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じいやのうっかり

みんながおとなしくなっている間に食べようと思ったものの、十日も寝ていて胃が小さくなったのか、はたまたその甘さと食感のせいか五つも食べるとお腹がいっぱいになった。


「ごちそうさま」


そう言って食べるのを止めると、アイコンタクトをとりまくっていた大人たちが動きを止めた。代表してお父様が一歩前に出て、そして口を開いた。


「カレン。今まで黙っていたがお前たちが産まれたその日、占いババは『この子たちがある程度大きくなった時に私たちの救世主となるだろう。だがその時には女の子のほうはこの子であって、この子ではない』と言ったんだ。私たちは意味が分からなかった。何か関係があるのか!?」


鬼気迫る表情で問い詰めるお父様が怖くて、思わず寝床を後退る。本当のことを言おうか……けど信じてもらえるだろうか? 考えに考えて……もし信じてもらえなかったら、頭を打ったせいで記憶が混濁しているとでも言おう。うん、言っちゃおう。


「えっと……まず、ここはどこ? 日本……ではない……よね……?」


「何を!? ニホンとは何だ!? ……ここは『ヒーズル王国』だぞ!? やはりカレンであってカレンではないのか!?」


お父様は感情が追いつかないのか、今にも暴れ出しそうになっている。その後ろではお母様が両手で口元を押さえ、涙ぐみ取り乱しそうになっている。そしてスイレンは、心配そうにそのお母様の背中をさすっている。


「違うの! カレンには間違い無いの! じゃなきゃスイレンの名前なんて口から出て来ないでしょ? ……えっと、何て言ったら良いのか……私は前世で日本という国で産まれた普通の女子で……頭を打った衝撃でそれを思い出したみたいなんだけど、今はカレンの記憶よりもそっちの記憶のほうが鮮明……かな」


勇気を出して恐る恐る言ってみると、全員が「前世!?」とか「普段と言葉遣いが違う!」とか「確かにスイレンを覚えている……」などと議論が続いている。


「あの、占いおババさん? が何か言ったようだけど、私は本当に普通すぎる一般人だったから、その救世主ってのにはなれないと思います……」


素直にそう言うと、辺りは静まり返る。今度はじいやがゆっくりと話し始めた。


「この実が成った木ですが、私たち森の民は見たこともない木でありました。長年花も咲かせたことのない木でありましたが、姫様がお倒れになったその日に急に花が咲いたのでございます。そして考えられない速度で実を付け熟したのです」


 じいやはどこか遠くを見るようにしながら、昔話でもするかのように話を続けた。


「風のいたずらで一房が地面に落ち、飢えで苦しんでいた民が空腹に負け食べたのでございます。基本的に私共は知らない物を口にすることはございません。ですが、あまりにも美味そうに食べるそれを見て私たちも口にしたところ、毒も無くあまりの甘美さに感動致しました。そして私たちは『神の恵み』と名付けたのでございます。……ですが姫様はそれを知っていた……」


 話し終わったじいやの視線が徐々に私に向き、そして目と目が合う。


「えっと……私の住んでいた国に生えている木ではないんだけど、乾燥した地域に生えるヤシって木があって……そのヤシの中のナツメヤシって種類のやつで……あぁ上手く説明出来ない! ……それよりも逆に聞いていい? 民が飢えで苦しんでいるって、どういうこと?」


上手く説明の出来ない私がこちらから逆に質問をすると、じいやもお父様もお母様も「しまった!」という顔をした。そしてそっと私から目をそらす。


 ここの場所のことを、さっき王国って言ったはずだ。なんで王国の民が空腹で苦しんでるの? 空腹って……とっても辛いんだよ? 私はそれを誰よりも知っている。だからこそ私は強気で聞いてみたんだ。

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