第8話 擬似デートと時雨襲来
「ご、ごめんなさい。待ちましたか?」
「いや、俺も今来たとこ。」
待ち合わせ場所の校門に集まった時、時計の針は4時を回った所だった。まあ平日、学校もあったから普通だろう。
1回家に帰ったのは服を着替えるとかではなく、荷物を置きに行っただけなので2人とも制服のままである。
待ち合わせ場所を校門にした理由は天草と冬花の両者が確実に知っている場所という点に該当しただけであり、特に深い理由はない。
「今日はどこで話…するんですか…?」
「いつも僕が一人で行ってるお気に入りのカフェがあるから……そこいこう。」
「は、はい……。」
この会話を見て誰もが思ったろう。「これ、デートやん」…と。
そうなのである。昨日は流れに身を任せていたが、1日たって冷静になった今天草はこれが完全にデートだということに理解した。…いや、理解してしまった。
◎行きつけのカフェにて
完全に理解してしまった故、この日の天草は異常に様子がおかしかった。
パシャ「あ、ご、ごめん…」
「大丈夫ですよ。拭けば大丈夫です。」
「あ、あのさ……飲み物頼もうか…。」
「もう飲み物来てますよ。」
「あ、ホントだ。」
様子がおかしい天草を見て冬花は少し心配そうな眼差しを向けている。
「大丈夫ですか?寝不足とかですか?」
「い、いや昨日はしっかり寝たはずなんだが。」
「お、お兄ちゃん!?」
そんな時だった。聞き慣れた声が天草の耳を通過した。後ろを振り返るとそこには時雨が立っていた。
「し、時雨!?なんでここに?」
「時雨は夕飯の買い出しのついでに寄っただけです!それよりお兄ちゃんの前に座ってる美人さんはどなた様ですか?」
「あ、初めまして。柊冬花といいます。」
「あ!!柊さんですか!お兄ちゃんからよく話を聞いてます!」
「おい時雨。余計なことを言うな。」
これは完璧に予想外だった。まさか時雨とばったり会うなんて(しかも柊さんといる時に)。
「ところでなんでお兄ちゃんと柊さんが二人きりでカフェに??」
二人きりと今さら言われたらなんだか恥ずかしくなってくるが、こうなったことの経緯を時雨に詳しく説明した。
「………………ってわけだ。」
「そうですか。スローガン…ですか…。」
「時雨はいい案ないか?」
「うーん。パッとは思いつかないです。」
「そうか……。」
天草と冬花は困った表情をする。それを見た時雨がこんなことを言った。
「ここじゃああんまりくつろげないですし、家でゆっくり話しましょうよ!勿論柊さんも!」
「えっ!」
つい「えっ!」と言ってしまったが、柊さんはと言うと。
「……そ、そうしましょうか。ラノベ作家さんの部屋見てみたいですし…。」
「やったぁ!」
柊さんも乗り気だという事でなんと3人で僕の家で話し合いを行う事になった。柊さんのような美少女を自分の家に入れるのは僕には絶対に無理だから時雨が居ないとこんな展開にはならなかっただろう。学校一の美少女が家に…。まずい、手汗が。
この後動揺が隠しきれない天草とその一行は、いきつけのカフェを後にし優木家に向かう。
時雨みたいな妹いいよね。次回はお家デート回!!!(完全妄想)