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作戦会議

 今まで寝たきりだったのに、急に動いてしまって立っているのが辛くなり、私は家の中に戻って横になった。

 とは言っても眠る訳ではなく、言葉通りただ横になり、周りには私の家族とじいやがいる。


 じいやは毛が一本も生えていない、見事なツルツルの頭を両手で抱えながら「姫様! 姫様!」と心配そうにしている。


「ふふっ。じいやの頭はこの大地のようね。何も生えていない」


「なんですとー!?」


 うん、じいやはこんな感じで、騒がしいほうがいい。毛が無いのがそんなにいけないことかと騒ぐじいやを見ているうちに、少し元気が出て来て私はお母様の手を借りベッド……というよりは、寝台に腰掛けた。


「考えることはたくさんあるんだけど、正直何から手を付けたらいいか分からないの……」


一つ溜め息を吐きポツリと言うと、スイレンが私の横に座り手を握った。その顔は心配そうで、そして不安げだ。


「カレン、僕に出来ることなら何でも言って? カレンは元々大雑把だから、カレンの考えを細かく考えたり伝えたりするのは得意だから!」


 可愛くて頼りになる弟が勇気を振り絞ってそう言えば、お父様もお母様もしゃがみ、私の手を握る。


「そうだぞカレン。力仕事なら任せろ。じいやも力仕事が得意だ」


「私には力も知恵もないけれど、細かな作業なら誰にも負けないわ。私のことも頼ってちょうだい」


 うん、私には力強い味方である家族とじいやがいる。そして私たちを生かそうと、長年我慢を強いられている国民がいる。その民たちの為に頑張ろう。

 自分に喝を入れるよう一つ頷き、私は口を開いた。


「まず……水はそれなりに近くにあるのよね? 綺麗な川なんでしょ?」


 じいやが雄大に流れてるってさっき言ってたよね。カレンの今までの記憶にある限り、飲んでいた飲み水は透明だった。


「そうだな。私もよく行っているが、岩に囲まれているおかげか、この大地が流れ込んでいないようでとても澄んでいる」


 お父様はそう言うが、その内容に驚いた。


「お父様いつの間に行ってたの!? 知らなかったわ! というか、生水はあまりそのまま飲んで欲しくないのだけれど……煮沸したりしているの?」


すると今度はお母様が話し始めた。


「森での生活では、岩から染み出した水を貯めて皆がそのまま飲んでいたけれど……今も昔も何かがあったことはないわ。それに煮沸するにも、もう燃やす物が……」


あぁ……そこまで緊迫しているんだ……。思った以上だ……。


「そうだ! この家は? 窓はないけど、木で作られているよね?」


 すると今度はじいやが口を開く。


「お二人に、意図的に外を見せない造りで建てたのでございます。この場所に来るまで木は生えておりませんでしたが、この周辺にはポツポツと木が生えておりました。その木を加工し、この家を建てたのでございます」


「待ってじいや。まさかその木も……」


 大体のことが想像でき、青ざめながらじいやに聞き返した。


「はい……伐採し尽くしました。最初はその木で民たちも自分の家を建てました。そしてこの周辺にわずかに生えている草を煮て食べたりもしていましたが、次第に焚き付けに使う物も無くなり、民たちは家を壊して火を起こしていました」


 あまりの内容に絶句してしまう。


「今では民たちの家は、屋根だけを残しております。そして燃やす物が無くなると、生で草を食べるようになり、いつしか草も生えて来なくなったのです。

 このままではいけないと、私は数年前にコッソリとシャイアーク国に行き、生で食べられると聞いた、あの畑に生えるトウモロコーンを買ったのでございます」


 想像以上の緊迫した状況に、私は両手で頭を抱えてしまった。私もスイレンもこの家の中しか知らなかったので、そんなことになっているなんて分からなかった。

 なのに民たちは『救世主』を心の頼りにし、今まで辛い生活をしてきたんだ。全てを知った今、悔しさでやり場のない怒りが込み上げる。


「待って……買ったということは、通貨があるのね……?」


「あるにはあるが……森の民はお互いの村同士や、里にある町と物々交換で生活をしていたのだ。基本的に通過を必要としなかったのだ。今あるのは、じいやが城で働いていた時の貯金だけだな」


 お父様の発言に目を丸くし、口は半開きになってしまう。さすがの私も、まさかの物々交換には驚いてしまった。


「城下町で買い物でもしようと、こっそりと持って来たのが幸いでしたな」


 そう言ってじいやは笑うけど、じいやの大切な老後の資金が……。いや、既に老人ではあるんだけれど……。

 ちなみに額を聞いても、日本円でも地球の通貨でもないので意味が分からず、詳しく聞くともうほとんど残っていないとのことだった。


「……じいや、申し訳ないけど、借りることになると思う……」


 困り果てた私は眉をハの字にして、溜め息混じりにじいやに告げた。


「貸すなど! この国の為に全て使っていただいて構いません!」


 じいやはそう言うけど、じいやの老後の為に気合を入れて頑張るよ。見た目だけで言えば、じいやはもうのんびりと老後の生活をしていても不思議じゃない。

 そう思うと力が湧いてきて、座って話している場合じゃないとスイレンの肩を借り、止めるみんなを振り切ってまた私は外に出た。

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