第5話 引きこもりに体育祭は辛い
2学期は学生にとって1番イベントが多い学期である。多くの学生は胸を踊らせ、中には告白を成功させ晴れてリア充になる者も。
しかし、全員が全員胸を踊らせる訳では無い事を理解して頂きたい。天草は圧倒的に後者に該当する人間だった。
色々あった朝から少し時間が経過し、ホームルームの時間になっていた。そんな時担任が放った一言は「体育祭について色々決めていこう」である。前を見ると蓮太と秋音が騒いでいる。奴らは乗り気だ。
「あれ?天草くんどしたの?全然元気ないじゃん!?」
蓮太の言い方が凄まじくウザイ。普通にキレそう。そもそもあいつは知ってるはずだ。僕が『究極の引きこもり』だということを。それを知って言ってきてるわけだからタチが悪い。
「あ、そっかぁー!天草くんは夏休み、トマトの水やり以外で1度も外に出なかった引きこもりの猛者だったなぁー!」
「いちいち大声で言うんじゃねえ。…まあ事実だが。」
事実だというのが非常に情けない。地元で行われた花火大会にも参加せず、プールや海にも1度も行っていない。
そもそも究極のインドアというのもあるが、ラノベ制作に追われていて今年はそれどころではなかった。時雨にも心配されたが生活がかかっているのであいつも深くは言ってこなかった。
奴らが非常に乗り気だというのは理解した。そんなことより僕は柊さんに興味があった。僕は右の席の柊さんに目を向けると黒板を見てボーッとしている彼女がそこにはいた。
ボーッとしてるだけで絵になるあたり美人は恐ろしい。僕の視線に気づいたのか彼女はハッとしてこっちを凝視する。じっと見られた天草は光の速さで目を逸らした。
「どうかしましたか?私の顔に何か付いてます?」
冬花はそう言うと自分の顔に手をあてた。
「あ、いや。別にそういう訳じゃなくて……体育祭楽しみなのかなー…っと思っただけで。」
「うーん。どちらかというと楽しみじゃないですね。日焼けとかもしますし。」
冬花も後者側人間だということが理解できた。しかし理由が『日焼け』。やっぱり女子だなぁ。って思う。すると冬花がこんなことを言った。
「優木くんのラノベ新作買いましたよ。まだ全部は読めてないですが…。」
まさかこんな嬉しいことを言ってくれると思ってなかった天草は少しヒートしたが、素直に
「ありがとう」と言った。
すると冬花もこっちを見てニコッと笑った。
体育祭まであと何話で辿り着くかなー。