森と土作り開始
翌日目を覚ますと夜明けはとうに過ぎていた。しかも私はお父様に運んでもらったようで、久しぶりの自分の寝床で目を覚ました。スイレンも私の横に寝ていたようで、ちょうど目を覚ましたスイレンと目が合う。
「……スイレン……大変だわ……」
「……うん……夜明けからだいぶ経っているよね……」
「……それだけじゃないわ……」
「……うん、僕も……」
昨日張り切って作業をしたおかげで私たちは全身が筋肉痛で動くこともままならない。二人とも起き上がりたくても痛みで起き上がれず、それがおかしくて笑うとまた全身に痛みが走る。困り果てているとお母様が様子を見に来てくれた。
「あら?目を覚ましたのね」
「……お母様……」
「……僕たち身体中が痛くて……お父様を呼んで……」
状況を理解したお母様は珍しく声を出して笑い、涙を拭いながらお父様を呼びに行ってくれた。すぐに来てくれたお父様も私たちを見て笑い「今日は寝ているか?」と言ってくれたけど、やることはまだまだある私は「起こして……まず外へ……」と言うと、スイレンも気力を振り絞り外へ行くと言う。
広場でスイレンをお母様の横に座らせ、ゆっくりと身体を動かしたほうが早く痛みがひくと言うと絶望的な顔をしていた。そんな私はお父様にお姫様抱っこをしてもらいながら畑の様子を見に行く。予想に反して芽は出ていなかった。
「本来なら夜明けと夕方に水やりをするのだけれど、水に余裕があるのなら今からでもやりましょう」
それを聞いたお父様は動ける人を呼び、少しずつ畑に水を撒いてくれた。湿原の土が入った樽はとても大きくて、今日からはこれにも水を汲んで来たと言っていた。昨日まで動けない人がほとんどだったのに、たった数人だけど食べ物を食べたおかげで動ける者が出て来た。回復力も早いのだろう。
私とスイレンが起きたのが昼近くだったので、少し早いけどご飯の時間となった。今日は干し肉と採れたてのトウモロコーンだ。私とスイレンは食糧を口に持っていくのすら精一杯で、終始和やかな食事の時間だった。
「そうだ。今日食べたトウモロコーンは、使用する葉っぱを取ったら茎と根を細かく刻んでほしいの。……私は今日できそうにないから」
苦笑いでそう言うと今日動けるようになった者がやってくれることになり、そちらを任せて森作り……とは言っても動けそうもないので指示を飛ばす為に広場の北側へ連れて行ってもらう。
「みんなも疲れているでしょうにごめんなさい。まずはシャイアーク国から取ってきた土を薄く地面に撒いて」
一緒に旅したじいやたちは荷物の中身が分かるので、テキパキと作業をしてくれる。撒いた土の上に大きめの丸太や切り株を積んでもらい、隙間に細かく切った枝などを差し込んで安定感を出し崩れないようにする。さらに隙間に取ってきた土を埋め込み、ほとんど隙間がないようにする。……そろそろ動かないと痛みが長引くわね……。みんなが止める中、私は少しずつ動き出す。
「水はまだ余っている?」
そう聞くと余っていると言うので、作業は半分に別れて一組は新たに水を汲みに行くことになった。
「カーレーンー!」
遠くからスイレンの声が聞こえ、なんとかスイレンの場所に歩いて行くとスイレンは川から水路予定地までの距離などを調べたいと言う。
「大丈夫なの?」
「……荷車にさえ乗ってたら……チョークンならなんとか持てるし……」
スイレンはスイレンなりに必死なので、水汲みのじいやとタデにスイレンを任せることにした。私はさっきの場所に戻り、お父様とヒイラギに余っている土を自分の目の前に全部山にして欲しいと伝える。そしてそれに少しずつ水をかけて欲しいと言い、私は泥を作り始める。この大地の土と違い、シャイアーク国の土は水を含むとちゃんと水を蓄え程よい硬さの泥となる。あまり水っぽくならないように水と土を混ぜ合わせ、持ちやすいように団子にする。
「お父様、ヒイラギ、手が汚れちゃうけど手伝って」
二人に泥団子を持たせ、さっき作った丸太と土の塊に泥団子を貼り付けてコーティング作業をする。コツは横から見たときに上底が短く下底が長い綺麗な台形になるように泥を張り付ける。これで木のベッドが完成!
「あと少しよ」
泥で固め終わると地面に苗木や木の芽を植えていく。苗木の場合は台形の辺に立てかけるように、まるでベッドに寝かしつけるようにして、倒れないように枝を絡ませたりする。
「完成よ!信じられないでしょうけど、これが森の再生の第一歩よ。本来ならもう水は与えなくて良いのだけど、たまに見てあまり乾いているようだったら少し水をやりましょう」
「カレンよ、疑っている訳ではないが本当にこれが森になるのか?」
「今作った部分は確実にね。だからこの木が成長したら伐採して、同じことを繰り返せばいいのよ。時間はかかるけどね」
まだ半信半疑のお父様とヒイラギは少し微妙な顔をしつつも頷いてくれた。
「忘れてた!これも植えなきゃ!」
私はだいぶ動けるようになり、それでもまだゆっくりとした動きで荷物の場所に行く。クローバーを手にし、木のベッドの周りに植えるというよりは置いていく。繁殖力の強い植物なのでこれでも大丈夫だろう。
「食べられるのか?」
「ううん。食べる訳ではないんだけど、土を作ってくれるし将来的に家畜を飼いたいと思っているからその餌になるの。今のうちに増やしたくて。ただどこまでも増えちゃうからたまに抜かなきゃいけなくなるかも」
そう言うとお父様は感心してくれた。そうそう菜の花ことナーも植えないと。そう思い荷物の袋から取り出す。花はしおれてしまっているけど根を見る限りまだ大丈夫だろう。
「カ……カレン?それはナーでは……まさか植えるのか……?」
「うん!黄色のお花でいっぱいにするの!」
「植えるのは構わないが、出来るだけ遠くに植えてくれ!あと北西には生えないようにしてくれ!」
じいやも言っていたけど、本当にこの花の匂いが嫌いなのね。でもどうして北西限定?と思っていると察したお父様が口を開く。
「墓があるのだ。死者も死んでまでその匂いを嗅ぎたくないだろう」
お父様はそう言った。そうか、亡くなった人たちはどうしたのかと思っていたけど、ちゃんとお墓があるのね。もう少し畑が実り良くなったらお供え物を持ってお参りに行こう。




