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ー1-3ー

「莉奏、莉奏。しっかりして、莉奏!」


お母さんの声?もう朝だっけ?


まだ寝足りないなあ…と寝返りを打ちつつ


「んー、朝ごはん?まだお腹すいてないよー」


と返事をすると、突然頭を誰かに叩かれた。


「寝ぼけないで!」


痛い!夢なのに痛いとかあるの?ううん、違う…この声は、お母さんじゃない。

愛華の声だ。何で…


まだ、半分夢の中で上手く思考回路が回らない。


愛華って私の家に泊まりに来てたっけ?…いや、違う!


「あー!そっか私達、海に落ちて…!!」


と私が飛び起きると目の前にはびしょびしょに濡れた服をパタパタと乾かしている友人の姿があった。


とりあえず元気そうなその姿を見て安心する。


洞窟の中にあった海に落ちてよく助かったよな…なーんて呑気に思いながら周りを見渡した。


「何で…森? え?私達、海に落ちたんだよね?…ここ、どこ?」


周りを見渡してみて、びっくり。辺りは大きな木に囲まれている。地面はひんやりと湿っていて、薄暗い。ここがどこなのか全く検討がつかない。


海に落ちたら運良く助かったとしても浜辺に打ち上げられているはずなのに、今私達がいる所には浜辺はもちろん、海もなく潮風ですらない。…これっておかしくない?


と私の乏しい脳が思考した。


「分からないの。海に落ちて、意識を取り戻したらここにいて…。ごめんね、私のせいなんだよね。その時のことは覚えてないけど、愛華から全て聞いて…」


美蘭乃があまりにも縮こまって謝るから、私は大丈夫だよと笑う。


四人とも無事なんだし、ここがどこか分からなくても森さえ抜けることが出来れば、近くにいる人に聞けばいい話だ。そうすれば、どこにいるかくらい1発で分かる。


「とにかく森は危険だし、服もこのままだと風邪ひくから乾かしつつ、森を抜けよう」


愛華はまだしょんぼりと項垂れている美蘭乃の肩をぽんっと叩いて立ち上がる。


「そうだね。森を抜けて誰かにここがどこか聞かなきゃ」


私は美蘭乃に手を差し伸べた。美蘭乃は顔を上げて、私に微笑みかけるとその手を掴んだ。


「うん」


「翔和?行くよ」


私が美蘭乃が立つ手伝いをしている間、愛華は体操座りで、一点を見つめて何か考え事をしている様子の佐々倉の背中をバシッと豪快に叩く。


「いってーよ。この馬鹿力が」


佐々倉は愛華を睨みながらも立ち上がる。


「ふん!誰が馬鹿力よ。いこっ」


愛華は踵を返して進み始めた。


二人は幼なじみだから仲がいい。佐々倉が皮肉を言う度に愛華は怒ったような素振りを見せるけど、それも昔からのコミュニケーションのひとつで、佐々倉がそういう態度をしてくるのは心を許している証拠だから、本心では別に怒っていないし気にしてもいないと前に愛華が言っていた。


しばらく木に印を付けながらー佐々倉曰く、そうした方が遭難しにくいらしいー適当に歩いていると、案外早く森の出口を見つけられた。どうやら森の奥深くにいた訳ではなかったみたいだ。


「あれ、町じゃない!?」


出口へと向かっていると、美蘭乃が叫んだ。その指さす先には民家が沢山ある。森を抜けて、100メートルくらいある小道を歩けばすぐそこだ。


私達は救いを求めるかのように町へ向かって走る。


「なんかオシャレな家がたくさん…」


町に近づくと、私は違和感を覚えた。


私の住む町では見たことの無いようなカラフルな家が沢山建ち並んでいる。まるでフランスやパリのようなオシャレで有名な国に来たような気分だ。それなのに町に活気が感じられない。人が住んでいる様子がなかった。


というのも、どの道を歩いても、人ひとり見当たらないからだ。普通の町なら子ども達とか散歩中のおばあちゃんとかが歩いているのに。


普通なら、窓とかが開いていたり洗濯物が干してあったりするのに。


生活感が感じられない。家の中からの声も、音もしない。


静寂が漂うだけだ。


ひたすらに不気味としかいいようがない。


違和感を覚えながらも町の中を練り歩く。…と、少し先に大きな城が見えた。


今まで見えなかったのは上手く家に隠れていたからだろうか。


城はまさしくシンデレラに出てきそうな感じのやつで白を基調として赤の模様が彫られている。


敵から侵入されないようにするための城壁とかはなくて、ここから真っ直ぐ歩いていくと立派な門の目の前だ。


こんな普通の町のど真ん中に城とかあるの?


城があるにしてはあまりにも不自然すぎる。


「ねえ、あの城…何?ここって、日本だよね?」


日本には無いような城を見て不安を覚えた私は、後ろを行く三人に聞いた。

すると三人は顔を曇らせていた。


「…どこ?ここ…」


愛華と美蘭乃は不安そうに城を見つめる。


佐々倉は城を凝視したまま黙っている。


どうしよう。こんな経験、した事ない。不安が襲ってくる。


何か、何か行動しなきゃ…


立ち止まっていたら、不安で押しつぶされそうで。私は重苦しい雰囲気の中口を開いた。


「…城、行ってみる?門番さんに何か聞けるかも」

「いや、止めておいた方がいい。こんなにたくさん家があるんだ。一人くらい人、いるだろ。門番に聞くのは最終手段だ」


私の提案はあっさりと佐々倉に却下された。佐々倉の酷く冷静な声が少し気持ちをやわらげてくれた。


そのお陰で自分の中の冷静な思考が蘇ってくる。


それもそうか。門番さんにいきなり話しかけて武器を向けられても困るだけだもんね。


納得した私は、城に続く道には行かず右の少し細い通路へと歩き出そうと城から目を外した。


その時


「動くな!」


図太い男の人の声が後ろから響いてきて、肩がビクッと跳ね上がった。


思わず反射的に声の方を向くと…


「ね…猫!?」


私の後ろには二本足で立っている猫がいた。

読んでくださってありがとうございます。

いよいよ話が進んできました。ここから四人はどうなっていくのか…。次回を楽しみにして頂けると嬉しいです。

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