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カレンの冒険〜川〜

 お父様が荷車を引き、私たちは荷台に載りながら周囲を見回す。じいやは万が一の為にと、残り少ない弓矢を背負い荷車の後方を歩いている。


 どこまでも赤い土が広がり、岩や岩石の点々としているこの大地は、いつか動画で見た火星のようだと思った。植物はおろか、生き物の気配はまるでない。


 想像していたよりもなだらかな赤い土の上を、王国から見て真西に進む。体感で一時間ほど進むと岩場が見えてきた。


「二人とも、間もなくだ。あの岩の向こうが川だぞ」


 それを聞き私たちは居ても立ってもいられなくなり、お父様たちが止めるのも聞かず荷車から飛び降りた。スイレンの肩を借り川へと向かう。


「すごい……これが川なの? 水がたくさんだよ!」


 スイレンは初めて見る川に大興奮だ。スイレンが岩場から川に落ちないように、手を繋ぎながら周囲を観察する。

 子供でも難なく降りられる岩場を見つけた。川岸までは砂利や石が敷き詰められていて、日本でもよく見かける見慣れた川といった感じた。けれど、不自然なほどに植物らしいものはない。


 転ばないように気を付けながら水辺へ向かうと、想像以上に透明で綺麗な川だった。


「カレン! スイレン! 大丈夫か!?」


 お父様たちも合流したところでスイレンを預け、周囲をじっくりと観察することにする。川幅は目測三百〜四百メートル。流れはそれほど早くなく、それでいて水量は充分ある。

 ちょうど私たちがいる場所は緩いカーブの内側になっていて、この砂利などは堆積物のようだ。


「ちょっとあちこち見て来ても大丈夫?」


 そう声をかけると、じいやがおんぶしてくれることになった。下流側より上流側のほうが歩きやすそうだったのでそれを伝え、上流側に向かってみると浅瀬に青々と水草が生えている。


「じいや! 水草! なんで!? でも、お腹が空いても食べなかったのね?」


 驚いて大声を上げてしまった。今の今まで植物は生えていなかったのに、水中にはなぜか水草が生えていたからだ。するとじいやはそれを見つめたまま、ゆっくりと口を開いた。


「私たちは川を見るのが初めてでして……そして先程も申しましたが、基本的に知らない物は口にしませんので……」


 川を見たことがないなんて、村があった場所はよほど標高が高いか、森の奥深くだったのかもしれない。そんなことを考えながら、じいやの背中からその水草を観察してみた。


「……あ! 多分、食べれるやつ!」


 私はじいやの背中から降り、水草を観察する。多少色味は違うが、水辺に生えるクレソンに見える。

 そのままクレソンらしきものをブチブチと千切り、豪快に川の水でジャブジャブ洗ってから口に入れた。

 少し苦くてほんのり辛い味は、限りなく美樹の記憶にあるクレソンと似ている。前世では食べる物が無い時は、よく水辺から採ってきてサラダとして食べていた。


「じいやも、はい! 多分、大人の男の人は好きな味だと思うよ?」


 笑顔でじいやに無理やり手渡すと、じいやはまじまじとそれを見ている。

 本来だったら絶対に食べたくないんだろうけど、私が食べたから仕方なく……といった感じで少量を口に入れた。


「…………これは……なかなか癖になる味ですな!」


 最初は嫌々半分、恐る恐る半分といった感じで噛んでいたけど、じいやはもぐもぐと食べ始めた。


「子どもには向きませんが……しばらく味らしい味を感じたことがなかったので、これは喜ばれると思います!」


 じいやの太鼓判を貰い、嬉しさからガッツポーズをしながらふと横目で川を見ると、水中で何かが動いた。目を凝らして見ると魚の姿があった。


「じいや! 魚もいる! 食べなきゃ! あぁでも火を起こせないものね……しばらくはおあずけか……」


「あ……あれは食べられるのでございますか……?あのような不気味な生物は見たことがなく……初めて川を見つけた時に襲って来ないかと皆で隠れたのですが……」


 じいやは青ざめながらそう言う。


「え!? 見たことも食べたことないの!? シャイアーク国でも……ってあったとしても、知らない物は食べないんだっけ。うん、あれは貴重な食糧になるよ。火に困らなくなったらみんなで食べよう」


 聞けば、城での食事は肉がメインだったらしい。兵たちの体力のためだろう。

 私の見間違いでなければ、アレはニジマスに似ていた。早く塩焼きで食べたい。何としても薪などをを用意しなきゃと思い、薪に使えそうな流木を探してみたけれど、当然のように近くには木もなければ流木もない。


「それにしても、ここまで木も植物も生えていないのも不思議よね……」


「そうでございますな。ですから私たちは呪いの土地と呼んでいたのでございますよ。……姫様! これを!」


 会話をしていたじいやが突然叫び、砂利を指差したので何事かと思ったら、小さな小さな木の芽が砂利の隙間から芽吹いている。


「じいや! よく見つけてくれたわ! でもまだ何の対策もしていない場所に植えられないわ……今日はこのままにして行きましょ……って、なんか……成長早くない?」


 三枚しかなかった葉っぱが、話しているうちにもう四枚目を広げようとしている。


「こんなものでございましょう? にしても、少し早いですな……」


 葉っぱから目を離さずにじいやに詳しく聞いてみると、この星の植物はどうやら日本……というか地球の植物よりも成長スピードが早いようだ。けれど、ここまで早い成長は見たことがないそうだ。


 そして気候を聞くと、四季らしきものはあるにはあるけど、ほとんど一定の気温を保ち、雪も降らず過ごしやすいとのことだった。というよりも、雪を見たことがないというのに驚いた。


 この土地は乾燥はしているけど、極めて乾燥という訳でもないように感じる。その乾燥のおかげか、今の季節は夏らしいけど、ほんの少し汗ばむくらいだし、冬は少し肌寒いくらいだと言う。

 それを聞いて、実はこの土地は農業をやりやすいんじゃないかと思った。何をするにもご飯は大事だよね!

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