其の三 子供のイジメについて考える
イジメと言って真っ先に思いつくものはなんでしょう?筆者はもちろん子供のイジメです。
たまにニュースになったりもしていますがこれは別に日本だけの問題ではありません、全世界で同じような事例が多く発生しています。
ではその原因は何でしょうか?
実は全くわかっていません、よく『イジメる子供が悪い』とか『イジメられる子供にも問題があるのでは?』などと言われる事がありますがこれは原因ではありません、なので筆者なりに考えてみます。
先ず考えるのはイジメは昔からあったのかどうかと言う事ですが、筆者はおそらくあったと考えています、ただその発生率は現代に比べると極端に少なかったのでは無いかとも考えています。
なぜそう思うのかは後述するとして、極端に少ないと思うのはイジメの存在を示す史料が筆者の知る限り無いからです、尤も筆者が知っている歴史資料など微々たるもので申し訳ないですが。
日本には学校で習うよりはるかに多くの文献が残っています、各地の風土記や武家・寺社・村落などの文書集、公家や武家の記録集や年代記など色々有りますが、それらの中で子供のイジメについて書かれた物を筆者は知りません。
なので社会現象になるほどのイジメは現代、と言うより近代になってからの現象のように思えます。
では近代とそれ以前の子供の集団にはどんな違いがあるでしょう?
先ず最初に思い浮かぶのは学校です、江戸時代にも寺子屋などで子供を集めて勉強はさせていました、ただその頃は学校のように学年別に分けたりせず全年齢同じ教室です。
次に思い浮かぶのは人数、江戸時代中期から後期で日本の人口は3000万人ほどだったと記憶しています、現在の約4分の1です、尤もこの頃の子供の人口比は現代よりかなり多いので子供の人口自体は3分の1前後ではないかとは思っていますがそれでも少ないです。
他には勉強内容など幾つも違いはありますがイジメと関係していると思えるものは思いつきません、なのでこの2つがイジメの増えた原因の1つでは無いかと考えます。
ただこれでは根本的な原因の解明には至っていません、なので今度は別の方向から、イジメは日本だけの問題では無いと言う所から考えます。
そもそもなぜ子供なのでしょうか?なぜ文化や環境の違う場所で同じような現象が起こるのでしょうか?こう考えた時思いついたのは生きるための本能と結びついているからでは無いのかという仮定です。
子供は当然の事ですが大人に比べて圧倒的に知識と経験が足りません、これは子供の味覚によく現れています、いわゆる好き嫌いです。
5つの味覚の内酸味は腐敗を、苦味は毒物を警告する味です、なので子供の内は本能で行動する事が多いためこの2つの味覚を忌避し好き嫌いにつながります。
同じように本能による行動からイジメが起こると仮定した場合どう言う理由が考えられるでしょうか?そうして筆者が最初に考えた事、それは食物連鎖です。
人間は猿から進化しました、そして猿は食物連鎖の中間、要するに捕食者にもなれば被捕食者にもなると言う事です。
ここで問題になるのは被捕食者となった場合です、そもそも捕食者はどんな基準で獲物に狙いを定めるでしょうか?
これは割と思い浮かぶでしょう、先ずは幼体や老体のような弱い個体、次に怪我や病気で弱った個体、さらにアルビノのような目立つ個体です。
ここで問題になるのは人間の祖先である猿は社会性を持っていたと言う事です、つまりは集団行動をしていました。
なのでいくら狙われるのが先に挙げた個体だとしても集団の中の個体なので最終的に捕食されるのが必ず狙われた個体とは限らなくなります。
つまりは狙われた個体の側にいるととばっちりとまではいかなくても逃げ方によっては普通の個体が運悪く捕食される事も考えられます。
ではどうするか・・・当然狙われやすい個体の側には寄りつかない、近づかれたら逃げる、これに限ります。
人間は猿だった頃のこの生存本能を持っているのでは無いかと筆者は考えます。
ではその生存本能がなぜイジメに結びつくのかと言えば学校と言う特殊空間が関係していると思います。
学校では同い年の子供を1か所に集める事になります、このため野生では出来ていた狙われやすい個体から逃げる、距離を取ると言う行為が出来なくなります。
そのストレスの解消方法が狙われやすい個体を排除すると言う行為になるのではないかと考えます、これこそがイジメだと筆者は考えます。
なので子供のイジメでターゲットになるのは勉強や運動が苦手だったり気が弱い子供(弱い個体)、障害があったり目立つ場所に傷や痣がある子供(弱って見える個体)、服装や行動が他の子供と著しく違う、また日本では見た目が日本人とは違うとすぐわかる所謂ハーフや外人の子供(目立つ個体)がほとんどだと思います。
要するに筆者はイジメは生存本能からくる行動なので昔からあるし外国でもあると考えました。
ではなぜ昔はほとんど無かったのでしょうか?それが最初に考えたイジメが増えた原因と思われる2つだと考えています。
1つは年齢による組分けが無かったこと、昔はどこも子沢山でした、なので兄弟姉妹で寺子屋に通っていたとすればイジメの対象になるような子供に兄弟や幼馴染と言った保護してくれる存在があったと思われます。
もう1つの人口が少ない事、これも昔は人が少ない事で地域社会のほとんどの人が顔馴染み状態にあったからだとすれば子供たちは子供だけでなくその親の事も考えるようになります、なので子供自体にはイジメの対象にされる要素があったとしてもその後ろに控える保護者がその子供を擬似的に強い個体と認識させる事が出来たのだと考えました。
なので現代でも小さな村のようなほとんどの住民が顔見知りという場所にある学校ではイジメはほとんど起こっていないのではないかと考えています。
ではこれを踏まえて対策するとしたらどうでしょう?筆者は教育しかないと思っています。
具体的にはイジメの根本的な原因はこの生存本能に依るものだと伝えた上で『イジメはしている者の方が居もしない敵を恐る弱虫』『仲間を見捨ててでも助かろうとする卑怯者』と教えてはどうかと思います。
子供というのは承認欲求が強くヒーロー・ヒロイン願望を持つ者が多いと思います、だからこそ『弱虫』や『卑怯者』と呼ばれる行為には忌避感を持ってくれるようになるのではないかと思っています。
ただ事が生存本能に起因しているのなら完全排除は出来ないとも思っています、だからこそ昔も記録がないだけでイジメはあったと思うと考えているのです。
それでもこの考えが普及すればイジメは大きく減らせるのでは無いかとも考えています。
結論:子供のイジメは生存本能から来ている・・・・・・・かもしれない。




