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作戦会議3

 お父様とスイレンが川で水を汲んでいる間に、私とじいやはクレソンもどきを収穫し、あまり水に浸かっていないクレソン周辺の湿った土も集めて持ってきた。

 たったこれっぽっちで劇的に何かが変わる訳じゃないけど、無いよりはマシだし小さなことからコツコツと精神だ。


 王国に帰るとちょうど食事時だったので、子供にはまだたくさん実っているデーツを、大人にはクレソンもどきを渡した。

 やはり大人たちは知らない物を食べるのに抵抗があったようだけど、特に大人の男性はクレソンもどきを口にすると気に入ってくれたようで嬉しかった。

 とはいえ、水草だけでお腹が膨れる訳じゃないから、早く食糧問題をなんとかしないといけない。


 私はデーツを食べながらしゃがみ、地面に絵を描く。元々みんなは森の中で暮らしていたので、故郷を思わせる森を再現したい。

 万が一侵略者が来ても、木の上から弓部隊も戦える。なのでこのデーツの木を中心に、国が発展しても建物がたくさん建てられるようある程度広く大地を残し、森を作ってしまおうと思う。まず木さえあれば、ここの人たちは道具を作ってくれるだろうから。


 あと水か……水脈を探せばあるんだろうけど、どう探すべきかも分からないし、仮に見つけたとしても、どれくらい掘れば水が出るのかまでは分からない。

 なので王国の近くまで水を引こうと思う。何気にこれが一番難しいかなぁ……。


「何を考えているの?カレン」


 真剣に考え事をしていると、スイレンに声をかけられた。


「スイレン……。うん、この王国の周りを森にして、この近くまで川の水を引きたいの」


 図面とは言えない、落書きのような地面の絵を見ながら言うとスイレンはとても驚いている。


「そんなこと出来るの!?」


「気合いと根性さえあれば出来るんだけど、私には難しいのよね……知識はあるけど道具もないし……」


 二人でそんなやり取りをしていると、私たちを心配したお父様がやって来たので、スイレンに話したことを伝えてみた。


「考えたこともなかったな……して、道具とは何が必要なのだ?」


 私の話を聞いたお父様は驚きの表情をしている。


「うーん……ただ地面を掘った所へ水を流してもいいんだけど、この土を見る限り染み込んでしまうか土が混ざってしまって、ここまで綺麗な水を引けないと思うの。

 だから管を作って、地面の下を通してこの近くに水路を作りたいの。木の管だと年月が経つと腐りやすいし、ここは岩が多いから石造りなら劣化は遅いし良いと思うんだけど……石を削ったり加工する道具はないでしょ……?」


 また指で地面に絵を描きながら、お父様に分かるように話した。


「あるぞ……いや、正確にはあった、だな。私たちは、全ての道具を木から作っていた訳ではない。時には石造りの物もあったのだ。ただ……食糧を得るために売れそうな物は売ってしまったのだ……」


 お父様の話を聞き、胸が締め付けられる。この国は本当に貧困に苦しんでいるんだわ……。


「……売るって、どこに売ったの?」


「ここから北東に向かうと、シャイアーク国との国境がある。その国境を越えてすぐに、小さな町があるのだ。そこでトウモロコーンを教えてもらい手に入れたのだ」


「じゃあその町に行けば種や苗を買えるのね?」


「そうだな」


 そっか。野菜はそこで手に入るのか。じゃあ行かない訳にはいかないよね。それに道具も買い足さないといけない。あとはアレが手に入れば最高なんだけど……。


「分かったわ。じゃあその町に私が行くわ」


「ななな何だと!? 危険だ!」


 当たり前のように、そしてあっけらかんと話すと、お父様がわーわーと騒ぎだした。そこにじいやがやって来た。


「どうされました?」


「じい! カレンがリトールの町に行くと言うのだ! 止めてくれ!」


「お父様が危険だって言うけど、何かあるの?」


 私とお父様に板挟みとなったじいやは、頭のてっぺんから変な汗をかいている。


「危険はありませんが、行って戻って来るだけで数日はかかりますな……」


「それくらい? なら行くわ」


 平然と行くと言う私に、危険だと騒ぐお父様と、板挟みのじいや。散々三つ巴で騒ぎ、早ければ早いほど国の為になるとお父様を説得し、数人の護衛とじいやがお供に加わるということで、翌日に出発することに決まった。


────


「カレンはすごいね。目が覚めたら別人のようになっちゃった」


 夜、寝床に入った時にスイレンが話しかけて来た。


「別人の記憶が蘇ったんだもの。思い返してみても……ただ生意気で高飛車な小娘だったもんね……。逆に恥ずかしいよ」


「ははは。でもカレンはカレンだよ。僕もカレンと国民の力になりたいな」


「ありがとう。でも今必要なのは土木と……測量が出来る人がいればいいんだけど」


 眠気が襲って来て、私はうつらうつらとし始めた。


「ソクリョウって何?」


「うーん……簡単に言うと、ここと川の位置や高さとかを正確に測る技術かなぁ……私……数字は……苦手で……」


 ここで私は深い眠りについた。そして前世の美樹の時の夢を見る。

 夏の暑い日には、図書館に行って涼みながらたくさんの本を読んだな……懐かしい……。

 その読んだ本の内容が夢で詳細に見ることが出来た。それはスルスルと頭に入って来て、知りたいことは不思議なことにしっかりと記憶することが出来た。

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