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カレンのリベンジ

 昼食を食べたあと、カゴに入れ干しているペパーを混ぜ均等に日が当たるようにする。その作業をしていると「パサッ」という音が聞こえ振り向くと、地面にはデーツの葉が落ちていた。デーツの木を見上げると他にも落ちそうで落ちない葉があり、それが気になった私は木に登りその葉を落とす。

 木の上から周りを見渡せば、あんなにも赤い土と砂だけだった大地は広場を中心に緑が広がっている。ナーの花も広範囲に増え、美しい緑と黄色のコントラストを描いている。

 その様子を見ていたと思われるシャガとハマスゲが慌てて走って来るのが見えた。


「ひひ姫様!危ないです!」


 珍しく慌てた様子のシャガに木の上から声をかける。


「みんな心配しすぎよ。私は木登りも得意なのよ?」


 そして地上に降りたあと、隣のデーツの木にも登りプラプラと落ちそうで落ちない葉を落とす。シャガとハマスゲは木の下で不安そうに私を見ている。何事もなく葉を落とした私が地上に降りると、二人はホッと胸を撫で下ろす。


「その葉で何かをするのですか?」


「特に何かをするつもりではなかったけれど」


 そう呟きながら葉を掴む。そういえばヤシ科の葉は繊維が豊富だったと思い出す。


「そうだわ!作って欲しい物があるの!」


 二人に木片四枚を使って取り外しの容易な木枠を作ってもらう。二つの木枠を手に入れた私はバケツとデーツの葉を持ち意気揚々と出かける準備をする。


「二人ともありがとう。じゃあ行ってくるわ」


「じゃあって……どこへ行かれるのですか……?」


「川よ」


 普通にそう答えると二人は「危ない」だとか「一人ではダメです」とかワーワーと騒ぐ。結局二人は護衛と手伝いを兼ねて同行することとなった。念の為にと荷車に使わないであろう道具まで積み込んでいるシャガたちだが、その間に思い付いたことを伝えに畑にエビネを探しに行く。エビネの名を呼んでいると畑ではなくまだ広場にいたらしく、後ろから声をかけられた。


「姫様どうしました?」


「エビネ、広場にいたのに気付かなくてごめんなさい。あのね広場の東側にも畑を作って欲しいの。そうね……すき込みだけで良いと思うわ」


 そう伝えると東側を一度見たエビネは「やり甲斐がありますね!」と力強く答えてくれた。大変な作業ばかりさせて申し訳ないと謝ると、何も無かった大地に畑を作るのが楽しいとまで言ってくれこちらの肩の力が抜ける。

 エビネたちには畑作業を任せ、イチビとオヒシバにはチョーマの採取の続きを頼み私たちは川へと向かって出発した。


 最初の頃はサラサラの砂や土に足をとられ歩くのが大変だったけれど、今ではクローバーが広がりだいぶ歩きやすくなった。その分スピードも上がる。石切り場も過ぎしばし歩くとクローバーもまばらになり、風に運ばれる砂と繁殖の攻防戦を繰り広げていた。

 そのまま川へ向かって西に歩いて行くと水路建設現場に到着する。


「カレンではないか。どうかしたのか?」


 ちょうど休憩をしていたお父様が私に気付き立ち上がる。


「休んでいてお父様。川に用事があるのよ。それにしても随分と作業が進んだのね」


 数日ぶりに現場を見ると、川の方向からずらっと並んだ石管が続いている。ぱっと見た限りでは水平に並べられているように見えるが、スイレンが溝に降りて道具を使って傾斜を調べたりしているので、間違いなく緩やかな傾斜がつけられているのだ。ふと顔を上げたスイレンと目が合う。


「あれ?カレン?」


「お疲れ様。私たちは川に行くの。スイレンも無理しないでね。みんなもよ」


「うん。カレンも危ないことをしないでね」


 お父様やスイレン、作業をしている者に声をかけ川へ向かう。そこまで離れていない場所にいたお母様たちも私に気付き、こちらに注目している。


「お母様お疲れ様」


「お疲れ様。何かをするの?」


 シャガたちが引いている荷車を見てお母様に問いかけられた。


「うん。みんなの邪魔にならないように少し離れた場所で作業をするわ」


 そして樹皮を煮ているお母様たちや石を細工しているタデたちから距離を取って作業を開始する。


「……姫様、何か手伝えることはありますか?」


 ハマスゲに問われ地面を掘ってもらうように頼み、私は両手にバケツを持って川岸へと向かう。バケツに水を汲んでいるとなんとなく足元が気になり、小石や砂利を寄せ近くにあった平たい石で掘ってみる。少し掘ると灰色っぽい粘土が出てきたので、もう一つのバケツに詰め込みハマスゲたちのところに戻った。


「良い感じに粘土層が出てるわね、ありがとう。作業しやすいように広く掘ってもらっても良い?」


 すると二人がかりで砂を寄せてくれ、私がそこに降りやすいようになだらかにもしてくれた。刃物を借り、まずはデーツの葉を適当に刻んでいると二人に問いかけられた。


「……未だに何をしているのか分からないのですが聞いてもよろしいですか?」


「あら?言わなかったかしら?レンガを作っているのよ」


 その言葉に二人は派手に驚く。そして二人も急いでデーツの葉を刻むのを手伝ってくれる。


「そこまで細かくしなくても大丈夫よ」


 粘土層を掘り、そこに川岸の粘土も入れデーツの葉を混ぜる。そこにバケツの水を入れ粘土を捏ねる。デーツの葉は繊維質でひび割れ防止剤になる。日本であれば稲藁を使えばいいがここには無い。そして麦藁だと稲藁に比べて強度は低いが美しいレンガになる。だけど私はあえて思い入れのあるデーツの葉を使うことにしたのだ。

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