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「へー」
セオが感心した。
ギリアム商店の、いつもの部屋。
ギリアムとセオが向かい合い、テーブルを挟んで座っている。
「やっぱり、裏があったんだ」
「ああ。まったく迷惑な爺さんだ。自分の欲に殺されちまった」
「ふーん」
そこでセオがハッとなった。
「じゃあ、首飾りはギリアムが持ってるの!? めちゃくちゃ幸運になれるやつ!」
「いや」
ギリアムが首を横に振る。
「マーリンに引き取ってもらった。あいつの住んでる塔に封印してくれる」
「えー、何で? もったいなくない?」
「これでいい。ああいうアイテムはやばすぎる。実際、4人死んでるしな。俺たちが知らない犠牲者も他に居るかもしれない」
「ちぇー」
セオが口を尖らせる。
と、ドアが勢い良く開いた。
「ギリアム!」
ミリーが飛び込んでくる。
セオに軽く挨拶し、ギリアムの隣にドカッと座った。
「お父さんがね!」
「あーーー! そうだ!」
ギリアムが、ガバッと立ち上がる。
行商用の鞄をそそくさと肩にかけた。
「ちょっと! どこ行くのよ!?」
ミリーが目くじらを立てる。
「商売だよ! 今回は少し遠くまで足を延ばそうと思う」
「ええー!? やだ、寂しい!」
ミリーの半べそを見たセオが笑う。
「子供じゃん!」
「うるさい! あんたこそ子供でしょ! 黙ってなさい!」
「うへ! 都合の良い時だけ、子供扱い!」
セオが肩をすくめる。
「それじゃな。今回は2ヶ月くらいだ」
「ええー!?」
ミリーが眼を丸くする。
ドアに向かうギリアムに、後ろから飛びかかった。
「待って待って、待ってよー!」
「いや、仕事だからしょうがないだろ?」
ギリアムが頭を掻いた。
「そだ!」
ミリーが急に何かを思い付く。
「私もいっしょに行く!」
「「ええ!?」」
これにはギリアムとセオが同時に驚いた。
「じょ、冗談はやめて大人しく待っててくれよ」
「いやー! いやいやいや! もう決めたから! 絶対についていく!」
全力でまとわりつくミリーに、ギリアムが悲鳴をあげる。
「セ、セオ! 何とかしてくれ!」
「無理だよ…ミリー姉ちゃん、言い出したら聞かないもん」
「ぐあー! 最悪だー!」
「何よ! まさか…旅先で浮気しようと思ってるんじゃないでしょうね!?」
「バ、バカ言うな!」
「じゃあ、決定ー」
「はあ…勘弁してくれー!」
穏やかな春の陽射しの午後。
ギリアム商店は、いつになく騒がしかった。
おわり
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
大感謝です(☆∀☆)
ご協力いただきました平川さん、本当にありがとうございました(*^^*)