第1話
「この中に一人、犯人がいます」
ぽりぽりと頭をかきながら、金谷川聡一郎が宣言した瞬間。
ちょうど窓の外で雷光が走り、室内の面々の顔を照らし出す。
まるで申し合わせたかのように、彼らは皆一様に、唖然とした表情を浮かべていた。
友人の警部に協力して数々の難事件を解決してきた聡一郎は、世間の人々から名探偵と呼ばれている。ただし一部で『死神』と揶揄されているのを、きちんと彼は知っていた。
彼が関わる事件では、たくさん人が死ぬからだ。連続殺人がある程度進行するまでは、解決に必要な手がかりが揃わないからだ。
彼自身これでは名探偵失格だと思う。事件を防いでこそ、本当の名探偵なのだ。
だから胸の内には「いつか必ず雪辱を果たす!」という気持ちがあり……。
今回この別荘に招待されて、三日目の夜。
大雨による土砂崩れで道路が分断され、陸の孤島と化したところで、胸騒ぎがしたのだ。
いかにも事件が発生しそうなクローズドサークルではないか、と。
そして聡一郎は、食後の団欒で全員が応接室に集まる中、冒頭のセリフ「この中に一人、犯人がいます」を口にしたのだった。