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第4話
停電だ。
「みんな動かないで! 暗闇に乗じて、犯人が動き出す可能性が……」
そう言った直後、脇腹に焼けつくような痛み。ナイフで刺されたのだ。
しかも一箇所だけでなく、続いて胸や手首、首筋など合わせて七箇所。出血しやすい部位が的確に狙われていた。
失われる意識の中、聡一郎の頭脳は最後の冴えを見せる。
本当に事件は起きたが、今回の自分は、探偵というより被害者になってしまった。
刺し傷の数とこの場の人数が一致するのは、偶然ではなく必然だろう。推理小説で使われる、古典的なパターンの一つだ。「この中に一人」どころか、自分以外の全員が犯人だったのだ。
ならば動機は、先ほど思い浮かべたように……。
そこまで考えた時点で、彼は力尽きた。
今度こそ事件を未然に防ぐ。リベンジを期すつもりだった金谷川聡一郎は、こうして彼自身がリベンジの対象となり、死んでしまうのだった。
(「名探偵のリベンジ」完)