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ムギンのおやつ

 投げ独楽の賭博は大いに盛り上がり、数回やったが私が全戦全勝で終わることができた。途中「おかしい」と言う者もいたが、「ただ頑張っただけなのに……」と泣き真似をするとあたふたとし始め謝られてしまった。イカサマはしていないが、逆にごめんなさいと思ったのは内緒である。

 盛り上がりすぎて終わりが見えなくなりそうだったので、次回からは時間を決めてやるようにルール変更をし、ペーターさんに「これはいけない遊びだが刺激的で楽しい」と良いのか悪いのか分からない感想もいただいた。


 女性や子どもの往来も多くなってきたのでそれとなく解散となり、そのままぶらぶらとお店が並んでいるエリアを散歩していると大声で私の名を呼ぶ人がいた。


「カレンちゃん!何してるんだい?皆さんもおいでよ!」


 声を聞いただけで分かる声の主はカーラさんだ。カーラさんの店を見れば、大きく手を振ったり手招きしたりと違う意味で大忙しだ。私たちは笑いながらカーラさんのお店へと向かう。


「「おはようございます」」


 私とじいやが挨拶をすると、イチビたちは丁寧に頭を下げている。カーラさんも挨拶と礼を返すといつもの調子で話し始める。


「あんたたち朝ご飯は食べたのかい?」


「うん。ブルーノさんが作ってくれたわ」


 そう答えるとカーラさんは袋に手を入れ何やらゴソゴソとしている。何かを探していたカーラさんは「ほら」と私の手に拳ほどの大きさの物を乗せ、じいやたちにも順番に手渡している。まじまじとそれを見れば薄茶色をしたカップケーキのようなものだった。


「食後のおやつだよ」


「いやだわカーラさんったら。食後すぐにおやつなんて食べないでしょうに」


 食欲旺盛なカーラさんを笑いながらも私たちも一口食べてみた。見た目はカップケーキのようだが表面は硬く、ガリッとした食感でラスクのようだ。そして中はスカスカで、ふわっともモチっともしておらず物足りない印象だ。何よりも甘さは感じず、逆に酸味を感じてしまう。


「美味しいですね」


 オヒシバがそう言うとカーラさんは「ブレッドって言うこの国の南部のおやつだよ」と笑顔で言う。ブレッドってことはこれはパンなのかしら?


「カーラさん、これはムギンから作られているの?」


 行儀が悪いが食べながら聞くとカーラさんは答えてくれる。


「さすがカレンちゃんだねぇ。食べただけで分かるのかい?そうだよムギンで作ってるのさ。おやつとして、薄く形を変えたら食事として食べるんだよ」


 カーラさんには悪いが私の中でこれはパンとして認められない。かと言ってカーラさんの厚意を無下にはしたくなく、機嫌も損ねたくないので言葉を選んで聞いてみることにした。


「今私たちの国でもムギンをたくさん作るようにしているのよ。帰ったらこれを作ってみるわ。そう言えばムギンに種類があったわよね?」


 そう言いながら売り物を見るとカーラさんも仕事モードになる。


「そうだね、このブレッドはこのムギンを使っているよ。この町ではほとんどこのムギンを育てているね。カレンちゃんが買ったのはこのムギンさ。こっちのムギンはあまり育てないんだよねぇ」


 そう言いながら種を見せてくれる。さっきのブレッドは多分薄力粉に近い。それよりも硬い種を以前買ったので、ヒーズル王国で作られているのはきっと中力粉に近いのだと思う。あまり育てないと言う種は他よりも大きく、そして硬い。きっとこれが硬質小麦でパンに適している。


「今ね、畑の拡大を頑張っているの。いろんな物を植えたいから、この二種類のムギンも買おうかしら。民たちも畑仕事が楽しいと言ってくれるのよ」


「それは良いことだねぇ!そうだね、いろんな物を植えて違いを楽しむのも良いのかもしれないね!」


 今日は朝から打算的な行動ばかりしている自分に少し嫌気が差すが、こればかりは本当のことも言えず仕方がないと言い聞かせその場で二種類のムギンの種を購入した。


「そうだ!カレンちゃん!」


 突如大声を出され、ほんの少しだけ悪いことをしている気分だった私はビクリと肩が跳ね上がる。


「あの履物だけどね、帰ってから寝るまで履いていたんだけど素足で歩いているようで気持ち良かったよ!店に来る途中で立ち話をしたんだけどね、昨日これを買った人たちは噂話をしていたよ」


「え?」


「それを聞いた買いそびれた人たちがね、ジョーイの店に走って行ったよ!もう売り切れてるんじゃないのかい?行ってみな」


 それを聞いてじいやたちを見ると微笑んで頷いている。


「ありがとう!カーラさん!ちょっと行ってみるわ!」


 まだ食べている途中だったブレッドを口に放り込み、私はバタバタと走ってジョーイさんの店へと向かった。

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