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「俺を誰だと思ってるんだ」


 そう言ったギリアムの顔を老人は、火の出るような激しい眼差しでにらみつけた。


「わしは金を払ったんじゃぞ…」


 老人が懐から金貨の袋を取り出し、ギリアムの前に置く。


「ほれ、残りの金もここにある。そういう約束じゃろうが?」


「おいおい、隠し事はなしだぜ、爺さん」


 ギリアムがシニカルに笑う。


「特に人の命に関わることはな」


「ぬ…」


 老人の顔が途端にひきつった。


「俺が爺さんに、このネックレスを渡したら…なあ?」


「………」


 老人は残り少ない歯を食い縛り、無言でギリアムを凝視する。


 その視線は時折、ギリアムの左手に握られた首飾りへと泳いだ。


 すると老人の瞳は普段の好好爺然とした雰囲気とはかけ離れた、ドロドロの欲望に渦巻く妖しい光を放つのだった。


「物はすぐに見つかった。うちには優秀なスタッフが居るからな」


「………」


「ついでに知り合いの魔法専門家に、この首飾りを見せた。全部で5つあるらしいな」


「ぐ………」


 明らかに老人が怯んだ。


 かさかさの肌に、じんわりと汗が浮き上がる。


「古の魔法使いが作ったアーティファクト。5つ揃えれば幸運に恵まれる。どでかいツキと言うよりは、少しずつ運が底上げされるらしい。小さい幸運でも積み重なれば馬鹿にならないよな」


「………」


「爺さん、あんたは元々ひとつ持ってたんだろ? 代々、引き継いできたってところか? ネックレスの効果も知ってるはずだ」


「………」


「だが、集め始めたのは最近。何故だ?」


 老人は答えない。


 ギリアムの顔と左手の首飾りを交互に見つめる。


「集められなかったんだよな? あんたはこの首飾りの恩恵といっしょに、呪いについても聞いていた。そうだろ?」


「し…知らん」


 絞り出すような低い声と共に、老人が首を横に振った。


「わしは何も知らん…」


「いいや、あんたは知ってる。これを作った魔法使いは相当、性格のねじ曲がった奴だ。ネックレスを各々違う場所に隠して、集める者に呪いがかかるように仕組んだ」


「………」


「ひとつ持っている分には何も起こらない。普通のアクセサリーさ」


「………」


「ところがひとつの持ち主が、もうひとつを取ろうとすると」


「………」


「そいつの身体が………ポンッ」


 ギリアムが右手の指をパッと広げる。


「この世から消えちまう。はい、おさらばよ」


「ぬぅぅぅ………」


「ネックレスは5本全部を同じ人間が持たなきゃ、効果を発揮しない。絶対に揃わない寸法だ。とんだ意地悪アイテムさ。だからあんたも今まで集めなかった。だろ?」


「………」


「ところが最近になって、別の新しいアイテムが手に入った」


 ギリアムの眼差しが、老人の左手の人差し指にはめられた地味な指輪に向く。


 それに気付いた老人が、慌てて右手で指輪を隠した。


「今さら遅いぜ。何でも、呪いを反転して近くの人間に移すアイテムがあるんだってな。連続は無理だが、1回ずつなら100%返せる」


「………」


「あんたはそのアイテムを手に入れた。そして、家の物置にしまっていた首飾りを久しぶりに思い出した」


「………」


「集めたくなったんだろ? 自分が消えるのは嫌だが、他人が消えるのは知ったこっちゃない。爺さん、あんたはド悪党だな」


「な…何を言っておるんじゃ! 何のことか、さっぱり分からんわ!」


 老人が憤怒に顔をひきつらせる。


 歯の少ない口から、唾が飛んだ。


「もう三文芝居はよせよ。すっかりネタは上がってるんだぜ。マジックアイテムを調べた俺は、次に商人たちの噂を集めた。首飾りを見つけたスタッフが、すぐに有用な情報を見つけてくれたよ」


「………」


「このところ、カサンドラ付近の街で不思議な事件が3件起こってる」


「………」




























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