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インダス文字(1.ことはじめ / 記号の音価)

作者: 板堂研究所(Bando Research Corporation)

〇7月23日、「解読のきっかけ」に、(4)動物のシンボリズム、を加えました。


〇 7月22日、「解読のきっかけ」の(1)ドラヴィーラの看板、末尾の「数学的な考察」に加筆。

〇7月18日、「解読のきっかけ」として、(3)地名、を追加。

 序にかえて


 2018年から、古代ギリシャのミノア文明に由来する線文字Aなどを日本語として解読する研究を進め、ネット上の「Academia.edu」で海外の研究者とも意見交換してきた。そこで線文字Aの日本語説を展開したら、時代的・地理的に想定困難であり、俄かに受け入れがたいとの辛辣な反応が多かったが、同時にインダス文字へ注意喚起する空気を感じ取った。因みに典型的なインダスの印章は、四角く、手のひらに乗るサイズ。下方には、動物が描かれ、上部に表題の様に、文字が横に並べられる。

 思えば義理の父は、ヒンディー語の専門家で、パキスタンやインドに滞在の経験があり、南西アジア地域の歴史や文化に通じていたので、常々刺激を受け、好奇心を煽られていた。

 然るに下記の観点から、インダス文明の担い手も、クレタ文明の場合と同様に、日本語を用いたのではないか、と考える様になり、インダス文字の背景言語として、日本語を推挙する事とした。結局、青銅器時代の人間の行動や移動の半径を拡大し、設定し直すだけの問題かも知れないのである。そして2021年の春になり、インダスの印章の解読を始めた。

 因みに解説書として、菊池徹夫編「文字の考古学」(同成社。2003年)が平易かつ詳細。ウェブサイトでは「地球ことば村・世界の文字」の説明が、簡潔明瞭である。またフィンランド人の研究者、A.パルポラ(Asko Parpola)の編纂した、インダスの印章の膨大な写真集、「Corpus of Indus Seals and Inscriptions」(第一巻:インド、第二巻:パキスタン)を活用した。


(クレタ文明との共通点)


 インダス文明は、紀元前2600~前1900年頃、パキスタンとインドに跨るインダス河流域一帯で栄えた。因みにこの文明とゆかりの深い、パキスタンのシンド地方には「ナラ川」が流れている。紀元前1500年頃には、印欧語族のアーリア人が、インド北方から侵入。この地域を支配し、リグ・ヴェーダを中心とする文化を築いたが、この頃までにインダス文明は、気候変動等、他の要因で滅亡していた由である。

 インダス文明とクレタ文明には、類似点が多い旨指摘されている。ギリシャ人の研究者Costis Davaras は、「Bronze Age Crete and India」(Indian Historical Review, Volume XXXII, No 1. Jan 2005) の中で、クノッソスを発掘したエヴァンズ卿等の指摘を紹介の上、宗教や神話に言及し、王妃の誘拐に始まる戦争を描いたイリアスとマハーバーラータ(ママ:おそらくラーマーヤナ)の類似性を論じている。

 2017年3月には、Bibhu Dev Misra が、ネット上のAncient Inquiries に掲載した論文「Indus Valley Cultural Elements in Minoan Crete: Was it Due to Migration?」の中で、古代のクレタ島で行われた「牛跳び」が、インダスの印章にも描かれている旨指摘している。

 S. Khan等は、Sustainability (2020,12, 4897) への寄稿文「Similarities of Minoan and Indus Valley Hydro-Technologies」の中で、両文明に上下水道等、周到な都市計画が共通する旨指摘した。確かにインダスとクレタの両文明には、碁盤の目にも通じる、直角と平行線への拘りが感じられる。

 また米国のP. Reveszは、メソポタミア、インダス、クレタの3つの文明圏から出土した「重り」から集積した、重量単位の(Ialongo他の)データに基づき、インダス・クレタ両文明圏には、メソポタミア文明圏では使われない重量単位が共有されたとし(注3)、J.Kenoyerなども、ギリシャ・エギナ島のコロンナ遺跡で発見された装飾品のビーズ19個には、インダス文明の技術が見られるとして、直接的な交易の可能性につき論じている。(注1)

 因みにインダス文明の時代、インダス河流域では、エラム王国の仲介でメソポタミアやDilmun等、ペルシャ湾の南岸地域との間で交易していたらしい。エラム王国は、チグリス河とザグロス山脈に囲まれたSusaが中心だったが、シュメールの諸都市と衝突しながらイラン南西部に拡大。紀元前2100‐前1970年頃にはShimashki王朝が知られている。この頃の地名としてSusaからペルシャ湾に向かってすぐ左側のHidali、その南東のBashime、更に南東のMarhashiが知られており、日本語を意識せざるを得ない。新シュメール王朝時代、Susaをエラム人から奪還したのが、シュメール王Shulgi(将棋?)。紀元前2004年にはShimashki王朝第6代のKindattu王がSusaと連合し、メソポタミアのUrを征服した。


(記号の分類)


 インダス文字は、無数に種類が多いが、A.パルポラによれば、インダス文字は386文字の異なる字母があり、表意文字としては少なすぎ、表音文字としては多すぎる由である。

 インドの文献学者、I.マハデーヴァン(Iravatham Mahadevan)は1977年、「The Indus Script: Texts, Concordance and Tables」の中で整理し、約400種類の原型と、それらの変形・応用編に分類している。これらの表は、インド政府のサイトで公開されており、本稿では、文字番号を同サイトから引用した。因みに一連の表では、最初の4頁に基本形、続いて変化形(系)が図示されている。


(ドラヴィダ系の言語)


 インダス文字は、インダス文明の遺跡から多数、出土する、手の平に収まる小さな印章に刻まれている。未解読とされるが、インダス文字のコンピュータ解析、また古代人骨のDNA鑑定等から、多くの研究者が、背景言語はドラヴィダ系と推定する。

 1960年代には、旧ソ連とフィンランドのチームが競ってコンピュータを駆使し、インダス文字の分析作業に取り組んだ。クロノーゾフをリーダーとする旧ソビエトのチームは、1964年に作業を開始し、結論的にインダス文字の語順は大体一定しており、修飾語は被修飾語の前に置かれ、名詞が並ぶ場合、前の名詞は形容詞の性質を持つ。数詞は名詞に直接結合される。そして背景言語としてドラヴィダ語族を候補に挙げた。

 他方、A.パルポラをリーダーとするフィンランドのチームは、1969年に最初の報告書を出したが、同様な分析成果から、インダス文字はドラヴィダ語族に帰属すると推定した。A.パルポラは、1994年の著書「Deciphering the Indus Script」の中で、この議論を取りまとめ、インドのTamil Nadu州から古典タミル語賞(Classical Tamil Award)を授賞している。(注2)

 ドラヴィダ系言語は、文法の特徴としてSOVの語順や膠着語が挙げられ、修飾語も前置される。大野晋は、1980年代に入り、ドラヴィダ系のタミル語に関し、文法(SOVの語順、膠着語等)、また語彙が、広範にわたり、日本語に酷似するとして、南インド出身の渡来民がタミル語の祖語を伝え、これが日本語の源流となったとの説を提唱したが、古くは、英国人宣教師コールドウェルが、1856年にドラヴィダ語と日本語との同系性を論じ、また日本人の芝烝氏が1973-74年に「ドラヴィダ語と日本語」を発表した事など紹介している。(注3)



 1.解読のきっかけ


(1)ドラヴィーラの看板


 インダス文字の背景言語を日本語と仮定し、原典に即して、記号に音価を当てはめる作業は、1991年に発見された「ドラヴィーラの看板」から始まった。これは「世界の文字の物語」(古代オリエント博物館、大阪府立弥生文化博物館編集・発行。2017年3版)22頁に掲載されている。ウェブサイトでは「地球ことば村」の「世界の文字」で「インダス文字」を検索すると、中ほどに登場する。


(ア)4つのKA


 この看板には、記号が横一列に10個並んでいる。車輪の様な記号が4つあるが、線文字AのKAに良く似ており、同じ音価を当てはめた。また左端から2番目の記号は、横長の長方形から下に縦棒の伸びる、T形の記号で、線文字Aの類似の記号NAの音価を適用した。また数字の1に類似の記号があり、線文字AのSIの略号と同じなので、同様の音価を付与。Xの形の記号は、線文字AのKEを単純化した記号と見做した。すると下記の音の並びとなった。3、5、10は、音価不明である。


 KA NA 3 KA 5 KE SI KA KA 10


(イ)床屋


 ここから憶測の作業に入った。5番は、口を大きく開いた菱形で、前後の繋がりからWO。10番は、ハサミやサツマタの形で、魚の尻尾が想起され、また甲骨文の「貞」(サダ)と読む(「又」を横に倒した様な)文字と似ており、これをSAとした。すると、


 KA NA 3 KA WO KE SI KA KA SA


 今度は、文字列を逆方向、右から左へ読んだ。すると「さかかしけをか?なか」となり、「さかかし毛をか?中」に見えたので、3番の記号に「MOU」を当てはめ、「逆かし毛をかまう中」と意味が通る様にした。

 文字列を再び左から読み直すと、「かなもうかをけしかかさ」となり、「金儲けをけしかけるさ」と読めた。繋げれば「逆毛をかまう中、金儲けをけしかけるさ」であり、まるで床屋の看板だった。


(ウ)漫画


「さか」をヒントに、看板の右端を上にしたら、中央寄りに、ストレス過剰な表情の顔が漫画の様に登場した。(「KE」が両目、「WO」が口)

 床屋の文脈なら、絡んだ髪を解いてもらう際に痛みを感じる表情で、右端の「SAMU」は、ハサミの様な道具、左隣の「KA-KA」は絡んだ髪の毛で、顔のすぐ上。次に、看板の左端を上にすると、やはり顔の漫画が登場したが、今度は安堵の表情。(「KE」が両目、「SI」が口)髪の毛の手当終了後に違いない。


(エ)修正


 ところが、論文掲載用のウェブサイトで、この話を海外の研究者に披露したところ、この看板はドラヴィーラの北門入り口に高く掲載され、訪問者へメッセージを送った筈なので、「床屋の看板」では不十分、との反応だった。そこで再度、検討し、次の修正を加えた。


 〇 KAと読んだ、①及び④、⑧、⑨の記号につき、〇(EN)の中に、十字(RO)+ 支線(I/YA/SI/NO)と捉え、EN-RO-(I/YA/SI/NO)と適宜、読み換える。


 〇 SAと読んだ、上記⑩の記号は、合成記号SAMUとする。


 すると、右から左へ、解読し直した結果、次の通り。


 MUSA KA EN-RO-(I/YA/SI/NO)SI KE WO KA MOU NA KA

 まさか(の)遠路や、時化をかまう中


 左から右へと解読した内容は、そのまま採用すれば、


「まさかの遠路や、時化をかまう中、金儲けをけしかけるさ」。


(参考)インダス文字のNAの記号が、その後、NEを兼ねる事を発見したが、きっかけは、初期の甲骨文で12支の「子」(NE)の記号が、インダス文字のNAに酷似する事だった。これをインダス文字に応用し、今までNAと読んでいた所にNEを代入したら、日本語として解釈する上で多くの改善が得られた。


(オ)まとめ


 文脈が、時化の避難民とすれば、漫画のストレス過剰の表情は、困窮を表し、安堵の表情は、緊急避難して世話になった結果を表すだろう。4つのKAの記号は、車輪の形なので、移民の荷車。以上の顛末により、解読した内容を信頼する様になった。


(カ)数学的な考察


 以上の様に、10個の文字記号の並びが、左右双方向から、日本語として読めたので、回文の様なものと捉えられる。そこで生成AI(ChatGPT)に、

「1 2 3 1 4 5 6 1 1 7」との数字の列を与え、左右から読んで日本語として通じるように、数字を平仮名で置き換えるよう、求めたが、満足な結果は得られなかった。

 現代の日本語を前提に考えれば、平仮名は、ヤ行 (やゆよ)とワ行 (わをん)が各3文字なので、50-4=46種類。文の冒頭に「ん」は来ないので、1と7は「ん」以外。単純に計算すれば、7種類の(数字を置き換えた)平仮名の組み合わせの可能性は、次の数となろう。


 45×45×44×43×42×41×(40ないし39)


 40の7乗として控えめに計算しても、これは、163840000000=1.6384×(10の11乗)種類となる。

 従って、ドラヴィーラの看板の10個の文字記号が、比較的少ない数の試行錯誤の後、素直に左右から読めたのは、偶然ではなく、原典がそのように仕組んであり、各記号に付した音価が正しかったから、との結論である。

 この事を一般化すれば、N種類の記号の並ぶ文字列については、少なく見積もっても、40のN乗の平仮名の組み合わせが可能となる。するとNが2の場合でも、1600種類となり、仮にXYとYXを等価と見做しても、その半分の800種類となろう。従って、インダスの印章の記述を本稿のやり方で解読した場合に、次々と回文の様に、左右双方から日本語として読めるのは(複数音節を表す合成記号が登場する場合、柔軟に読むものの)決して偶然ではない。



(2)「北のタコ回覧」の印章


 更に自信を得るきっかけは、パルポラの「Corpus」(第1巻:インド)の印章、M-296Aだった。「Lost Artifacts: Indus Valley Civilisations – Script and Seals」で検索できる。四角い印章で、2頭の一角獣が、下部中央のテントウムシの様な円形から、上部の左右に、スペード型に首を伸ばす。


(ア)5つの記号


 下部の文字列の記号に、左から右へ、1~5の番号を付せば、4番は木(Tree)の形。そこで漢字「木」の類推で、KI/KOの音価を当てはめた。


(イ)文字列の解読


 左右両端の複雑な記号を除いて推理し、魚に似た記号は、TAと考えた。すると、右から左へ、KI TA NO。また左から右へ、NO TA KOとなり、「北のタコ」と読めた。


(ウ)タコの漫画


 左端の記号の形が「回転」を示唆するので、印章を上下逆にしたら、タコ(Octopus)の漫画が登場した。(2頭の一角獣の首が、タコの頭、木の葉がタコの足)


(エ)音価の裏付け


 この印章には、明らかにタコ(Octopus)が描かれており、日本語でOctopusを表す、TAKOと読めたので、関係する2つの記号に当てはめた、TAとKI/KOの音価それぞれに確信を得た。



(3)地名(コート・ディジー、サラスヴァティ河)


「四大文明展」図録に掲載された印章(351)、(379)。更に菊池徹夫「文字の考古学I」(図60の2)の印章(A.パルポラ「第1巻:インド」のH-103a)には、KO-DI-TIと読める、同じ3連の記号が認められた。これをインダス文明に先駆けた遺跡の「コート・ディジー」と解釈したら、解読が進んだ。

 また「四大文明展」図録の印章(351)には、SU-RA-TA-WA-TIとの文字列が読み取れ、これはサラスヴァティ河と解釈できた。「モヘンジョダロからサラスヴァティ河を渡っていくのが、コート・ディジー」との文脈である。


(4)動物のシンボリズム


 多数のインダスの印章を解読した結果、登場する動物が、特定のテーマの「看板」(象徴)と判明した。この事自体、解読の方法論の正しさを裏付けている。


〇 一角獣:独身者。記述には、恋歌が多い。

〇 牛:勤労者。肉用につぶされる運命について、語られる事が多い。


〇 コブウシ:親の立場にいる者。人生経験を語る、教育的な内容が多い。

〇 ゾウ:好々爺、あるいは呆けてきた高齢者。


〇 トラ:酔っ払い。

〇 サイ(身体が点で覆われている):皮膚病。


〇 3つ頭の獣:北極星と関係の深い星や星座を示す。

〇 珍獣(ゾウ、ヘビ、トラなどの合成):世の中を風刺する内容。


〇 キツネ:(尻尾を上に)縦にしたキツネ形の記号が登場する場合、女性に化けた狐の嫁入りや、人を騙す話となり、日本の昔話や民話に通じる。



 3.音価(一音節の場合)


 インダス文字の音価を究明するに際し、次の様な考え方を基本とした。


(1) 開音節


 日本語は音節/シラブル単位なので、この文字体系に関し、日本語を想定して開音節が単位と考えた。

 インド系の文字では、子音と母音を組み合わせた上、周囲に母音や補助記号をぶら下げる基本構造が共通する(注4)。例えば「ブラーフミー文字」は、紀元前4~3世紀のマウリヤ朝(仏教に帰依したアショカ王の石碑等)から5世紀のグプタ朝に至るまで、インドのほぼ全域で用いられた。これは19世紀前半までに解読されたが、開音節が単位である。その由来をインダス文字に求める説があり、ブラーフミー文字の BA(⇒PA)、MA、NAなど、2つの文字体系に類似する記号が散見されるので、インダス文字でも開音節が単位と考える根拠となろう。

 なお、ハラッパ、モヘンジョ・ダロ、ラキガリ、ドラヴィーラ等、インダス文明の主な遺跡の名前が、開音節の連なりである事も指摘されるが、現在の地名がどれだけ遡るかについて、議論もあろう。 


(2)象形文字


 インダス文字の形から、字源が推測可能な場合、次の通り、該当する日本語の音価を当てはめた。番号は、I.マハデーヴァン「The Indus Script: Texts, Concordance and Tables」の分類による。


(1)「大」に近い人の形は「男」と解釈し、O/ TO/ OTOKO等とする。


(17)HOの記号は、キノコを思わせる奇怪な形だが、字源は「帆」であり、ヨットの帆の様に、風向きに合わせて左右にタッキングする姿だろう。


(59)縦向きの「魚」形の記号は、綿花の記号(67)から「両手」2本の支線を省略したもので、TA/ DA。(古代メソポタミアの楔型文字では、スメル語のha(魚)に似ている)読み換える場合は、「目」+(支線4本)と見做し、MESIYA、SIMESI等。読み換えは、SAKANA。下記(9)動物等の記号、にも記述。


(65)記号(59)の上に三角屋根があれば「リンガ」の形状なので、LI。


(67) 縦向きの「魚」が両手を上げた形の記号は、「綿花」の象形文字(縦長の楕円形が白い花。6本の支線が、ガク)と見做し、WA/ WATAと読む。


(169系)「穂先」の記号は「羽」3本が基本形で、SEと読む。3本でない場合、2本なら、SE-NI。4本なら、SE-YO等と、数に応じて音価を読み加える。


(225)「交差」を抽象化した形から、SA。甲骨文字の「貞」に似ている。


(252)横縞のある「缶詰」の上から縦棒の出た記号は、基本的に、NA/ NE。NAの字源は、コブラの頭で「ナーガ」あるいは、ナシ。NEは、初期の甲骨文字で12支の「子」に酷似する事から。


(307)右側の膨らんだ半月に、右斜め上から、槍が貫く記号は、突く、貫く、から、TU。この記号は甲骨文字の「月」(短い縦棒の入った半月)と酷似する。(古事記の月読、ツクヨミノミコトとの関係如何?)


(327)MOUの場合、船着き場の舟が、縄で係留した点を中心に、風や波で上下左右に方向を変える、「もがく」姿だろう。英語で言えば、moorされた姿。


(342)牛乳の宣伝に登場しそうな、U形の上部外側に「耳」の付いた、牛の頭の様な記号は、U/SENI。細長く、壺の様な形の場合、TUBOと読み換える。


 この他、次の通り。


 〇 日傘の記号:HI

 〇 反りのある弓:SO

 〇 「す」の横棒を削除した記号:SU

 〇 U字形の記号:WA

 〇 閉じた輪/菱形の記号:WO



(3)漢字


 文字の字源が明白で、酷似する漢字がある場合、同漢字の音価を借用した。


(211)「縦棒の上に三角形」には「木」と同様、KI/ KOと読む。


(261)縦向きの目/眼は、ME/ MA。胚芽(267)は、MASUME。



(4)線文字A


 インダス文字が線文字Aと酷似/ 類似する場合、線文字Aの音価を借用した。


 カメ/鏡の記号:KA

 バツ印の記号:KE

 三角屋根の左右に耳:MA

 実/巳の記号:MI

 紫の染料を採る巻貝の記号:MU

 梯子の記号:NU

 歯の記号:PA

 螺旋の記号:RA

 縦棒で、U/Vの中央を貫いた記号:RE(読み換えとして、MITE/ SATE)

 十字の記号:RO

 穀物の穂の記号:SE

 乳首の記号:TI

 矢尻/鏃の記号:ZO


(参考)線文字A・線文字Bの共通記号には、通し記号があり、次の様に対応する。


(線文字A・B)   (インダス文字)


 RO(AB02) (十字) RO (十字)

 ZO(AB20)      ZO(178系の、3109)

 RE (AB27)       RE(162)

 TI(AB37)      TI(336系の1065)

 KE(AB44)      KE(137。「×」)

 DE(AB45)      DE(192)

 NU(AB55)      NU(186)

 RA(AB76)       RA(294)

 KA(AB77)      KA(391)



(5)マッチ棒(数字)


 インダスの印章には、マッチ棒状の縦棒が複数、平行に並ぶ記号が頻出するが、これらは数字を示すと考え、本数を数えて、イチ、ニなど、数詞の音価を代入した。

 また読み換える場合には、線文字AのI/YA/SI/NO(癒しの)ルールを参考に、次の通り。番号は、マハデーヴァンの分類表より。


 I(86): I (イチ)/YA (矢)/SI (支/糸)。屈曲していればNO (ノ)。


 II(87): NI/ RA(線文字AのRAから、*76)/ HASI(橋)。


 III(89): SAN / MI/ DI(線文字AのDIから、*07)/ KAWA(川)。


 IIII(104):SI/ YO。


 4本×3列=12本の縦棒(121):SISAN/ MIYO/ YOMI。


(6)動物の角や耳


 一角獣や牛など、登場する動物の角が、文字列まで突出する場合、上記の I(86)に準じ、I/ YA/ SI/ NO、あるいは、TUNO、とする。耳が、同様に突出する場合、適宜、MI/ MIMIと読み込む。



 4.音価(合成記号の場合)


 小さな印章のスペース節約の為か、合成記号が多い。想像力豊かな創意工夫により多種多様で、2音節に加え、3音節のものもある。この様な合成記号では、特に手指の本数(1から5)に対応し、読み換え可能なので、その自由な発想において、日本語で「行」など漢字の読み方に酷似する。 

 全てを解明しきれないが、取り敢えず次の通り。


(1)女性の目(261系)


 ME/ MA。縦向きの目の中にSE(169系の2542)が書き込んである場合、MESE/ MASEと読む。(図柄がまつ毛の長い、女性の目を思わせる)


(2)フォーク(162系)


 上部の先端が3本の場合、線文字Aと同様にREとするが、読み換えは「手」を意識し、MITE/ SATE。先端が4本の場合、SITE/ YOTE。5本の場合、TE/GOTE。


(3)熊手(171系)


 熊手形の記号(171系)には、原則として「指の数」+TE+ (I/YA/SI/NO)、との音価を付与する。従って多くの場合、3音節。指が4本なら(1310)、YOTEIなど。5本の場合、KUMADEも選択肢に入れる。


(4)櫛 (176系)


「E」に似た「櫛」の記号は、KU+「指の数」の音声を付与する。指が5本の場合(176)、特別にKUTE/ TEKUを選択肢に加える。


(参考)多様な読み方の問題点


 一つの記号で、複数の音節を表す場合、音節の順序は入れ替え可能。例えばWATA(綿)の記号なら、TAWAとも読める。すると合成記号の場合、順番次第で、複数の選択肢が生まれてしまう。2音節の場合、2×1で2通り。3音節の場合、3×2×1で6通りある。

 また各音節の読み方に、選択の余地がある場合、更に複雑となる。例えば「熊手記号」で、5本指の熊手で、KUMADEを選択しない場合、指の数が、TE(手)に相当するので、GOを読み込むか、省略するかの選択肢もあり、次の通り、24通りの読み方が可能。


 〇 GOを読み込む場合 (18通り)


 -把手の縦棒を最後に読めば、(GOTE/ TEGO)+ I/YA/SI。(6通り)

 -把手の縦棒から読み始めれば、(I / YA/ SI)+GOTE/ TEGO。(6通り)


 -把手の縦棒を間に挟んで読めば、GO+ (I/YA/SI)+ TE。またTE+(I/YA/SI)+GO。(6通り)


 〇 GOを省略する場合(6通り)


 -把手の縦棒を最後に読めば、TE+(I/ YA/ SI)。

 -把手の縦棒から読み始めれば、(I/ YA/ SI)+ TE。               


 昔から慣用的な表現として「Aは、Bの如し」が使われているが、上記の、5本指の熊手記号に沿って考えれば、「ごとし」の由来は「ごてし」であり、「5は、手に他ならない」との意味か。



(5)歯(244系)


 四角い枠(国構え)の内部で、上下に短い縦棒が並ぶ記号は「歯」であり、数えてから、HAと一緒に読む。例えば、上下に5本ずつ(1337)なら、TOHA(10歯)など。


(6)ドア(245系)


 多数の正方形に仕切られた「扉」(ドア)の記号は「歯」の応用と見られ、「正方形の数」+ HAと読む。読み換えとしては、「正方形の数」+ MASUME(マス目)。


(7)三角形(204系)


 三角形の記号は、果物のナシから、NA。あるいは「山」と見做し、YAMAと読む。横縞があれば、その数を読み加える。

 これを踏まえ、既述の「木」の記号(211)(KI/ KO)に関し、「三角形の下に縦棒」と見做し、YAMA-(I/YA/SI/NO)、との読み換えが可能となる。


(8)カメ/鏡の記号(391系)


 単音節と捉えた場合、線文字Aとの共通記号から、KA。

 しかし、〇(EN)+「十」(RO)+ (I/YA/SI/NO)と捉える事が可能であり、これと合わせれば、KA/ [ENRO+ (I/YA/SI/NO)]。


(9)動物等の記号


(ア)キツネ(48系)


 この合成記号は、縦にした(尻尾を上にした)キツネの形であり、下の方からNOSEYOMEとし、KITUNEを読み加える。


(イ)タコ(180系)


 この合成記号は、中央で屈曲しており、上下に分ける。上部をTUTU(筒)、屈曲部をORE(折れ)、下部を「足」の本数とし、TAKOを読み加える。例えば足が4本の場合、上から「TUTU ORE SI/YO TAKO」。


(ウ)クモ(54系)


 この合成記号は、カニにも見えるが「クモ」と解釈する。触角をNI、胴体をME、また足の本数を数え、KUMOを加えて読む。例えば足の本数が、左右に3本ずつの場合、NI+ ME+ MIMI/SANZAN+ KUMO。


(エ)コロン「:」類似の記号(101)


 2本の短い縦棒が、間を空け、一線上に並ぶ。2(I/YA/SI/NO)と読めるが、「点間」と解し、TENMAと読み換え可能。「天馬」に通じる記述が多い。


(オ)逆さハート形(323)


 この記号は、神社に見られる、ハート型の魔除け「猪の目」と同じ形なので、同じ音価を付与し、INOME/ INOMA等と読む。


(10)表意記号


 上記(9)では、描かれた動物を表す記号を扱ったが、以下は、それ以外の表意記号であり、漢字に通じる特性がある。なお同一記号の「読み換え」として既述の内容と、重複が有り得る。


 〇 平行な縦棒2本(II):「橋」と見て、HASI。


 〇 平行な縦棒3本(III):「川」と見て、KAWA。


 〇 三角形(⊿):「山」と見て、YAMA。


 〇 左右に、耳/角のある牛頭(「U」)で、特に細長い場合:壺と見て、TUBO。


 〇 牛の角2本で、壺の形となり、文字列に並ぶ場合:壺と見て、TUBO。


 〇「魚」の記号(59)(TA/DA) : その形状に鑑み、SAKANA。


(11)縞模様


 特定記号の空白に、まるで縞模様を作る様に平行に並ぶ、短い横棒や縦棒は、音価の一部を表すので、本数を数えて読み込む必要がある。例えば口の中に歯の並ぶ記号の場合、HA+「歯の本数」となる。NA/NEの場合、記号を形作る「缶詰」や「三角形」の内部の横線を数え、NI、SAN等と読み加える。

 なお記述の大意を掴むには、「縞模様」を無視してHA、NA等と単純に読むのが早道だろうが、正確に読むには、忍耐強く「縞模様」を読み込む必要がある。


(12)「と」を補充する


 A、Bの音価を示す記号が並んでいる場合、「と」(and)を適宜補充し、「Aと B」との読み換えが可能とする。暗黙の了解で、スペース節約の工夫と見られる。



 5.双方向に読む


 インダス文字では「目」、「魚」、「熊手」の記号を含め、左右対称な記号が多いので、印章から印影を作成した場合、記号の形が維持される事が多い。然るにクレタ島やキプロスの古代文字は、右から左、左から右、と双方向から読める様に工夫されているので、インダスの印章の文字列も、同様に双方向から読めるものと推測した。典型的なインダスの四角い印章の場合、下部に動物を描き、上部の狭い空白にメッセージを入れるので、左右、双方向から読めれば、空間節約になるのである。 

 双方向に読む事を前提とすれば、同じ記号をME/MA、KI/KO等と読み換える習慣や、追加的な支線に音価を持たせ、I/YA/SI/NOから選択するのも自然であり、今日に残る漢字の柔軟な読み方(例えば「行」につき、行く、行方、(銀)行等)の淵源と考えられる。

 因みに双方向で読める日本語の文章として、学生の落書き系の遊びが思い浮かぶが、思考実験として、万葉集、古事記、いろは歌、松尾芭蕉から作品を拾い、逆方向に読んでみたら、双方向に読める事例が見つかったので、その様な遊びが、上代日本語の頃から存在した事が判明した。

 なおインダス文字に関し、ロゼッタ・スト-ンの様な二か国語原典が見つからない中で、原典が日本語として双方向に読解可能で、かつ、その結果が印章の漫画と整合する場合、「日本語であり、使用した音価は正しい」と主張できよう。



 6.動物の漫画に着目


 インダスの四角い印章には、文字が刻まれると共に、動物が登場し、ウシ、コブウシ、ゾウ、トラなど実在する動物に加え、次の想像上の動物が登場する。


(一角獣)一角獣の顔の前には、「譜面立て」の様な台が置かれるので、詩歌や音楽と関係深い事が窺われる。


(珍獣1)角のある四つ足動物で、頭が3つあるもの。例えばパルポラの第2巻 (パキスタン)のM-1169AからM-1171A。


(珍獣2)牛の角、トラの身体、(ヘビの形状の)ゾウの鼻、ヘビの尻尾を合成した珍獣。例えば、パルポラの第1巻 (インド)のM-299AからM-303A、H-96、第2巻 (パキスタン)では、M-1175AからM-1179A。


(珍獣3)ラクダとウマを合成した動物。パルポラの第2巻 (パキスタン)のM-1534A。


 これらの動物には、それぞれ異なる性格の記述やメッセージに対応し、象徴性があるに違いない。特に珍獣には、特異なメッセ―ジがあるものと想像される。従って、記述を補完するものとして、それぞれの漫画に着目する事とした。


(注1)G.Ludvik, J.Kenoyer, M.PieniaZekの「New evidence for interregional interaction in the 3rd millenium BCE Aegean: Indus-style carnelian beads at Aegina-Kolonna, Greece」(OpenEdition Journals)


(注2)ネット掲載の論文としてIravatham Mahadevanの 「Parpola and the Indus script」。またRajesh P.N. Rao (University of Washington)の「Probabilistic Analysis of an Ancient Undeciphered Script」。


(注3)大野晋「日本語とタミル語」(新潮社。1981年);「弥生文明と南インド」(岩波書店。2004年第1刷);「日本語の起源 新版」(岩波新書。2020年)。


(注4)Peter Reveszの「Data Science Applied to Discover Ancient Minoan-Indus Valley Trade Routes Implied by Common Weight Measures」;「Minoan-Indus Valley trade relations」(YouTube)。


(注5)古代オリエント博物館・大阪府立弥生文化博物館「世界の文字の物語」(2017年)より。


(注6)A.パルポラ「Vac as Goddess of Victory in the Veda and her relation to Durga」(京都大学学術情報リポジトリ「紅」。2000年)。

(参考文献)


 上杉彰紀「インダス文明ガイドブック」(新泉社。2023年)

 大野晋「日本語とタミル語」(新潮社。1981年);「弥生文明と南インド」(岩波書店。2004年第1刷);「日本語の起源 新版」(岩波新書。1994年第1刷、2020年第26刷)

 後藤健「メソポタミアとインダスのあいだ」(筑摩書房。2015年)

 戸部実之「タイ山岳民俗言語入門」(泰流社。1994年)

 鳥越憲三郎「原弥生人の渡来」(角川書店。1982年);「倭人・倭国伝全釈」(角川ソフィア文庫。2020年)

 中村禎里「狐の日本史 改定新版」(戎光祥出版。2017年)

 中村元「古代インド」(講談社学術文庫。2004年)

 森本達雄「ヒンドゥー教 ―インドの聖と俗」(中公新書。2003年)


(インダスの印章)


 梅棹忠夫総合監修「世界四大文明 インダス文明展」(2000‐2001年)(図録)

 長田俊樹「インダス文明の謎」(京都大学学術出版会。2013年初版)

 菊池徹夫「文字の考古学I」(同成社。2003年初版)

 清岡央「オリエント古代の探求」(中央公論新社。2021年)

 近藤英夫「四大文明 (インダス)」(NHK出版。2000年);「インダスの考古学」(同成社。2011年)

 高津春繁、関根正雄「古代文字の解読」(岩波書店。1964年)


(ネットより)


 I.マハデーヴァン(Iravatham Mahadevan)「The Indus Script: Texts, Concordance and Tables」

 A.パルポラ「Corpus of Indus Seals and Inscriptions」

 R.P.N.ラオ「Probabilistic Analysis of an Ancient Undeciphered Script」

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― 新着の感想 ―
[良い点] このような学術的にレベルの高い作品がこのサイトで見られるとは驚きです。特に日本語との共通点など勉強になりました
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