体育祭の借り物競走で憧れの人に「君が好きだ」と叫びたい。
なろうラジオ参加作品です!
高校三年生の体育祭。
俺は満を持して、借り物競争にエントリーしていた。
テンプレなお題、『好きな人』を引くと信じていた。去年もその前も、『好きな人』『尊敬する人』があったからな。
そして好きな人のお題を引き当てて、全校生徒の前で我がクラスのマドンナ……愛菜ちゃんに告白するんだ!
レース開始の合図とともに全力疾走し、これだと思う札を引く。
ランドセル
裏返しても透かしても、何度読んでも変わらない。
「はあぁぁああ!? らららららら、ランドセルぅ!? 誰だよこんなお題入れたの!!」
他の出走者は「えんぴつ貸してくれー!」だの「缶コーヒーくれ!」だの言いながら観客席に走っていく。
小学校の体育祭ならともかく、ここは高校だぞ。
ランドセルを背負った小学生がいるなんて可能性、かなり低い。
完全にフリーズした俺の横で一足遅れていた男子、タケダが最後の札を引いた。
「す、好きな人!?」
彼はオロオロしながらもクラスの応援席に走り、叫んだ。
「ええとあの、愛菜さん! 借り物が好きな人なので、一緒に来てください!!」
「あ、ありがとう。わたしも、あなたのこと……」
手を取り走り出す二人。
ヒューヒューというお決まりの声が飛び交い、愛菜ちゃんとタケダがゴールテープを切った。
さらに他の四人がゴールし、最後になってしまった俺。
愛菜ちゃんに告る前にフラレるのが確定した上に、びりっけつ。心で泣きながら観客席に走る。
「ランドセルかしてくだひゃい!!」
「あ、ぼくのでよければどうぞ」
姉の応援に来ていたという少年にランドセルを借り、ゴールすることができた。
1位のポールの前で、仲良さげに座っている愛菜ちゃんとタケダ。
けっ。リア充爆発しろ。
幸せになってくれ、なんて言ってやらないんだからな! 悔しくなんかない。悔しくなんかないぞ。
俺のあとに走ったグループでも「ひまわり!? んなもんここにあるか!」「おふだァぁあ!? 寺にでも借りにいけってか??」と叫ぶ声が聞こえてくる。
借り物競走のお題を決めた先生が、校長に正座させられてめちゃくちゃ怒られていた。
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