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52話 新しい装備1



「イラスト通り作ってきましたけど、こんな感じですか?」



 城塞都市モリーゼの宿屋で、錬金術師――マスターはテーブルの上に装備を並べていく。

 茶色いテンガロンハット。

 黒いコートとベスト、革製のズボン。

 それは西部劇のガンマンが着るような衣服だった。

 衣服を手に取った薫は満足そうに微笑む。



「最高だね。いい仕事するじゃない」


「鬼熊の素材を加工して、様々な魔法を付与したのでかなり頑丈ですよ。ただし、前にお話したように中級魔法までしか防げないので、高位の魔導士には注意して下さい」


「分かってるって」



 装備が相当気に入ったのか、薫はコートや帽子を愛おしげに撫でまわす。

 この男にしては珍しいことだ。

 思わずマリが口を開く。



「薫さん、それすごい気に入ったんですね」


「ああ、俺は西部劇が好きでね。こんなの欲しかったんだ」



 珍しいことに、薫は素直に喜びを表した。

 そんな薫の前に錬金術師が大きな包みを差し出す。



「これは空見さんに渡して下さい」


「え、これって?」



 薫が包みを開けると、中には手甲や足甲、兜に胸当てが一式入っていた。

 どうやら軽量化された騎士鎧のようだ。



(空見も防具を注文してたのか? そんな話は聞いていないけど……)



 本人に確かめたいが、空見は少し前に討伐から帰ってきたばかりで、眠ったばかりだ。わざわざ叩き起こすのも悪いだろう。

 そう思う薫の前で、錬金術師が防具の説明を始める。



「これも防御能力がかなり高いですが、雷属性にかなり弱いので注意するように伝えてください」


「……分かった。伝えておくよ」



 色々と思うところはあるが、この錬金術師の腕前はかなりのものだ。

 少なくともこの辺りの鍛冶師よりはるかに良い腕をしている。

 くれるというなら遠慮なく受け取った方がいい。

 薫は張り付いた笑みを浮かべて装備を受け取った。




「マリにはこれをあげるわ。昔あたしが使ってたもので悪いけど性能は悪くないわ。

 下級魔法に呪いの無効、対物理結界も付いていて中々便利よ」


「こんな良い物頂けるんですか? ありがとうございます!」



 薫たちの隣のテーブルで、マリはリリアからローブを手渡されていた。

 どうやらリリアのお古らしい。

 広げてみると明るい茶色のローブで、なんか良い匂いがする。

 マリはローブに鼻をうずめて匂いを嗅ぎたくなるのをグッと堪えた。

 マリには信太郎の衣服の匂いを嗅ぐ習慣があるので、時々人前でやってしまいそうになる。



(危なかったぁ! また人前でやりそうになっちゃった。バレないようにしないと!)



 気をつけねばならないと気を引き締めるマリだが、すでに周囲にはバレている。

 すでに残念美人の名前で呼ばれていることにマリだけが気づいていないかった。



 

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