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9割の幸せ

作者: 2^3

 ここは○○町。笑顔のあふれる、大変に平和な町でありました。

 さて、この町の商店街の一角で小さな少年と黒のスーツを身に纏った高身長の男性が話しています。


「本当になんでも願いを叶えてくれるの?」


 少年の質問に、男は丁寧に答えます。


「はい。私にできる範囲であれば、可能でございます。」

「じゃあ、あの、欲しいゲーム機があるんだけど…」


 少年は、新発売の大人気ゲーム機がとても気になっていたのです。少年の言葉に、男は優しい声で答えます。


「はい。可能でございます。」

「本当に!?どこにも売ってないんだよ?」

「本当でございます。私は嘘がつけないのです。」


 少年はここで、財布を持ってきていないことを思い出します。


「あ。でも僕お金持ってないんだった…」


 少年はばつが悪そうに言いました。


「お金は必要ありません。その代わりに、"喜び"の感情を少しだけ分けて欲しいのです。」

「喜びの感情?」


 少年はよく意味が分かっておりません。男は丁寧に説明します。


「はい。あなたがこれからの人生で経験する、幸せな瞬間、嬉しい瞬間、喜びに浸る瞬間の感情を1割だけ、私に分けて欲しいのです。」


 少年には1割という言葉の意味がよく分かりませんでしたが、それは少しの量であり、影響は少ないということはなんとなく理解できました。


「ちょっとだけなら別にいいよ。」

「ありがとうございます。でしたら『契約する』と声にして頂けますか?」

「うん!契約する!」

「確認しました。これで取引は完了でございます。」


 黒スーツの男はそう言うと、メモ帳のようなものに何かをサラサラと書き込んだ後、カバンを持って立ち去ろうとしますが、少年が呼び止めました。


「ね、おにいさんって神様?」

「いいえ。私は悪魔でございます。」


 悪魔は笑顔でそう答えました。少年はそれを聞いて、なにやら怖くなってしまい、逃げ帰ってしまいました。



 2日後、少年の家に荷物が届きました。差出人は不明でありましたが、少年は急いで荷物を開封します。


「わあ!欲しかったゲーム機だ!」


 早速、少年はゲームを起動し、プレイします。ゲームはとても楽しく、少年は喜びに満ち溢れております。

 少年はその喜びが9割に減っていることなど気づきもしません。もう悪魔のことなど忘れてしまって、ゲームに夢中であります。




○○町は今日も平和でございます。

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