着いたって」

女は烏龍茶の二杯目を所望すると、考える様に髪に触れた。

「君を慰めてる様に思えたかも知れないけど、君の話を聞きながら、私自身で自分を慰めていたんだよ。だからどうも良くなった」

「……頼って……良いんだ」

きっと此奴は、俺が思っている以上の窮地に立たされていたのだろう。それでも、弱音一つ吐かず、ただ笑って愚痴を聞いている。本当は弱音を吐きたいのは相手の方かも知れないのに。

女はまた誤魔化す様に笑うと、さらりと振り切れた事を放つ。

「ふふふ。有難う。でもどうしようも無くなって消えてしまったら、まぁその時はその時。後の祭りだよ」

割り切っているのかも知れない。清濁を合わせ飲める程に。

この女の子の過去的に、あんまり自分の言ったことを肯定されなかったんじゃ無いかと。

誰にも弱音を吐かないし、吐いたところでどうにもならないから、自分で堰き止めているような。

だから傷付いた相手の事を絶対否定しないし、過去を自己投影して、慰めているような。

それが嫌な事でも良い事でも。さらりと受け入れそうな。


耐えられなくなったら、自分でも気付かぬうちにとんでもない事してそう。

で、終わった後に『あぁ』とか平然とした顔で言いそうな危うさがあります。

感覚麻痺してそうだな……。『頼って良いんだ』の後の『後の祭り』が滅茶苦茶不穏……。

清濁併せ飲んだ後に待つのって、本当に心身穏やかな未来なんでしょうかね?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ